2008年 北京オリンピック

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卓球競技 最終日

 11日間によって行われた北京オリンピックの卓球競技もいよいよ最終日となった。8月23日は、男子シングルスの準決勝、3位決定戦、決勝が行われた。

男子シングルス、馬琳が悲願の金メダル ~男子初の3種目制覇~

馬琳、ついに悲願の頂点に立つ!

 北京大学体育館を埋め尽くした超満員の観客が、1人の男に喝采をおくっている。その拍手と歓声は、男が会場をあとにするまで鳴りやむことはなかった。
 男の名は、馬琳。北京オリンピック卓球競技の最終日、最後の試合となった男子シングルス決勝で、同僚の王皓を4対1で下し、金メダルに輝いた男だ。
 馬琳は第5ゲームに10-9でマッチポイントを握り、フォアクロスのドライブの打ち合いで得点し、金メダルを決めた。最後の1本が力強いラリー戦で決まったため、観客の興奮はこの大会で1番のものになった。馬琳は王皓のドライブがミスとわかった直後、ガッツポーズではなく小さな笑みを見せた。そしてウエアをまくり上げ、胸に付けられている国旗に口づけをすると、ここで初めて拳を突き上げて、大きなガッツポーズを見せた。
 ガッツポーズのあと、馬琳は人目をはばからず泣いた。泣き顔を見られたくないのか、タオルで顔を覆いながら、しばらくの間顔を見せなかった。
 馬琳の涙は、母国で初めての開催となった北京オリンピックで金メダルを獲得したうれしさだけではない。これまで世界選手権大会の男子シングルスで3度決勝に進みながら、その全てに負けて、「馬琳は世界チャンピオンになれない」と言われ続け、それがまるで呪縛のように彼から優勝の2文字を遠ざけていた。
 しかし、世界中の人々が注目し、13億人の同胞の夢と言われる北京オリンピックで金メダルを獲得し、長い呪縛を自らのプレーで解いた。北京オリンピックの金メダルは、これまでの彼の悔しさを吹き飛ばしたことだろう。

 最終日のこの日、馬琳は準決勝で王励勤、決勝で王皓に勝った。2試合とも馬琳が心理戦を仕掛け、相手にペースをつくらせないという、同士打ちで見せる「いつもの戦い方」をした。
 馬琳は相手がサービスの構えをしても、なかなかレシーブの構えを取らない。しかし、これまで幾度となく対決している王皓は、それは想定済み。特別イライラしているわけではなかった。
 第1ゲーム。お互いに堅さが見られ、そして相手の出方をうかがっているのか、まともな打ち合いはほとんどなく、馬琳が11-6で取った。
 第2ゲーム。馬琳は5-1でリードし、7-3、8-4、10-4と一気に離した。馬琳の動きがよく、王皓の動きはよくない。しかし、ここから王皓がねばって5連続得点し、10-9としたが、ばん回はここまでで11-9でこのゲームも馬琳が取った。
 第3ゲーム。王皓が強気で攻め始める。馬琳は6-6から6-10とされ、このゲームを6-11で落とした。
 第4ゲーム。お互いに様子見がなくなり、全力対全力の戦いになり、激しいラリーになる。見応えのあるラリーの応酬になり、スコアも競っていたが、7-7から馬琳が4連続得点し、ゲームカウントを3対1にした。
 第5ゲーム。馬琳が出足でリード。5-2になると王皓がタイムアウトを取ったが」、馬琳の猛攻撃は続き、7-3、9-5、10-6とマッチポイントを握った。10-7で馬琳がタイムアウト。しかし、ここから王皓が追い上げ、10-9になった。
 ここでなんとしてでも決めたい馬琳は、フォアクロスのドライブの打ち合いに勝ち、11-9でゲームセット。馬琳が北京オリンピックの金メダルを手にした。これで馬琳は男子で唯一、団体、シングルス、ダブルスの3種目で金メダルを獲得した選手となった。
 一方、敗れた王皓は2大会続けて銀メダル。前回アテネの決勝で柳承敏(韓国)にまさかの敗戦を喫し、今大会は金メダルしか狙っていなかった王皓。銀メダルを首にかけても満足していなかった。


馬琳が素晴らしい動きで圧倒

王皓はまたも決勝で・・・

ついに待ちに待ったときが来た

栄冠をつかみ、人さし指を天に掲げる

13億の同胞も祝福

そして、自ら呪縛を解き放ち、一人噎ぶ

 ■男子シングルス 決勝■

王皓
(中国)
1
9-11
9-11
11-6
7-11
9-11
4
馬琳
(中国)


