「作戦あれこれ」第129回 前半戦の戦い方④こうすれば強いドライブマンに勝てる

 おなじみドライブマンのD君。速攻型、カット型に連勝し、自信をつけてきた。そこで監督「次の県大会の団体決勝では、相手チームのエース・シェークドライブのSと当てるつもりだから準備をしておけよ」
 D君の高校とS君の高校は県No.1を競うライバル校。まず県大会の決勝は両校の対戦となることだろう。両校の力は互角。となるとD君とS君の対戦が県大会優勝の鍵を握る。さて、D君が勝つための前半戦の戦い方は?

 ドライブマンに勝つための前半戦の戦い方

 ドライブ同士は先手必勝


 D君は日本式右ペンドライブマン。バックハンドのロングサービスと変化ショートサービスからの3球目ドライブが得意。フットワークがよく、フォアクロスの打ち合いに強い。反面、最近ややショートが上達してきたものの、バック系技術はまだまだだ。
 対するS君もドライブ型。ただし、両面に厚い裏ソフトをはったシェークドライブ型。重いラケットを振り回してのドライブは威力十分。ラリー戦の強さはD君を上回る。反面、ミドル前の台上処理が甘く、バックへの深いボールや台から下がった時のバック処理に欠点がある。
 すなわちペン、シェークの差こそあれ、D君とS君はほぼ同じタイプのドライブマンといえる。
 さて、実力が接近した同型のドライブマンとの対戦でD君はまずどんな基本作戦をたてたらよいのだろうか?
 それを一言でいうと「同型の同じレベルのドライブマン同士の対戦では先に攻めた方が断然有利」ということだ。時には、相手の攻めを逆用もするが、基本的には対カットや対速攻の時より、先手を取ることを重視しなくてはいけない。
 D君とS君は実力伯仲。となると、後半は競り合いになる。問題は「ここ1本」で先手がとれるかどうかだ。両者は「フォアは強く、バックは弱いタイプ」。山場で先手をとり、相手のバックを得意のフォアドライブでつぶす形になれば8割方勝ちといえる。

 前半はフォアへ集める

 では、前半戦でどんな作戦をとれば、相手はバック技術を多用するようになるのだろうか?
 試合経験の少ない選手は「相手はバックが弱いから」と前半戦からついついボールがバックに集まる。
 しかし、ほとんどのボールがバックにくると分かれば相手は得意のフォアで回り込んで待つだろう。その動きより速く、いきなりバック攻めすればミスが出る。
 後半戦で相手にバックを多用させ、一気に試合を決めたい。そう思う試合巧者は、まず前半戦でフォア攻めをする。スピードロングサービスや、払うレシーブ、ショートをフォアに集め、相手にフォアを警戒させる。
 相手は面くらう上に、フォアサイドいっぱいにスピードあるボールを集められると、そうそう打てるものではない。狙い打つためには、フォアサイドで待たなくてはならない。しかし、多少狙われても7~8割がたはフォアをつく。
 このような展開になると、相手はフォアサイドを警戒し、足が止まる。やむをえずバックサイドは苦手のバック技術で処理するケースが多くなる。両ハンドを使うように待つとミドル攻めも効いてくる。中盤以降になっても「もしかするとまたフォアにくるかもしれない」と警戒し、中途半端なプレーになる。
 こうなれば、しめたものだ。前半戦の戦い方としては大成功である。よほどの一流選手でなければ、後半思い切って回り込むプレーはできないだろう。

