吉村真晴インタビュー「新たな吉村真晴のスタートを切りたい」

Tリーグが開幕し、T.T彩たまの主力選手、そして、キャプテンとして、新たなステージに踏み出した吉村真晴。2016年には世界卓球2016クアラルンプールで日本男子39年ぶりの決勝進出の立役者として、また、同年のリオオリンピックでも男子団体銀メダル獲得メンバーとして活躍。そして、翌年は世界卓球2017デュッセルドルフで混合ダブルス世界チャンピオンに輝いた。だが、もちろんそこが吉村のゴールではない。再び世界の頂点を目指す吉村真晴の今に迫った。


世界卓球の決勝をも凌駕した
Tリーグ開幕戦の緊張感


「開幕戦は楽しかったけど、緊張しましたね。5,000人超えの観客の前で、1台に集中して見られるということはなかなかないので、世界卓球の混合ダブルス決勝以来の緊張感というか、あの試合をも凌駕する緊張感があったので、本当にびっくりしました」

 もちろん心の準備はしてきたのだろうが、実際にその場に立つと吉村は自分の気持ちを抑えられなくなったと言う。
「開幕戦だから『いい試合をしよう』とか『絶対勝ってやるぞ』とか、チームがすごい盛り上がっていたので、余計に自分も気持ちが熱くなりすぎて、その中で、スタートでサービスミスを2本して......。完全に頭がヒートアップしていましたね。パニック状態みたいな。いつも以上に勝ちたいという欲が強すぎて、頭がショートしてしまった感じです」

 Tリーグ開幕戦の特別さは多くの選手、そして、その場に居合わせた観客の語るところとなっているが、それはまだ2019年2月まで行われるシーズンの最初の1歩に過ぎない。開幕戦では木下マイスター東京の大島祐哉に敗れた吉村だが、3試合目となった琉球アスティーダ戦では、丹羽孝希を破る活躍を見せた。
「開幕戦以降も多くのファンが会場に来てくれて、今まで日本でこれだけたくさんの試合をすることが少なかったので、いい経験ができていますし、楽しめてもいます。
 初戦はチームメートにも『勝ちたい欲が全面に出過ぎ』と言われて。自分でも最初から声を出しすぎて冷静ではなかったと自覚していたので、2試合目からは『声を出すのをやめます』と言ったら、『それはやめなくていい』と言われました(笑)
 丹羽との試合の時は、結構冷静に試合に入って、チームも2対0とリードしていたので、わりとリラックスして試合をすることができました」


Tリーグで吉村が背負った「責任」

 ドイツ・ブンデスリーガも経験している吉村だが、Tリーグとブンデスリーガの違いはどのようなところにあるのだろうか。
「Tリーグはやはり日本での試合ということで、応援してくれている方々とも言葉が通じますし、何を言われているか分かるので、そういった部分で海外に比べて神経質になってしまうところはありますね。
 それに、やはり日本での卓球人気の一端を担っているという責任感は大きいですね。僕らが生半可な気持ちで試合をしたら『なんだ、卓球面白くないじゃん』と卓球から離れていってしまう観客がいるかもしれない。
 Tリーグをより最高峰のものにしていくために、僕らが今、築き上げていかないといけないというプレッシャーを感じています。だからこそ緊張する舞台なのかなと思っています」


坂本竜介監督が期待する
キャプテン吉村真晴


 そんな責任感の強い吉村に、坂本竜介監督から"チームのキャプテンというポジション"が与えられたことは偶然ではないだろう。
「最初は選手としての経験という面で、僕よりも岸川さんの方がキャプテンにふさわしいんじゃないかと思って、坂本さんにもそう伝えたんです。でも、岸川さんは選手兼コーチという立場だったので、僕がやらせてもらうことになりました。
 こんな風に坂本さんが期待してくれていることは嬉しいし、期待に見合う仕事をしたいと思っていますが、まだできていないところがあります。これから、僕自身が試合で勝ってチームをまとめていけるようになりたいですね。
 選手はみんな本当に仲が良いですし、いいコミュニケーションもとれているので、チームワークという点ではまったく不安はありません」

 まだそれほどキャプテンらしい仕事はしていないと前置きしながらも、こんなエピソードを紹介してくれた。
「鄭榮植(韓国)が試合で負けたあとのことですが、あいつは優しいところがあって、チームの負けを自分で背負っちゃう部分があるんです。だから、試合の後、後ろからついて行って声をかけました。そうしたら、あいつも自分が感じてることや思ってることを伝えてくれたので、よかったですね。
 試合に出ていないときは、出場する選手のケアに徹しますが、それは僕がキャプテンだからじゃなくて、他の選手もみんながそれぞれにチームをまとめるためにやってくれていることです。僕だけが意識をしなくても誰かが動いてくれるいいチームですね」


