「卓球は血と魂だ」 第三章 二 中国との差どうする

第三章 卓球の炎をかかげて

二 中国との差どうする

 中学、高校、大学、実業団それぞれが立派な全国組織を持つ、という日本の卓球界は世界にその例がない。その活動力は世界の範とすべきものかもしれない。にもかかわらず、この数年、日本の頂上の技術は伸びたといえるであろうか。昨年の平壌大会でハンガリーに敗れた中国男子の再訓練はきびしかった、と推測される。一九六一年以後、荘則棟、李富栄、徐寅生に代表される中国の速攻陣が示した強さは世界を驚かせた。時がたち、中国の速攻に甘さが見えた時、ハンガリーの三銃士が中国を打ち破った。ここで中国は再び原点に立ちかえり、速攻技術の見直しと徹底した勝利主義の追求を進めた、と言えるだろう。今年五月上海の国際大会では七種目全部の完全優勝、その後の試合姿勢はきびしさが出てきた。AAA大会で一七~一九才の女子新鋭陣が日本以下を総ナメにした。男子は三〇才の李振恃が食い下る高島、小野を危気なく振り切った。

 数年前に当編集部で日中両主力の攻撃同士の試合の統計を出したことがある。双方の失点が何ポイント目に出るかという調べだ。その結果、サービスから第五球目までの失点は日本が多く、第六球以後のラリーとなったら中国の失点が多かった。しかし、日中の対戦では約七〇%が第五球までにポイントが決まるのである。ここに中国の狙いが表われている。一九五〇年代の日本は欧州の守備を打破って世界を制覇したが、中国は日本を破るため「攻撃対攻撃は先制の勝」と定義し、徹底的なサービスの強化と、三球目、四球目で日本選手の弱点バックを急襲し、つぶす速攻戦術を工夫し、一〇年計画で猛訓練を重ねた、のであった。

 中国卓球の基本はこの速攻にあり、あわせて異質ラバー活用型の変化戦術だ。フォアハンド重視、フォームやフットワークで形式主義に陥りやすい日本と比べて、きわめて現実的に得点主義の道を追求している。中国の強力サービスと速攻は卓球をダメにした、と批判する内外の新聞記者もいた。しかし、中国は強いのである。勝つのである。この八月、中国で強化合宿をやってきた日本高校選抜軍も中国ジュニアとの試合で惨敗を喫した。しかし訓練を積むに従って僅かながら、その差を縮める方向が見えたという。

 さてこの課題にどう取り組むか。ドライブ主戦の日本の伝統とフットワークの重要さなど基本を捨ててはいけない。日中攻撃同士の戦いでも第六球以後のラリーに持ち込めば日本有利と出ている。立ち上がりのサービス・レシーブ戦の訓練を集中的にやること、そしてバックを急襲された時、バックハンドではね返す力を積むこと。このバックハンドは一歩でも後退して打ったのでは負けだ。初球のバックハンドが前中陣で、しかもパンチのきいた一発でなければならぬ。一九六五年、全盛期の中国から貴重な二点を奪いとった高橋浩選手(世界リュブリアナ大会男子団体決勝で日本は二-五で敗れたが)の勝利に学ばねばならぬ。

 高橋選手は個性的なサービスをつくり上げていた。中国の速攻に対して前中陣から下らず、両ハンドで初球から強く対応した。特にバックハンドがよかった。中国の卓球のヒミツの大半はサービスにある、とも言える。これをしのげることと共に自らもサービス力を持つことによってタイにいける。次に弱点のバックに力をもてば第五球までにタイでいける。あとはラリー戦で日本のパワードライブ力でいける。ただ、こうした質の高い練習努力を誰がやり遂げるか。これが世界を狙う人の高い目標・課題なのだ。
(卓球レポート一九八〇年一一月号)

B!