「卓球は血と魂だ」 第三章 十二 今後のラバーと技術

第三章 卓球の炎をかかげて

十二 今後のラバーと技術

 日本国内ではやや関心が薄いが、今や世界各国の指導者にとって最大の関心事はラバーに関するルール問題と言ってもよい。一九七七年の世界選手権バーミンガム大会の時から、国際卓球連盟内ではラバー規則問題で活発な論議が展開されてきた。バーミンガム大会に続いて二年後の平壌大会、四年後のノビサド大会でも総会の票決にもち込まれた。ノビサドでは「ラケットの両面にはるラバーは異色」が提案され、賛成八四に対し、反対六六で否決された。国際卓連のルール変更には七五%以上の賛成が必要なのだ。

 この論議はその後ますます高まる方向だ。そこで卓球レポートでは今春世界各国の国際卓連役員、各国協会、一流コーチ、一流選手四〇〇名を選んでラバー問題全般のアンケートを実施した。三〇項目の質問の中で、ラバーの進歩が卓球をダイナミックにした、という点ではほとんどの賛同を得たけれども、現況の両面異質ラバーを駆使する変化プレーには何らかの規制が必要、とする回答が圧倒的に多かった。ただし、その方法となるとマチマチであり、最も多いのは「両面異質の場合は異色」という回答だった。

 私はこの結果にもとづいて、八月末ソウルに集まったエバンス会長、クレメットルール委員長はじめ一〇数名の各国代表と個別に意見を交換してみた。パキスタンやアラブ諸国そしてメキシコ代表もラバー規制は必要という点で一致した。理由の根源は「異質使用のマジックプレーは卓球を破壊する。特に欧州では卓球の観衆が減り、テレビの視聴率が落ちた」ということであるが、AAA諸国まではっきり同調するところまできたのである。

 そこで中国はどう出るか、とういのが各国の関心事でもあるが、最近来日された張燮林、孫梅英両コーチが松崎キミ代さんに次のように述べた。これは注目すべき内容を含んでいる。「国際卓球界では近い将来ラバーの規制が起こる、と見ており、中国ではこれにどう対処するかがコーチの大きな問題。九月の全国コーチ会議(五日間)で新しい方針が決められよう。個人的見解だが、中国ではいま全国で異質使用が流行しているが、この傾向は変えなければならない。なぜなら、異質使用者はまず相手に恐怖感を与えるようでなければならないのに、両面異色となればその力が弱まる。異質はスピード等において力が落ちる。今後は本格的選手を育てなければならぬ。我々は近い将来、国内の団体戦の構成を考えなければならない。即ちチーム内の異質選手は一名を越えてはならない、という規制を既に実行中だ-」という。これは大変な英知と言うべきかもしれない。

 私はさる九月、スポーツ業界視察のため訪欧したが、西ドイツでは「両面異色」で統一された、と聞いた。また、中国のこの話をもち出した時、ある指導者は驚きをみせたあとこう言った。「中国は先を読んでいる。しも読みが深いし、卓球をよく考えている」と高く評価した。

 このようなわけで、卓球レポートでは今回国際卓球連盟ルール委員長のクレメットさん(英国)に論文を書いていただいた。日本でも指導者は以上のことを知ってほしい。新しいルールが生れるとしても一九八五年以後のことだ。混乱を避けるため、転換には二年間が必要だ。当分は異質使用選手は活躍をつづけるだろう。使う以上は徹底した研究努力を望む。また本格的な選手も将来もっともっと、その本領を発揮できる時代が来るのである。
(卓球レポート一九八二年一二月号)

 

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