キャプテン吉村真晴の萌芽となった
ブンデスリーガでの体験


 そんな吉村のチームメートへの配慮の影には、自身のブンデスリーガでの経験がある。
「自分も海外でプレーしていたときに、チームメートが声をかけてくれました。負けて1人でほったらかしにされていたら、気持ちの切り替えが難しかったと思いますが、チームメートが声をかけてくれることで、負けても次また頑張ろうと思える。だから今も、自分だったらこうしてほしいと思うことをやっているだけです。
 僕は初めてブンデスリーガに参戦したときは、2部から上がったばかりの1部のハーゲンというチームでエースを任されていて、最初は全然勝てなくて2勝8敗とかなり負け越していましたが、シーズンが終わるときには13勝12敗と勝ち越すことができたんです。
 その理由は、負けが込んでいるときに『俺は勝てないから3番手でいくよ』と言っても、チームメートのグロート(デンマーク)とイオネスク(ルーマニア)が『お前はエースなんだから1番手じゃないとだめだ』と言ってくれたからなんです。そのくせ、2番手と3番手を争って喧嘩しているような連中でしたが(笑)、彼らが僕を信頼して1番手でやらせてくれたから、今の自分がいる。そこで3番を任されていたら、それなりの選手で終わっていたかもしれません。
 だから、日本に来た選手には素晴らしい経験をしてもらいたいんです。外国選手だけではありませんが、試合に負けて心が折れたら、卓球がしたくなくなったり、自信を持ってプレーできなくなってしまいます。そうなったら、ワールドツアーや他の試合にも響いてしまうので、そうならないように、僕ができること、チームができることを共有して、もっといいチームにしていきたいと思っています」


海を越えた鄭榮植との友情

「先ほど、鄭榮植が試合で負けた後に声をかけたという話をしましたが、実は、僕が負けたときにも鄭榮植はすごい話しかけてきてくれるんです。先日(11月16日)、岡山リベッツとの試合で負けたとき、2対0から林鐘勳(韓国)に負けたんですが、試合が終わった後の車の中で鄭榮植がプレーの内容や試合運びについてすごい具体的なアドバイスをしてくれました。
 これまで海外の選手とそんなに深く戦術の話や試合展開について話すことはありませんでしたが、鄭榮植とは何でも話せるところがありますね。日本では大島(祐哉)とは話すことはありましたが、ほとんどの選手は試合が終わったら卓球から離れるのが普通です。
 でも、鄭榮植とは試合が終わった後もずっと卓球の話をしていますね。お互いに負けることもあるけど、そうやってお互いに遠慮せずに話し合えるっていうのはなかなかないし、すごい楽しいですね」
 こうしたエピソードは、以前ロシアリーグを取材したときの水谷隼とオフチャロフ(ドイツ)の関係を想起させる。このようなポジティブな関係が選手にとって好ましくないとは考えにくいが、トップ選手が忌憚なくお互いのプレーにアドバイスを送り合うということは実にまれだ。それだけに、吉村と鄭榮植は、お互いにとって貴重な存在と言えるだろう。


「卓球と向き合う時間が増えた」
チームが吉村にもたらしているもの


「坂本さんからの期待はめちゃくちゃ感じてます。柏原哲郎社長も坂本さんもそうですし、T.T彩たまのみんなが自分を気にかけてくれていて、すごくありがたいと感じています。
 坂本さんは練習のときもすぐに声をかけてアドバイスをくれますが、僕は大学卒業後は個人でやってきて、ナショナルチームの合宿以外で誰かから何かを教わる機会が少なかったところを、今はT.T彩たまでカバーしてもらっている感じです。
 自分の中で卓球と向き合う時間も増えてきましたし、自分が知りたかったこと、たとえば、このサービスに対してはどうするのがよいかとか、1人では解決できなかったところを、坂本さんが一緒にコミュニケーションを取りながら考えてくれるので、自分の次のステップに繋がると感じています。
 試合が終わった後も『もっとこういう展開を練習すべき』など具体的なアドバイスをいただきます。Tリーグ自体は始まったばかりで、自分もすぐには変えられない部分がありますが、シーズンが終わる頃には何かしら進化できているところはあるのかなという手応えは感じています」


2019年の全日本と世界卓球を
新たな吉村真晴のスタートにしたい


 団体では銀メダル、男子ダブルスでは銅メダル、混合ダブルスでは「世界チャンピオン」のタイトルをつかんだ吉村だが、卓球選手としてやり残している大きな仕事がある。それが、世界卓球へのシングルスへの出場だ。
「Tリーグはチームのためにもファンのためにも、最高の準備をして勝っていきたいと思っていますが、個人としては、今度こそ世界卓球のシングルスに出たいという気持ちがあるので、選考会で勝つために今できる準備をどんどんやっていって、2次選考に進んでいけるようにしていきたいと思っています。
 次の全日本は大阪ですが、最高のパフォーマンスで2回目の優勝ができるように練習に取り組んで、新たな吉村真晴のスタートが切れるように頑張っていきたいと思っています」


吉村真晴:https://www.butterfly.co.jp/players/detail/yoshimura-maharu.html


(文=佐藤孝弘 写真=Tリーグ、卓球レポート)

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