「卓球は血と魂だ」 第三章 十四 世界制覇は可能だ

第三章 卓球の炎をかかげて

十四 世界制覇は可能だ

 一一月下旬、ニューデリーで開催されたアジア大会男子団体決勝において、日本のトップに出た斉藤(熊谷商工→明大)は二四-二六、二六-二四、二一-八で世界チャンピオン郭躍華を堂々と打ち破った。その日まで「なぜ日本は弱くなったのか」と質問していたインドの役員達と五〇〇〇人の大観衆は、この一戦に酔いしれた。激しい打ち合いでせりあい、サービスでの不利を克服してがんばる斉藤が、尻あがりに郭のプレーに慣れ、ラリーになると必ず郭を追い込んで連続スマッシュで打ち抜いていく凄い迫力に満場はうなり声を上げ、場内われんばかりの拍手がうずまいた。

 個人戦で再び郭と対戦した斉藤は三-〇で郭を退けたあと、惜しくも謝賽克に敗れて二位となったが、私はこの試合を見学して日本は中国に勝てると確信した。小野・阿部組がダブルスで優勝したことも、その確信につながることであるが、斉藤の活躍は日本の若い世代に大きな自信と希望を与えたのである。

 中国の攻めは速い。サービスがうまい。両面異質ラバーの使い方がうまい。大きなラリーに持ち込めば有利な日本の卓球だが、その前に攪乱されて敗れるのが現状である。一九六五年の世界大会男子団体決勝で中国から貴重な二勝を奪った高橋浩選手は独特なサービス力を持ち、前陣で威力あるバックハンドをつくり上げ、荘則棟選手に勝ち越した。一九七九年の平壌大会で男子単に優勝した小野選手は、大会前二ヵ月間はバックサイドのショート戦術を猛訓練して成果を上げた。

 相手を十分に研究し、その対策に十分な基本練習をくり返し、敢然とした勇猛心をもって立ち向かっていけば、中国の選手たちもその弱点をさらけ出し、あせって凡ミスを出すなど意外なもろさを見せてくる。今の日本選手諸君はまず対中国の劣等感をふり払わねばならぬ。そのための基本は練習に取り組む姿勢と忍耐と勇気ではないか。

 日本の攻撃選手が中国を破り、世界で勝利するためにはフォアハンドの方が基本になる。このフォアの威力と爆発力のあるスマッシュがなければダメである。フォアの強烈な攻撃力があれば、中国選手はこわいのだ。しかし、バックサイドに大きな欠陥があったのではフォアの打ち合いに持ち込む前に日本は敗退する。

 ニューデリーでの斉藤君のプレーは素晴らしかった。全参加選手の中で、フォアのスマッシュ力が抜群だった。バックのショート処理がうまかった。この訓練が今後さらに一歩前進充実すれば、あと三ヵ月に迫った世界選手権東京大会での勝利につながるだろう。斉藤の活躍は若手日本の起爆剤として大いに期待されるところである。

 男子に比べ女子は低調と見られている。たしかにアジア大会では韓国にも朝鮮にも敗れて四位となったが、嶋内は中国から一勝をもぎとった。日本の得意とするフォアの勝負に持ち込み、勇敢に戦った時の嶋内は強かった。バックハンドも思い切って振った。問題は日本国内の自信喪失のムードではないか。

 後続の日本女子新人には多くのよい素材がある。先輩の世界チャンピオンのあり方を見つめ直し、選手もコーチも大いに奮起し、がんばろうではないか。
(卓球レポート一九八三年二月号)

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