「作戦あれこれ」第81回 カット攻略法

 11月号の「やさしい戦術」のところでも述べたが、最近の中・高校生の試合を見て感じるのは裏ソフトの攻撃選手も表ソフトの攻撃選手も、意外と対カットマンのチャンスの作り方を知らないなぁ、ということである。ドライブマンはドライブの威力だけに頼る。表ソフトはストップやツッツキからのスマッシュばかり多い。味のある攻め方をする選手が非常に少ない。それが今年の全国中学校大会、インターハイでもかなり目立った。
 とくに、イボ高ラバーや性能のいいアンチラバーが開発された最近の試合では、カットマンは単調なドライブやツッツキに対して非常に強くなった。そのため、少々のレベルのカット打ちでは勝てない。
 そこで今回から3回に分けて、ドライブマンがカットマンと対戦した場合の攻略法を述べてみたい。今回はまず、カットマンと対戦した時の基本的な戦法を、次回からは実践的なテクニックを紹介しよう。

 カット攻略法はいろいろある

 カット攻略には基本的に次の9つの戦法がある。

1.ドライブからのスマッシュ
 ドライブロングでねばっておいてチャンスボールをつくりスマッシュ―する攻め方。このときのドライブは、強烈な回転をかけたドライブでなく、クロス打ちのロングと同じぐらいの回転をかけたドライブである。しかし、ドライブでねばっておいてスマッシュする、といっても強いカットマンに対しては、ただドライブで粘っていたのではチャンスボールがこない。そこでドライブボールに長短、回転、スピード、コースの変化をつけて、相手の凡ミスを誘ったり、スマッシュチャンスを作りスマッシュに結びつける。ストップも有効に使う。1本1本の球威より、相手のカットに負けないくらい粘れることが基本である。
 もともと日本では「カット打ち」といえばこのドライブ打法が代表的な戦法であった。しかし、昭和35年にループドライブが大流行して以来、ループや回転を鋭くかけたドライブに頼る選手が増えて、表ソフトやイボ高の選手以外は、以前のようなドライブロングからのスマッシュによる味のあるカット打ちの名手が少なくなったのは残念なことである。

2.強ドライブの連続からスマッシュ
 からだ全体をフルに使い、鋭くかけたドライブで相手を左右にゆさぶり得点を狙う―戦法。日本の男子、ヨーロッパ、中国の男子に一番多く見受けられるカット攻略法である。ドライブに球威のある小野(日本楽器)、阿部(協和発酵)、中国の郭躍華、クランパ、ヨニエルをはじめとするヨーロッパ勢、女子の曹燕華、ハンガリー勢などの各選手がこの攻めを得意とする。
 もちろん、強ドライブで押しまくり得点を狙う、といっても、相手のカットマンが強い場合にはなかなか得点できないし、球威を逆に利用される。そこで強ドライブにも長短を混ぜたり、回転に変化をつけてスマッシュチャンスを作る。レベルの低い段階ならともかく、パワードライブに頼った単調な攻め方だけでは、本格派のカットに通じにくい欠点がある。インターハイではパワードライブによる力攻めをして、カットの変化にかかり負けた選手がたくさんいた。また、ループよりも更に体力の消耗が激しいし、ミスが出やすい欠点がある。

3.ループドライブからのスマッシュ
 ループドライブをかけて浮いてきたらスマッシュ―という攻め方。日本の女子の神田(日産自動車)、山下(明治生命)、中国の斉宝香らの選手がこのカット攻略法を基本としている。もちろんこの場合もループでねばっているだけでは、相手が強い場合にはチャンスボールがこないし、狙われる。ループドライブに長短、回転の変化を混ぜたり、速いドライブを混ぜて相手のミスを誘いスマッシュチャンスを作る。現代のドライブ選手は、2と3の戦法をまぜて戦う選手が圧倒的に多い。

4.ドライブロング、ストップ、ドライブロング、ストップのゆさぶりからのスマッシュ
 ドライブロング、ストップ、ドライブロング、ストップで前後に激しくゆさぶってからスマッシュ―という攻め方。この場合のドライブは1と同じドライブロングを指す。回転よりスピード、コースを中心として攻め方。この攻め方は、強烈なドライブをかけられない初心者が多く使うが、カットマンはこのように前後に攻められると弱い選手が多い。ロングにスピードがあるとなお威力のある攻めになる。回転のかかりにくいイボ高、表ソフトの選手にこの攻めが多い。しかし、ツッツキの変化にひっかかりやすいので注意。前後左右にしっかり動くことが大切である。

5.強ドライブ、ストップ、強ドライブ、ストップ
 強ドライブでカットマンを下げストップ、前に寄せてまた強ドライブ、そしてまたストップと前後に激しくゆさぶる―攻め方。4の攻略法と基本的には同じである。中国の郭躍華をはじめとする中国式裏ソフトの選手がよくこの戦法を使う。

6.強打の連続からストップ
 強打、強打の連打で相手を完全に台から下げ、ストップで得点してしまう―戦法。'61、'63、'65年の世界チャンピオンの荘則棟選手が得意だった。裏ソフトのドライブマンには、ボールが浮いたとき以外ほとんど見受けられない戦法。

7.パワードライブの連続からストップ
 この戦法は、強打の連続からストップと同じ考え方でパワードライブの連続攻撃でコートからカットマンを大きく離したのち、チャンスボールをスマッシュすると見せかけてストップして得点する。

8.ツッツキから強打
 ツッツキで粘って強打―という戦法。女子で全日本5回優勝した大関選手の得意の戦法だった。大関選手はツッツキに変化をつけながらカットマンを左右にゆさぶり、スマッシュする。この戦法で'71年名古屋世界大会の団体戦で個人種目3冠王になった林慧卿選手を倒し、団体優勝に大きく貢献したのは有名な話だ。しかし、この戦法を成功させるには、ツッツキに威力がありショート守備がうまいことが前提になる。

9.ツッツキから強ドライブ
 この戦法は、一般的にはドライブで連続して粘れない選手が使う戦法だ。が、粘れる選手でも試合に変化をつける意味でつかえる。ただしカットマンのツッツキの変化にひっかからないように注意すること。変化にひっかからなければ攻撃力のないカットマンには大変有効な攻略法である。カットマンは、台から近い位置でドライブをとらなくてはならないからだ。
 今回あげた9つの戦法は、戦型による基本的なカット攻略法だが、強いカットマンを倒すためには、このうちいくつかの戦法を使えることが必要だ。また、これらをミックスさせることで何十とおりものカットマン攻略法が可能になる。次回は実践でのテクニックを紹介しよう。



筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1982年12月号に掲載されたものです。
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