「作戦あれこれ」第123回 カット型攻略法⑤ 良いツッツキで強打させない

 前回はドライブ対カットのラリー中、カットマンがドライブでドライブを攻撃してきた時の対処法について述べた。今回はツッツキをカットマンが狙い打ちしてくる時には、どういう作戦をとったらよいかを考えよう。

 カットマンの作戦

 カットマンにとって、ツッツキをドライブで攻撃する、ストップを強打で攻撃する...というのは最もオーソドックスな攻撃法である。したがって練習量も多いし、うまい。ロングマンとしては何とかしてこの攻撃を封じなくてはならない。
 カットマンがロングマンにツッツかせるパターンとしては、①変化サービスを出してツッツかせる ②猛烈に切ったカットを送りツッツかせる ③変化のわかりずらいカットを送りツッツかせる ④フォアへカットを送った後、高い打点(主にイボ高面)の切れたカットをバックへ送りツッツかせる ⑤早いタイミングのツッツキで台上ボールを(バックへ)処理しツッツかせる...といった作戦が多い。

 勇気をもってドライブで粘れ

 それでは、こういったカットマンの作戦に対して、どう対処したらよいのだろうか?
 まず考えなくてはならないのは、カットマンの注文どおりにはツッツかないことだ。そのために一番よいのはドライブ(ロング)でがんばって粘ること、それも威力のあるドライブで押せれば最高である。なぜなら、相手にツッツかせる作戦をとった時のカットマンは、次球をドライブ攻撃しようとツッツキを予想して前に出てくる。そこを威力のあるボールで攻めれば、カットマンの守りの一番弱い時に攻め込むことになり、カットが甘くなったり一発で決まることが多い。
 この、相手が切れたよいカットをした時に威力のあるボールで攻める(つなぐ)作戦がうまいのが、陳竜燦(現世界2位)や郭躍華('81~'83年世界チャンピオン)、日本の河野満選手('77年世界チャンピオン)などである。陳と郭は表ソフトと裏ソフトの違いこそあるもののパワードライブで、そして河野選手は強打で「相手が切った」ボールを狙い打ち、一発で抜くのを得意としていた。
 とはいうものの、カットマン会心の切れたカットを狙い打つのは、最高レベルのカット攻略法であり、中学生クラスの選手がそれをやったのではミスが多く出て自滅になる。そこで、とにかくがんばればドライブできるボールは、必死でがんばってドライブでミスせず粘ることを心がけよう。
 そうでなく、ちょっとでもドライブミスしそうな変化カットがくると、ミスを怖がってすぐツッツいてしまうのでは、カットマンにそのツッツキを読まれ、ドライブ、強打、変化ツッツキでいいように攻められてしまう。特に1本ドライブしたら次はツッツキ、またドライブしてツッツキ...というプレーぶりでは、2~3本目に切らないカットをまぜられてスマッシュされたり、ツッツキをドライブで何度も攻められる、ということになる。
 そこで、ツッツキやストップはドライブしたら7割以上ミスしてしまうボールや作戦的に必要な時に使う。それ以外はミスしそうなカットがきても勇気をもって粘るようにすると、むずかしいカットもだんだん打てるようになりカット打ちに自信がついてくる。そうなるとミスが出たり、甘くなったドライブを狙い打たれることより、カットマンをカットに追い込んで得点したり、たまにツッツいた時もカットマンが反撃できないケースが多くなる。むずかしいカットをドライブで粘ることはむずかしい。が、十分基本練習をやりこみ、まずむずかしいカットもドライブで粘ることを目標にしよう。

 良いツッツキの条件

 しかし、それでも試合ではツッツキを使わざるをえなかったり、使ったほうが有利な場合がある。そういった時はどのように使ったらよいかを次に考えてみよう。
 試合でツッツキをカットマンにドライブ攻撃される。そうすると多くの選手は「どうしたらドライブをうまく返せるか」と考えるが、こうなる前の段階で大切なのは、良いツッツキをすることなのだ。そうすればドライブ処理は容易になるし、カットマンのドライブミスも増える。
 では良いツッツキとはどういうものだろうか?
 良いツッツキの条件としては、①サイドラインいっぱいに入る ②良く切れている ③深く入る ④打球タイミングが速い ⑤コースが良い...といった点があげられる。
 こういったツッツキができればそう簡単には強ドライブで得点されはしない。しかし、相手のドライブを恐れるあまり、または変化が読めずに、ただ入れるだけの切れない浅いツッツキをしたのでは一発で打ち抜かれてしまう。
 一流プレーヤーはカットマンの動きを見て、動きの逆コースにツッツいたり、むずかしいツッツキを無理に打たせたりする。それで反撃も容易にしのげる。初心者の選手もそれを目標とし、初めは相手から一番遠いコースに、変化をよくみて低く深く返すように努力しよう。

 あわてず正確に返す

 さて、次は相手のドライブをどう処理したらよいかである。
 最近中学生クラスの試合をみると、カットマンが強ドライブで攻めているのに、それをいちかばちかでスマッシュしてしまう選手をみかける。これが一番悪い作戦だ。相手の会心のドライブをスマッシュで狙い打つのは世界選手権に出場するような選手でもまずやらない。ドライブを狙い打つのは良いツッツキで相手をつまらせた後や、試合の流れを計算して打つ場合などだけだ。
 それまでカットを打っていて、いきなり相手の威力あるドライブをスマッシュしてもまず入るものではない。それより、一本目はとにかくしのぎ(できれば自分の得意の技術でしのぎ)次をラリーにもち込むほうがずっと得点する率が高い。得意技術で処理する方法については前号に書いたので今回は相手が会心の強ドライブで攻めてきた時にしのぐコツを一言。それは、力を抜き相手のいないほうのコースのネットぎわに低く落とすようにすることだ。こういう場合の相手のドライブは威力があるので、ネットぎわを狙ってちょうどうまく返せる。自信をもって行なえば予想以上にうまく返せるようになる。練習してみよう。



筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1986年9月号に掲載されたものです。
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