 馬琳は準決勝で世界王者の王励勤と対戦。馬琳は王励勤に世界卓球の決勝で2度(2005年、2007年)敗れていて、タイトルを取るためには鬼門の相手だった。
 第1ゲームのラブオール、王励勤が最初のラリーで卓球台にラケットをぶつけてミスしてしまう。このときの衝撃で王励勤のラケットのラバーが破れてしまったようだが、馬琳は王励勤のラケットを指差し、審判にチェックするようにうながした。これにより審判が王励勤のラケットをチェック。審判は王励勤にラケットを替えるように伝え、王励勤はのっけからスペアラケットでプレーすることになった。
 選手はラケットの破損などで試合中にスペアラケットを使わなければいけなくなるため用意しているのだが、やはり普段使い慣れているラケットのほうが安心感があるものだ。それが、自分がぶつけてしまったとはいえ、チームメイトからの合図で第1ゲームの0-1からスペアラケットを使うことになってしまった。馬琳のこの行為は間違っていることではないが、このときにすでに「心理戦での駆け引き」を始めていた。
 心理戦が響いたのが、スペアラケットのグルーイングをミスして飛びがいまいちなのか、王励勤のドライブが走らない。第1ゲームは馬琳が11-5で簡単に取ると、第2ゲームと第3ゲームも11-9で馬琳が取り、3対0と一気に離した。馬琳は試合中も間合いを長くするなど、執拗な心理戦を行っていた。
 馬琳は第4ゲームに10-9でマッチポイントを握ったが、王励勤が強気のドライブレシーブで得点し、このゲームを10-12で落とすと、第5ゲームは簡単に取られてしまう。
 第6ゲーム。それまでの高く投げ上げるサービスから低いトスのサービスに変えた馬琳。スコアは1点差以上にならず接戦。3-3、5-5、6-6。ここで馬琳が初めて2点差をつけ8-6。そして10-7でマッチポイントを握る。次の長いラリーを王励勤が取って10-8になると、馬琳がタイムアウトを取る。これが効いたのか、馬琳は次ぎで得点して王励勤を下した。


得意の心理戦で同士打ちを乗り切った

まさかの展開でも粘り見せたが・・・

 ■男子シングルス 準決勝■

馬琳
(中国)
4
11-5
11-9
11-9
10-12
3-11
11-8
2
王励勤
(中国)


 もう一方の準決勝は、2大会連続での決勝進出をめざす王皓(中国)と、シドニーオリンピック以来2度目の準決勝進出となったパーソン(スウェーデン)の対戦に。
 前回の無念を晴らしたい王皓と、オリンピックでのメダルがない元世界王者の対決は、王皓の裏面ドライブ対パーソンのブロックで激しいラリー戦となった。
 王皓は最後まで強気の攻撃を続けてパーソンを退け、アテネオリンピックに続いての決勝進出を決めた。


王皓がパーソンの快進撃を止めた

 ■男子シングルス 準決勝■

王皓
(中国)
4
11-9
11-9
9-11
11-7
11-9
1
パーソン
(スウェーデン)



中国、男女そろってメダルを独占 ~銀メダルは王皓、銅メダルは王励勤~

中国男女そろってメダルを独占

 男子シングルスは、中国勢がメダルを独占した。男子のメダル独占は、卓球が1988年ソウル大会で公式競技となって初めて。これで中国勢は男女そろってシングルスのメダルを総なめするという最高の結果でオリンピックを終えた。

 男子シングルス3位決定戦は、準決勝で王皓に敗れたパーソン(スウェーデン)と馬琳に敗れた王励勤によって争われた。
 試合は4対0で王励勤がパーソンに勝ち、アテネオリンピックに続いて2大会連続の銅メダルを獲得した。
 この試合、下馬評では王励勤が圧倒的に有利と見られていた。しかし、42歳のパーソンの好調は続いていて、ブロックとロビングで王励勤の攻撃をしのぎ、第1ゲームと第4ゲームは互角の戦いを見せた。
 王励勤はプレッシャーのかかる試合だったが、競り合いになってもおくすることなく攻め続け、銅メダルを獲得した。


王励勤がプレッシャーをはねのけた

パーソン、念願のメダルならず・・・

母国のメダル独占を死守した

敗れるも、ベテランが大会を盛り上げた

 ■男子シングルス 銅メダル決定戦■

王励勤
(中国)
4
13-11
11-2
11-5
11-9
0
パーソン
(スウェーデン)



今大会の模様は、卓球レポート10月号に掲載

北京の激闘が閉幕、次は舞台は2012年ロンドン

 11日間にわたって行われた北京オリンピック卓球競技。今大会から採用された団体戦は、エキサイティングな試合の続出で、大会を大いに盛り上げた。
 終わってみれば、中国が男女団体で金メダルを獲り、男女シングルスの金、銀、銅メダルを独占した「中国のための大会」だった。
 団体戦でメダルを期待された日本は、惜しくもメダルを逃した。だが、その戦いぶりに勇気と感動をもらった人は多い。日本の選手たちに「感動をありがとう」と言いたい。
 そして4年後のロンドンオリンピック。その最終日のホームページの締めくくりの言葉は、こうなると信じている。「日本の選手たち、感動とメダルをありがとう」と。

 今大会の模様は 10月号(9/20発売予定)に掲載予定。
 現地取材班:中川学(卓球レポート編集長)