「作戦あれこれ」第74回 異質ラバー作戦⑨ 対片面表ソフトシェーク型の練習方法

 片面裏ソフト、片面表ソフトの異質シェーク攻撃型に強くなるには、そのスタイルを想定した練習が必要だ。ただばくぜんと練習しているだけでは、けっして強くなれない。

 前後に大きく動くフットワーク

 このタイプに強くなるには、まず"前後の動き"をしっかり練習することだ。
 なぜならば、上手な片面表ソフトシェーク攻撃型は、こちらがドライブで攻めるとナックル性のストップショートで前にゆさぶったり、またストップレシーブからの攻め、連続強打からのストップショートと前後に激しく攻めるのが実にうまいからだ。したがって前後の動きの悪い選手はなかなか勝てない。
 しかし、攻撃選手のほとんどは前後動のフットワークより左右動を重視した練習をやっているために、打球後左右に素早く動くのに適した「やや腰を低く落とした姿勢」をとってしまうクセがある。そのために、前に止められることが分かっていてもとっさに前へ動けない欠点がある。フットワーク練習のとき、いつも左右動だけするのではなく、左右動と前後動を並行してやっていく必要がある。
 前後動のフットワークの基本は、フォアハンドで前後に1本ずつ動くフットワーク(これは各コースとも行なう)。それと、バックハンド、もしくはプッシュで前後に動くフットワークだ。これをしっかりやるとかなり前後の動きがよくなる。あるいは、ランダムに短く返してもらったり、深く返してもらったりして動く練習方法もある。これをワンコースと全面で行なう。
 このときの注意点は、①足の運びを正確に行なうこと ②コートから離れたときは大きめのフォーム、コートに近寄ったときは小さめのフォームと大小のフォームの使い分けをすること ③フォアハンドで打つときは左足前(左利きは右足前)の基本動作をしっかりまもること ④できるだけ大きく動くこと ⑤ばくぜんと動くのではなく、片面表ソフトシェーク選手と試合をしているつもりで動く...などだ。
 前後動が苦手な選手は、前後に動かされると無理な態勢で打ち返さなければならないため、フォームを狂わせ3球目やレシーブの調子も崩す。また体力の消耗も激しい。しかし、前後の動きがよくなると、これらのことが解消されるだけでなく、レシーブもよくなるしスマッシュチャンスも増える。卓球にとって大変に大切な動きであるのでしっかり練習しよう。

 表ソフトのボールを数多く受ける

 次に"表ソフトのボールを数多く受ける"ことだ。
 なぜならば、このタイプに苦戦するのは表ソフトのナックルショートとタイミングの速いハーフボレ―にとまどうからだ。
 ところが、普段の練習では「表ソフトのボールは打ちにくい」といって表ソフトと練習したがらない選手が多い。が、これではいつまでたっても表ソフトのボールに慣れず、表ソフトシェーク攻撃型に勝てない。
 中でも、表ソフトのナックルショートを強ドライブやスマッシュで狙い打ちできるようにしておくことは、片面表ソフトシェーク攻撃型を破る必須条件だ。また、台上のボールを鋭く払う技術もどうしても必要だ。したがって、ナックルショートをドライブやスマッシュで攻め込む練習、ストップレシーブをしっかり踏み込んで打つ練習をたくさんやることだ。
 このナックルショートをフォアハンドで狙い打ちする練習をする場合は、ワンサイドでも全面でも、サービスまたはレシーブから行なうと効果が高い。
 たとえば、カットサービスやドライブ性ロングサービスを出して、試合のときと同じように思い切り3球目ドライブをかけて次を動いてスマッシュ。レシーブのときも、払うレシーブから3球目のナックルショートを狙う、というように実践的にやる。
 こうすると、ナックルショートもさることながら表ソフトのサービス、レシーブ、ツッツキなど、プレーのすべてに慣れるので、ただナックルショートを打つよりはるかに効果的な練習になる。また、表ソフトの選手がいたらつかまえてゲーム練習をたくさんやろう。ゲームをやるとタイミングの早い攻撃に慣れ、片面表ソフトシェーク型の速さにまどわされることがなくなる。

 表ソフト、裏ソフトの2人を相手にする練習

 表ソフトのシェーク攻撃型に強くなるには、同タイプの選手と練習やゲームをすることだが、そういった選手がいないチームもあると思う。そんなチームが、対片面表ソフトシェーク型の強化をする必要がある場合は、フォア側に裏ソフト、バック側に表ソフトの選手を立たせフォアにいったボールは裏ソフトの選手が、バックにいったボールは表ソフトの選手が打ち返すという練習方法が良いと思う。こうすると、両者が弱いとしても強い片面表ソフトシェーク攻撃型がつくれる。
 もし表ソフト攻撃型がいないチームならば、この練習のときだけ表ソフトのラケットを順番に使用して練習するとよい。表ソフトを使う選手はミートやショートのコツをつかむ練習にもなるし、かなり片面表ソフトシェーク攻撃型と対戦したときに役立つものだ。

 クロスに鋭く払うレシーブ

 また、このタイプと対戦した場合、レシーブも非常に大切になる。甘いレシーブをすると両ハンドで前後左右に激しく攻めたてられてしまうからだ。
 では、どのようなレシーブが必要か。それは、まず"クロスに強く払うレシーブ"ができるようにすることだ。これを身につけると、ボールに近い方の足を大きく一歩動かして打つ中国式フットワークを採用することの多い片面表ソフトシェーク攻撃型は、強打するとミスが出やすいためにコースをついてつないでくる。そのため、レシーブ+4球目で得点できる。また、威力のある払うレシーブを持っていると、こちらが軽打もしくはツッツキでレシーブをしたとしても、相手は「鋭く払われるのではないか」とフォア側を警戒するため、強烈な3球目攻撃をされづらい。
 ところが最近は、対ドライブマンの練習が多いのか、片面表ソフトシェーク型の選手に対しても相手にドライブをかけさせまいと、ストップレシーブを多用する選手が多い。ところが、この型の選手にとってネット際に短く返されたツッツキレシーブ(特にバック前)は、一番打ちやすいボールなのだ。したがって、裏ソフトと同じような作戦で臨むとひどい目に合う。相手がドライブしようとしているときは、フォア前にストップ、前についているときは払うか強く切ってツッツいたほうがよい。このように表ソフトシェーク攻撃型と対戦したときは、必ず作戦をかえなければならない。
 この払うレシーブの強化方法としては、まずサービスをフォア前かバック前、ミドル前のどれかにコースを決めて100本、200本と反復練習するのがよい。最後に全面に出してもらう。そして、試合では狙ったところにきた場合に思いきってパッと払えるようにしよう。

 フォアハンドとバックハンドの切りかえ...

 この外、ぜひやった方がいいと思われる練習は、次のようなものだ。
 ①フォアハンドとバックハンドの切りかえ フォア、バック1本ずつや、フォア1本、バック2本ずつ打ってもらい、バックにきた1本目はショート、2本目は回り込んでフォアハンド、次はフォアへ動いてフォアハンドの切りかえなどがある。また、ランダムに大きく動かしてもらい、それを両ハンドで打ち返すなどもよい
 ②サービス練習 とくに同じモーションから速いドライブ性ロングサービスとショートサービスの使い分け
 ③ハーフボレ―対プッシュショートかバックハンド
 ④サイドを切る練習
 ⑤ストレート攻撃
 ⑥スマッシュ練習
―の6つだ。シェーク攻撃型に強くなるにはいろいろな練習があるが、これまで上げた全部で10の練習がとくに大切だと思う。



筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1982年4月号に掲載されたものです。
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