「作戦あれこれ」第109回 表ソフト速攻型攻略法② 対投げ上げロングサービス

 ドライブマンが表ソフト攻撃型に勝つためには、戦術が非常に大切である。戦術がよければ自分より強い相手を倒すことができる。
 今回は、前回に続きフォア強打とプッシュが得意な表ソフト速攻選手とバックがやや弱いドライブマン(両者共右利き)との対戦で、速攻選手がバック前の投げ上げサービスと同じモーションからバック側に逆モーションぎみに深く投げ上げサービス(斜め下回転)を出してきた時のドライブマンの作戦を述べよう。

 回り込みドライブ攻撃を狙う

 さて、このサービスに対し、ドライブマンはどうしたらよいのだろうか。
 このとき一番悪いのが、フォア側に出されるのを恐れて、中途半端なバックのツッツキでレシーブすること。大きなカットサービスを単調なツッツキでレシーブすると、相手に届くまでに時間がかかるので、一流の速攻選手には90%以上の確率でスマッシュをきめられてしまう。フォアへでも切ったカットでレシーブしたり、試合運び上わざと打たせてロビング守備に入る...といった作戦もなくはないが、技術的に難しいうえ、やはり不利である。また同様に、投げ上げ横回転サービスやドライブロングサービスに対し、入れるだけのショートでレシーブするのも「スマッシュで得点してください」といっているようなものだ。
 さて、こんな時ドライブマンは、"先の先"を狙う作戦がよい。つまり、レシーブから回り込んで思い切ってドライブ攻撃するのだ。そして、次球以後も連続攻撃して攻めきってしまう。前回、ショートサービスに対し、"後の先"を狙ったのとは対照的な作戦だ。
 なぜなら、投げ上げロングサービスは、読みさえはずさなければドライブ攻撃がしやすい単なる長いカット性サービスである。しかも、威力のあるドライブレシーブ攻撃をすればレシーブエースも狙えるし、相手は無理して攻撃せず、反射的にショートのしのぎでコースをついてくるため、狙っていれば次も攻撃しやすく得点に結びつけやすい。
 だからドライブマンは、長いカット性サービスに対しては、多少フォアを抜かれても思い切って回り込みドライブ攻撃するのがよい。もし「バック側に出してきそうだな」と読んでいるにもかかわらず、ツッツいたり、甘いショートで返す選手は、ちょっとレベルが上がると速攻選手にいつまでたっても勝てない。
 したがって、ドライブマンは、相手がバック前に攻めてくる変化サービスを返せる用意をしながら、ロングサービスに対してはいつでも思い切りドライブ攻撃ができるように心の準備をしておくことが大切だ。また、良いレシーブをするには、一瞬の判断力と素早いフットワークが必要なため、集中しすぐに動けるように足を小刻みに動かしながら待っていることが大切だ。

 体から遠いところを攻める

 それと、このドライブ攻撃の時とても大事なことがある。それは、ドライブの"落点"だ。
 ドライブレシーブのコースとして、一番悪いのは、威力のないドライブを相手の手が簡単に届くところに落とすことだ。また、コースを考えず力まかせにドライブでレシーブするのもよくない。
 よいコースのつき方は、相手の手が簡単に届かない両サイドと速攻選手の右肩(ミドル)を狙って打つことだ。なぜなら、速攻選手はドライブマンの強ドライブの体勢を見た瞬間、反射的に「危ない」と体を縮め、守備の体勢をとる。その時に一番の弱点となるのが、体から一番遠い位置だからだ。そして両サイドを警戒しはじめると一番ラケットの角度を出しにくい右肩口(ミドル)もよくききはじめる。だから、ドライブマンは、ドライブレシーブに限らず、常にこのことを頭に入れてプレーをすることが対表ソフト速攻型必勝法だ。

 ストレートを警戒させて、バックを攻める

 では、投げ上げロングサービスに対するレシーブ作戦を、もう少し具体的に考えてみよう。
 相手の投げ上げロングサービスがこちらのバックサイドを切るようにくい込みながら入ってきた。このようなサービスに対する回り込みレシーブは、つまり気味になるためなかなかストレート攻撃がしにくい。が、相手にコースを読ませないためには、ときどきは思い切ってストレート攻撃をすることが必要だ。
 特に甘いコースに来たときは、レシーブコースを狙って思い切りドライブ攻撃をして、相手に「ストレートにも威力のあるボールを打つぞ」と思わせよう。すると相手は、こちらが回り込んだ時はバック側に思い切って回り込めなくなる。
 このようなレシーブ作戦を使いながら、ストレートに攻めるのが難しいサービスに対しては、しっかり回り込み、バックサイドにしっかり回転をかけたドライブで返し、相手にショートさせる。そして、このショートを狙いレシーブの時よりさらに強いドライブで、3つの弱点をドライブ攻撃する。

 ドライブ攻撃のパターン

 もう少しくわしく、4球目以後のドライブコースを考えてみよう。
[ドライブレシーブバックへしのがれた場合]
 4球目以後は自分が次に攻めやすいことを考えながら相手ショートをつぶすことが大切だ。だから、ドライブレシーブをバック側に低くしのがれた場合は、両サイドに打てる体勢からバックサイド、もしくは意表をついてフォアミドルに回転とスピードの変化をつけて攻める。そうすれば、相手はこちらのバックサイドに甘いショートで返してきやすく、このボールをフォアサイドに思い切り強ドライブで決めたり、相手にフォアサイドを警戒させてもう1本バックサイドに強ドライブで攻めると得点率が高くなる。難しいボールをあせって勝負しないことが勝つコツだ。
[ドライブレシーブフォアサイドにしのがれた場合]
 次にドライブレシーブをフォアにしのいできた場合は、素早くフォアに飛びつきながら、回転をしっかりかけた威力あるドライブでフォアサイドを切るように攻める(この場合、相手はバックへ止めてくることが多い。相手のスマッシュにも備えておこう)。あるいは、フットワークに自信のある選手は、ズバッとストレートにドライブ強打(スマッシュ)すると得点しやすい。この時はミドルより両サイドがきく。私は、フットワークがよくなった高校2年から、このストレート攻撃ができるようになり、以後得意技としてずいぶん得点を上げた。ドライブマンにとって大切なのがこのフォアストレート攻撃。しっかり練習しよう。
[フォアクロスのドライブをしのがれた場合]
 飛びついてフォアクロスにかけたドライブをしのがれた場合は、相手が固くなって甘いコースにしのいできたのなら思いきって回り込んでドライブ攻撃。前でパッと合わされて回り込めないときは素早くショート、もしくはバックハンドで相手のバックサイドをつき、相手をバック側に動かす。そして、次のボールを大きくあいたフォアサイド、あるいは、相手の動きの逆をつくバックサイド(ミドル)にきめる。
 こういったラリー中に注意する点は...。



筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1985年7月号に掲載されたものです。
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