「作戦あれこれ」第113回 表ソフト速攻型攻略法⑥ フットワーク練習をやろう

 前回、「石川インターハイの女子攻撃選手が、石田、高橋、名和...といった表ソフト速攻型の選手と対戦するのを見て、表ソフト速攻型を攻略するためには、作戦が非常に大切ではあるが、まずその前に表ソフト攻撃型と対戦した時に凡ミスをしないための基本技術のマスターと基本練習が大切だ」と考え、①高弾性ラバーを使う上の注意点 ②正しいフォームを身につけるコツ ③しのぎの練習 ④常に守れる体勢でプレーすることの大切さ...を紹介した。
 今回もそれに引き続き、「基本技術を高め凡ミスを減らすためにはどうしたらよいか」を考えてみよう。

 フットワーク練習の不足

 石川インターハイで、ドライブ型がラリー中にすぐ凡ミスしてしまう原因を考えると、前回述べた基本技術と守りの基本練習の不足のほかに、フットワーク練習の不足がまず考えられる。
 特に、フォアへの飛びつき、バックの回り込み、といった、フットワークとしては基本中の基本とも言える動き方がしっかり身についていない選手が非常に目立った。
 飛びつき、回り込みのフットワークは、レシーブや3球目から必要な動き方で、ラリー中も常にでてくる動きである。この動き方をマスターしていなければ、動きの足りない分を上半身の動きでカバーすることになる。凡ミスが多くなるのは当然のことだ。
 そして、さらにつけ加えるなら、ラリー中の細かい動き(微調整)や両ハンドの切り替えの時の足の性格な踏みかえを正しく行なっている選手はほとんどいなかった。高校生の女子の段階で、日本のよさである素晴らしいフットワークを受けつぐことはなかなか容易ではない。が、難しくても身につけなくてはならないことだ。

 ランダムのフットワーク練習

 「なぜインターハイでフットワークが悪いための凡ミスが多かったか」を考えると、答は簡単にでてくる。
 それは大きく動くフットワーク、特にランダムにコースを決めず全面に回してもらって続けるフットワーク練習(主としてフォアハンドで動き、逆をつかれた時にバック系技術を使う)が少なくなったからだ。
 このため、ラリー中のフットワークやフォームの柔軟性がなくなり、凡ミスが増えた。特に速いテンポで逆をつかれた時に非常に弱くなった。
 このような「ラリー中の凡ミスを減らす練習」は、ラリーが続かないシステム練習(サービスからの3球目攻撃練習等、試合に出る場面を想定し、やることを決めて行なう約束練習)ではなかなか身につかない。やはり、こういったランダムのフットワーク練習を十分やり込み、体で覚え込むしかない。ひとつひとつの動き、フォームが正しくできているかどうかチェックしつつ、我慢強く反復練習を行なうことである。

 フットワーク練習の注意点

 このランダムのフットワーク練習にも、その目的により、いくつかの方法がある。
 例えば私が現役時代によくやった「フォアへの飛びつきを強化する」ためのランダムのフットワーク練習を紹介すると―
①(右利き)相手に、ショートでクロスに1~4本返してもらい、フォアハンドで回り込んで続ける
②機をみてストレートに回してもらい、正確な足の運びで大きくフォアへ飛びつきストレートへ返す
③そのボールを、もう1本フォアサイドへ回してもらい、フォアで打ちやすい、やや左足前の良い姿勢(ニュートラルの基本姿勢)にすぐもどり、そこから踏み込んでフォアハンドで返す
④ミドル、ストレート、ミドル、ストレート、ミドル、バック...というように、ランダムに複雑に、5~6本のショートで、バックへ回してもらう
⑤①にもどり、凡ミスをしないように、足の動かし方をチェックしながら、①~④を何回もくり返す
―という練習方法。15分を1セットとして、他のフットワーク練習と合わせ、高校・大学時代は毎日1時間程度、クタクタになるまで行なった。
 このほかにも、今と同じ練習方法で、相手にフォアハンドで動かしてもらうにしても(フォアクロスへ飛びついてクロスに打つのでより難しい)、ショートで動かしてもらうにしても、左右に大きく動かしてもらったり、距離は少なめにして速めのボールで動かしてもらう...など色々な練習方法がある。初めはゆっくりとしたボールで続け、正しいフットワークとフォームを身につけることが基本だが、レベルが高くなれば相手にプッシュで回してもらう、などの方法もある。

 バックハンドをマスターしよう

 フットワークとフォアハンドを強化し、凡ミスを減らすことはどの戦型の選手にとっても大切。特にドライブ型の選手にとっては重要度が高い。しかし、表ソフトの速攻選手に速いテンポで動かされた場合は、どうしてもバック系の技術で処理することになる。
 バック系の技術にはプッシュ、バックドライブなど色々な打法があるが、中陣でプレーすることの多いドライブ型の選手は、前陣でのショート系打法だけでなく、ペンの選手はバックハンドロング(以下バックハンド)、シェークの選手はバックハンドドライブ(ロング)をマスターしないと、強い表ソフト速攻選手には勝てない。
 私がバックハンドの必要性を感じ、練習を始めたのは高校2年の終わり頃だった。「今後はバックハンドをマスターしないと中国の速攻選手に勝てない」と強く感じて練習を始めたのだが、その時は以前も述べたように、当時の卓球レポ-トに載っていたペンのバックハンドの名手・高橋浩選手(1964年アジアチャンピオン)のフォームを参考に練習した。
  私の1本差しグリップ(シェーク裏面の指が中央に寄る)でのバックハンドフォームがペンのそれによく似ていたためだが「バックスイングの時、前傾しすぎない」「体の軸を前後左右に崩さない」「フリーハンドを活用する」「手打ちにならない」...といった点に注意した。
 皆さんも、自分のグリップ、戦型にあった超一流の技術を参考に正しいバックハンドをマスターしてほしい。それが正しい基本を身につける近道である。
 今回述べたランダムのフットワーク、そしてバックハンドをマスターすれば表ソフトの速攻選手に速いテンポで攻められても、凡ミスせずにはね返せる大型プレーヤーになれる。がんばって練習しよう!



筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1985年11月号に掲載されたものです。
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