「作戦あれこれ」第114回 表ソフト速攻型攻略法⑦ 体の軸を崩すな!

 前回、ドライブマンが表ソフト速攻型に勝つためには「フットワーク練習」と「バックハンド」が大切と述べそのための「ランダムのフットワーク練習」等を紹介した。今回はそれに続き、そのフットワーク練習をより効果的にするためのコツについて考えてみよう。

 自分から進んでやる

 フットワーク練習の効果をあげるため、絶対に欠かせない心構えがある。それは「自分から進んでフットワーク練習をする」積極的な心だ。
 フットワーク練習を十分やる時間のない小~中学校の選手にはピンとこないかもしれないが、強くなるため毎日30分以上苦しいフットワーク練習に取り組まなければならない段階になると、「ああ、イヤだな、早く終わらないかな」と消極的になりやすい。こいったノルマを果たすような気持ちで練習したのでは効果が半減する。
 「動くスピードが落ちる」「とれるボールがとれなくなる」「反射神経がにぶくなる」「すぐ疲れる」「ケガをしやすい」「悪いフォームになる」「悪いクセがつく」など、これでは何のためフットワーク練習をするのかわからない。やらないほうがマシ、という場合さえある。
 やはり、同じやるなら「試合で少しでも速く動けるようになろう!」「今とれないボールをとれるようになろう!」「苦しい体勢でも入るように、よいフォームを身につけよう!」...と、目標を持ち、積極的な気持ちで進んでフットワーク練習に取り組むべきだ。そうして夢中でやっていれば、時間もアッという間に過ぎ、苦しい練習も苦にならない。

 フットワーク練習の成果

 私の経験を話すと、実は高校時代、私はフットワーク練習が大嫌いだった。高校1年の12月までは、イヤイヤ、無理にやらせられる気持ちでやっていた。しかし、全日本ジュニア1回戦で無惨な負け方をしてから、「アア、フットワークが悪くては全国大会では絶対に勝てない」と悟った。そして「次の全国大会では絶対に勝ってやる!」と一段高い目標を持ち、嫌いだったフットワーク練習に取り組む決心をした。そして、学校で血のでるようなフットワーク練習に取り組み、次の全国大会である高2のインターハイ予選で「絶対不利」と言われていた表ソフト速攻の強豪選手に勝ち、本大会でも3位に入賞した経験がある。
 また、体力が劣えてきた現役時代の後半には「フットワークが悪いと勝負どころで勝てない」「フットワーク練習をしっかりやっておかないと試合で苦しむ。試合で苦しまないようにフットワーク練習をやっておこう!」「大切なフットワーク練習に取り組めなくなった時は、たとえ試合で勝っても引退する時だ。がんばれ!」と自分をふるいたたせてフットワーク練習に取り組んだ。シングルス2連勝がかかった1974年アジア選手権。気力が劣え、引退間近のこの年に、こんな思いで必死にフットワーク練習に取り組み、決勝で当時世界チャンピオンだった郗恩庭選手(中国)を3-0で破ったよい思い出もある。
 フットワーク練習を一生懸命やると、フットワークはもちろん、レシーブや3球目攻撃、ラリー中のドライブ、スマッシュの威力と安定性も増す。自分から進んでフットワーク練習に取り組んでいる時は、必ず強くなっている時だ。同じやるなら「強くなる」ため、目標を持ち積極的な気持ちでフットワーク練習をしよう。

 チェックポイント!

 良いフットワークを身につけるためには、技術的なチェックポイントがいくつかある。今回は、その中でも特に大切な正しい基本姿勢について紹介しよう。
 よく、試合中フォアへ飛びつく時、頭から大きく前傾して動いたり、バックへ回り込む時のけぞった感じで上体を傾けて回り込む選手がいる。これでは、体の回転を使って打てないので手打ちになるし、ボールも傾いた状態で見ることになり、はなはだ安定性に欠ける。これは、足の動きが足りない分を上体でカバーしようとする選手に多く見られる現象で、感心したものでない。
 フットワークを使い、しかも正確な打球をするために必要なことは、正しい基本姿勢を保ちながら動き、そして打球すること。一言でいうなら"体の軸を崩すな!"ということだ。ちょうど、動いても背骨に1本ピンと軸が入っているような状態を保つことだ。
 といっても、これは不自然にロボットのようにしろ、というのではない。自然にやや前傾してアゴを引き、右にも左にも上体を傾けず、のけぞったり、前傾しすぎたりしない、一番ボールを打ちやすい自然体に上体をしておきなさいということだ。
 そして、これは言うまでもなく、正しい下半身の備えがなくてはうまくいかない。いくら正しい上体の姿勢をとろうとしても、足がしっかり動かないのでは、上体は傾いてしまう。足がしっかり動き、その上の腰が正しく回転してこそ、体の軸を崩さず打球することができる。
 ではどのような下半身の構えがよいかというと
①肩幅よりやや広めのスタンス。かかとを少し上げる
②膝に余裕をもたせ、軽い「くの字型」にする
③尻を少しあげ、やや前傾ぎみにする
...といった点だ。もちろん動いている時はスタンス等は当然変わるが、下半身が左右にみだれたり、腰が上下しないように、常にこの構えを保ち、上体の軸を崩さない。そして自然体を保ちながら素早く動く。
 この下半身、上半身の分業がしっかりいっていると、前にも横にも大きく動け、両サイドのボールに強くなる。また、小きざみで正確なフットワークがやりやすく、上体が安定するため、余裕をもった正確な打球ができる。もどりも早くなる。そして、基本がしっかりするため、練習すればするだけ強くなる。
 皆さんも、背中を丸めすぎたり、お尻が落ちたり、飛びついた時体を傾けすぎたりしていないか、正しい基本姿勢を仲間と一度チェックしてみよう。



筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1985年12月号に掲載されたものです。
B!

Recommend

おすすめ記事

■その他の新着記事

■その他のカテゴリ一覧