「作戦あれこれ」第103回 ストレート攻撃の上手な使い方

 "攻撃対攻撃の試合に勝つコツ"として、ストレート攻撃の重要性を3回にわたって述べてきた。しかし、折角ストレート攻撃技術が上手になっても、その使い方が悪いと勝てない。そこで今回は、ストレート攻撃の上手な使い方について述べよう。

 ストレートは危険なコース。だが効果抜群

 ストレート攻撃は、大変に効果の高いコースだ。しかし、危険がいっぱいのコースともいえる。なぜなら、自分では「このボールはストレートに打てば決まる」と自信を持ってストレート攻撃をしても、相手にそのコースを読まれてしまっていると、逆にクロスに大きく攻め返される。こうなると自分の動く距離が非常に大きくなり、ノータッチをされたり、とっても次を簡単に決められてしまう。また、ストレートコースはクロスと比べるとだいぶ距離が短く、ミスが出やすい。
 ショートの守りや、読みに自信を持っている選手の中には、わざと相手の待っているところへストレートにレシーブしやすいサービスを出したり、レシーブをしたりして相手にストレート攻撃をさせ、それを待ち伏せしてクロスへノータッチをとろうとする選手もたくさんいる。ラリー中にストレートへドライブ攻撃しても最近ではコースを待たれて前陣カウンタードライブで狙われたりする。こうなるとフットワークのいい選手でも、とても追いつかない。このようにストレート攻撃は両刃の剣なのである。
 しかし、ストレートは確かに距離が短いためにミスする危険も高いが、ボールにスピードがあれば、距離が短いだけ相手に届く時間も短く、相手の読みや技術のレベルを上回るボールで攻めたときは、効果のあるほうがはるかに大きい。試合に強い選手、勝負強い選手はこのストレートをつくのが上手な選手なのだ。
 では、試合でどのようなコースのつき方をすれば、最後までストレート攻撃を生かすことができるか、私の体験を述べよう。

 どちらにも決まるボールはクロスに打て

 私はストレートコースをすごく大事にした。そして、そのストレートコースを生かすために、常にいくつかの工夫をした。
 まず第一に気をつけたことは、試合には終盤だけでなく、序盤にも中盤にもそれぞれ"大事なポイント"というものがある。が、常にその大事なポイントでストレート攻撃が効く攻め方を心がけたことだ。だからむやみやたらにストレート攻撃を使うことは絶対にしなかった。
 クロスに攻めてもストレートに攻めてもミドルに攻めても得点できるチャンスボールは、よほどのことがない限り、クロス攻撃で得点するようにした。また、相手にうまく攻められてクロス攻撃しかできないときは、威力のあるドライブで攻めたり、同じフォームで回転を少なくしたりして、できるだけクロス攻撃で得点するように心掛けた。
 たとえば、こちらの作戦どおりにツッツキレシーブがバック側に来たとする。このボールをバックストレートに思い切り攻撃をすれば得点できる場合でも、"ここ1本"という場面でないときは、クロスに速いドライブをかけたり、猛烈な回転のループドライブをかけて相手のミスを誘うようにした。
 また、バックにドライブロングサービスを出し、相手のショートが高く上がってきたときも大事な場面でない限り、ストレートに打つのは我慢してクロスに叩いて得点をするようにした。
 ラリーになったときも、相手が調子に乗りそうな場面では、ときどき相手の意表をつくストレート攻撃をしたが、ここ1本という時までは我慢してクロスで押しきるようにつとめた。特にチャンスボールはクロスに決めるようにした。
 その理由は、相手の頭の中に「長谷川はクロス攻撃を中心にしてくる」と覚えこませるだけでなく、クロスへの強打を何回も取らせることによって、相手の体にもクロスボールを覚えこませ、ここ1本でも条件反射的にクロスに動くようにさせる。そして"ここ1本どうしても欲しい"ときに、ストレート攻撃すれば確実に得点できるようになるからだ。
 また、いつもこのように考えたコースのつき方をしていると、何回も対戦している相手は、中盤、終盤の大事なポイントになると「長谷川は必ずストレート攻撃してくる」と必要以上に予測する。そのときに、ミドルやクロスをつくと、あっさり得点できる。すると相手は、まったくコースが分からなくなり簡単に勝つことができる。
 ところが力はあっても試合に弱い選手は、このような大局を考えたコースのつき方をせず、目先のポイントにこだわって、一番決まりやすいところにどんどん打ってしまう。そのためにストレートコースを使い過ぎる。これでは大事な場面で「ストレート攻撃をして得点したい」と思っても、相手にフォームを読まれて慣れられて効かない。また、クロス攻撃でも得点できなくなる。これでは、試合に勝てない。
 中盤、終盤にストレートコースが効くように、序盤、中盤はストレートに打つのはグッと我慢をしてクロスに攻めるようにしよう。

 逆モーションストレート攻撃

 ストレート攻撃の使い方で2番目に気をつけたことはできる限り逆モーションで使うようにしたことだ。なぜなら、折角ストレート攻撃を効果的に使うために序盤、中盤でコースの工夫をしていても、肝腎な"ここ1本"でまともな体の使い方をしたのでは、強い相手にはコースを読まれてしまうからだ。体をしっかりひねり、どちらでも打てる体勢から打てば、たいていの相手には効いた。しかし、強い相手にも必ず通用するように逆モーション打法を研究したのだ。
 たとえば、"ここ1本"でバックにきたツッツキをバックストレートにドライブ攻撃する場合、しっかり回り込んでどちらにも打てる体勢から腰を大きくひねって、いかにも「バックに打つぞ」という構えをつくり、そこから打球直前に急に体をひねってバックストレートに攻撃した。
 フォア側に来たツッツキをフォアストレートに攻める場合も、どちらにも打てる体勢から、打球点を前にしていかにも「フォアクロスに攻めるぞ」という体の使い方でフォアストレートに攻撃した。
 この逆モーションストレート攻撃は、その前にクロス攻撃が効いていたときは抜群に効果があり、ノータッチで決まることが多かった。
 この攻撃があざやかに決まると、相手はこのストレート攻撃を恐れて神経が分散され、他のボールに対する反応も鈍くなった。
 しかし、この逆モーションドライブ攻撃は体の使い方、特に腰の使い方がうまくないとできない。基本練習のときに、しっかり腰を使って打つようにしよう。



筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1985年1月号に掲載されたものです。
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