第16回アジア競技大会
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大会最終日:11月20日

 11月13日から始まったアジア競技大会・卓球競技は最終日を迎えた。11月20日は男女シングルスの準決勝と決勝が行われた。

水谷は王皓に敗れ銅メダル ~男子シングルスは馬龍が初優勝を飾る~

水谷らしい粘り強いプレーを見られず

  男子シングルスの準決勝は、王皓(中国)対水谷、馬龍(中国)対朱世赫(韓国)というカード。中国の牙城を崩し、決勝で同士討ちを避けることができるかに注目が集まった。
 王皓と対戦した水谷は、1ゲーム目の出足でリードを奪い、スコアを7対1とした。水谷のミドル攻めに王皓は打球点を落としたドライブになり、またミスも多かったので1ゲーム目はこのまま水谷が取ると思われた。しかし、ここから王皓がじわりじわりと挽回を始める。先にゲームポイントを取っていた水谷だが、追いつかれたことで動揺したのかミスが目立ち、このゲームをジュースで逆転負けした。
 超満員の観客は王皓の大逆転にボルテージが上がり、割れんばかりの声援をおくる。「1ゲーム目の逆転負けを最後まで引きずってプレーしてしまいました。あのレベルの強い相手と対戦した場合は、心理的な動揺があっては勝つのは難しいということもわかっていましたが、逆転負けをしたためか会場の雰囲気にも飲まれてしまいました」と試合後に話した水谷だが、2ゲーム目以降のプレーは別人のようにミスを連発してしまった。これまで長きにわたって水谷の試合を見てきたが、この試合のような水谷は初めて見た。
 水谷は試合の途中で何度か「このままではいけない。もっとがんばらなければ」という表情を見せたが、その直後にもミスを連発してしまい、いつもの水谷らしい粘り強いプレーを出すことができなかった。
 もう1つの準決勝、馬龍と朱世赫の試合も一方的な展開になってしまった。馬龍のバズーカー砲のようなドライブに対して、朱世赫は最後まで押されてしまった。時折見せる反撃も馬龍にカウンターブロックでノータッチで抜かれるなど、ノーチャンスといえる内容だった。朱世赫が弱いということではなく、馬龍が強すぎると表現したほうがいいだろう。


2ゲーム目以降の調子が狂ってしまった

王皓は相手のミスにつけ込み勝利を呼び込む

朱世赫は最後まで押されてしまった

馬龍は一方的な展開で決勝進出

  水谷、朱世赫の実力者をもってしても、中国の王皓と馬龍から1ゲームも奪うことができず、男子シングルスの決勝は中国の同士討ちになった。
 この決勝は、現代卓球において究極レベルの戦いになったといっていいだろう。ストップとチキータを使い分けるレシーブテクニック、両ハンドによるパワフルな連続攻撃、バックサイドからフォアサイドまでをフォアハンドでカバーできるフットワーク等々、2人の弱点を探すのが難しいほどだ。
 試合は王皓がゲームを先攻したが、2ゲーム目から馬龍のエンジンが全開になり、3ゲームを連取。5ゲーム目は王皓の攻撃が再び冴え出して奪ったが、6ゲーム目は馬龍がペースを支配して10対7でマッチポイントを握った。しかし、ここから王皓は強気の台上攻撃で連続得点してジュースに追いついた。王皓に勢いが乗り移ったかに見えたが、馬龍が強敵なフィジカルを見せてフォアドライブの引き合いに勝つと12対10でこのゲームを取り、初優勝と遂げた。
 男子シングルスでの馬龍は、松平(日本)、荘智淵(台湾)、呉尚垠(韓国)、王皓との試合では、どれもゲームを先攻される厳しいものになったが、ピンチになったときにまるでターボエンジンがかかったかのようにプレーがパワーアップした。そして、そうなったときの馬龍のプレーを止められる選手はいなかった。オリンピック、世界選手権大会と並ぶビッグ大会での優勝を決めた馬龍は、これからビッグタイトルを総なめにしそうな予感がする。


男子シングルスの決勝は究極レベルの戦い

馬龍はフォアドライブの引き合いに勝った

水谷は悔しい銅メダル

馬龍はこの大会で初優勝


福原は惜しくも決勝進出を逃す ~女子シングルス優勝は李暁霞~

福原は元世界チャンピオンを相手に最後まで苦しめた

 女子シングルスの準決勝でも中国の同士討ちを阻止するべく、勝ち残った福原と金璟娥に期待がかかったが、金璟娥は李暁霞(中国)のドライブに押されっぱなしになり、完敗に終わった。前日の女子ダブルス同様に李暁霞の闘志と集中力は素晴らしく、1ミリの隙も見当たらなかった。
 その試合とは対照的に、福原対郭躍の試合は今大会のベストゲームに挙げられるほどエキサイティングな戦いになった。
 この試合の福原は、何かを悟ったかのような雰囲気でコートに立ち、冷静な試合運びと絶妙な戦術で郭躍のプレーを封じ込んだ。福原は1ゲーム目を11対5で取ると、2ゲーム目も12対10で競り勝った。3ゲーム目は落としたが、4ゲーム目を奪ってゲームカウントを3対1とリードした。
 福原は郭躍の威力のあるフォアドライブを打たせないためにバックサイドを厳しく攻めてフォアドライブを封じ、郭躍がバックサイドを気にしたときにフォアサイドをついてチャンスをつくるなど、戦術が光っていた。しかし、元世界チャンピオンで自力のある郭躍は、苦しい展開ながらもフォアドライブを使い出して5、6ゲーム目を奪い返した。
 7ゲーム目、福原はスタートダッシュに成功して5対2とリード。ここから郭躍が追い上げて8オールになると、連続得点を許して8対10と郭躍がマッチポイントを握った。福原は1点を返したが、次のプレーで郭躍が得点してゲームセット。苦しみながらも最後まで食らいついた郭躍が会心の逆転勝ちで決勝に進出した。
 敗れた福原はがっくりとした表情になったが、この準決勝も含めてここまでよく戦ったと称えたい。昨日の王越古(シンガポール)戦、そして今日の郭躍戦で見せた「しっかりと戦術を立てて、落ち着いてプレーする」という戦い方ができれば、ビッグ大会でも再びチャンスを引き寄せることができるだろう。


金璟娥は李暁霞のドライブに押され完敗

李暁霞に1ミリの隙も見当たらなかった

冷静な試合運びと絶妙な戦術で相手を追い込む

苦しみながらも最後まで食らいついた郭躍が逆転勝ち

 女子シングルスの決勝は、男子シングルスの決勝をしのぐほどハイレベルな内容になった。恐らく、現時点では李暁霞と郭躍が見せたこの決勝での戦いが、女子では世界最高レベルだ。
 この試合は、より強い攻撃を相手よりも安定して打ったほうがゲームを奪う展開になった。1、2、3ゲームは郭躍が畳み掛けるような連続攻撃で李暁霞を圧倒すると、4、5、6ゲームは逆に李暁霞がバック対バックの展開から先にフォアドライブを仕掛けて奪い返した。
 最終ゲームの7ゲーム目はお互いの持てる力をすべて出し、一進一退の攻防を繰り広げたが、ほんのわずかな差で李暁霞に軍配が上がり、11対9で郭躍を下し、自身にとって初のビッグタイトル獲得となった。


一進一退の攻防を繰り広げわずかな差で李暁霞に軍配

李暁霞は自身にとって初のビッグタイトル獲得


今大会の模様は、卓球レポート2011年1月号に掲載

 今大会の模様は 2011年1月号(12/20発売予定)に掲載予定。

現地取材班:中川学(卓球レポート編集長)