 前半戦のサービス作戦

 いよいよ団体決勝の日がきた。予想どおり、トップでD君はS君と対戦。D君のサービスで試合が始まった。
 D君とすれば、理想は最後の山場で得意のバックハンドショートサービスをS君の苦手のミドル前に出し、甘いツッツキを得意の3球目ドライブで攻めたい。
 山場で思い切ったロングサービスを使ったり、相手に初めてフォアサービスをレシーブさせる手もあるが、危険性もまた高い。確率からいけばミドル前サービスだ。ただし、その時にイヤなのは、ミドル前サービスを狙い打たれたり、うまいストップで攻められることである。
 そこで、D君。まず出足はS君の苦手のミドル前に連続して斜め下回転サービスを出す。予想どおりS君のレシーブは甘く、横の強い斜め回転を払ってミス。下の強い斜め回転は大事にツッツキ。D君は楽々と3球目攻撃で得点。「山場になってもこれでいける」とD君は確信した。
 ところが、様子をみるために、フォア前にコースをかえるとスパッと払われた。どうもフォア前はミドル前ほどきかないようだ。ショートサービスに対しては相手はミドル前が苦手。ここに徹底して集めたほうがよい。相手はシェークでバック前の処理はうまい。ミドル前に8割、フォア前とバック前はそれぞれ1割でよい。
 しかし、そればかりではミドル前にヤマをはられ、回り込んでフォアで払われたり、バックで払われたりする危険性がある。コースを読まれてはいけない。
 そこでD君。2-1から練習してきたドライブロングサービスをフォアへ思いきって出した。ドライブでレシーブしてきたら、バックへ頂点打かショートでつなぎ、次をドライブ攻撃、と思っていたら、これがノータッチで抜け3-1。
 そして、次も作戦どおりに、フォアを警戒するS君のバック深くへ、ナックル性のロングサービス。やっと返してくるS君のハーフボレ―をミドルへ3球目ドライブできめて、4-1とさい先のよいスタートをきった。
 D君はもともと、山場でミドル前からの3球目ドライブが決まるように、前半は半分はロングサービスを出す作戦をたてていたのだ。フォアへのロングサービスを警戒させ、バック深くへナックル性、斜め下回転、等の変化サービスを出し、S君苦手のハーフボレ―でレシーブさせ、ドライブで狙う。時には3球目プッシュも使ってフォア、ミドルへ攻めておく。
 ロングサービスで互角(有利)に戦えれば、なるべく多くロングサービスで戦っておく。そうすれば、後半になってもS君はどうしてもロングサービスを警戒し、山場でD君のミドル前からの攻めがきく。
 さらに、山場でミドル前をツッツかせるように、この後の中盤戦で、D君はわざとフォアへ払いやすいミドル前(フォア前)への横回転系サービスを出し、S君に払わせてストレートに強ドライブ攻撃する予定でいる。こうすれば、山場でS君はフォアへ払いづらい。

 前半戦のレシーブ作戦

 さて、D君のレシーブの番がきた。
 S君のサービスは、フォア・バックとも平凡である。しかし、3球目ドライブは威力があり、ミスも少ない。
 こういったタイプの選手に対して大切なのは、平凡なツッツキレシーブをしないことである。
 そこでD君。山場で払うためにも相手にフォア側を警戒させておくためにも「甘いショートサービスはフォアへ強く払ってレシーブ」の作戦どおり、出足のS君のバックサービスを2本フォアへ払う。みごと決まって6-1。S君はフォアサービスに変えた。1本目のS君のフォア斜め下回転サービスはやや大きい。「台から出たら、ドライブレシーブ」の作戦をたてていたD君。「待ってました」と強ドライブレシーブ。しかし肩に力が入ったかオーバーミス。だがこれでいい。次の斜め下回転フォアサービスをフォアへ払って、D君は7-2とリードした。上々のスタートである。
 慎重になったS君。払われないように、そして大きくならないようにと下回転のフォアサービス。しかし、D君は「小さな払いづらいサービスはツッツかずストップ」の作戦どおりフォア前へストップ。しかもシェーク攻撃型得意のバック前をさけてフォア前にである。あわてたS君。やっとバックへツッツくところを、D君、待ってましたとばかりに回り込みドライブ攻撃。このストップレシーブは山をはられない限り、ききそうである。
 こうしてフォアを警戒させ、後半になってD君がS君の苦手のバックへ変化をつけて返せば(流す、強打、ナックル性、ツッツキ)S君は苦手のハーフボレ―になる。前半で払っておけば、後半はミスが少なくなる。
 そしてD君は、山場でショートサービスを狙うために前半S君が出してきたロングサービスを、ミス覚悟でストレートへ強ドライブでレシーブしておく作戦である。

 前半戦のラリー作戦

 ドライブマン同士の対戦の時は、このD君のように、相手より常に先手をとり、一歩でも前で攻撃するように心がけることが大切である。相手が自分よりドライブに威力があり、ラリーに強いなら、なおさらである。同じパターンで簡単にラリー戦にはしない。相手がじれて、無理にラリー戦にしようと、台から下がってつないでくれば、十分攻めきれる。チャンスである。
 さて、D君は前半戦のラリー作戦もたてていた。
 D君のたてたラリー作戦は三つ。
 一つは、相手がドライブミスするまで、最高の気力でがんばること。少しでも押していく。もし押されても、相手はドライブ。後半で相手がつかれるように1本でも多くがんばる。ロビングになってもがんばる。
 二つ目はフォアクロスの打ち合いになったとき、むきにならず、甘いボールはストレートへ打って前へ出る。同様に、バックへの甘いボールはストレートへ攻められるチャンスは逃がさない。そして少しでも前へ出て頂点ドライブ、スマッシュで攻めていく。
 三つ目は、相手のドライブをショートでしのぐ時、前半は相手のフォアへ回す。例えば、相手のバックへ切ってツッツいたり、バックへフォアの下回転サービスを出して相手がバックへドライブしてきた時はバックストレートに(相手のフォアへ)ショートする。次は、連続ドライブで攻められてもかまわない。がんばってショートでしのぎ、なんとかラリー戦にもち込むようにする。こうして、前半戦で相手にバックからフォアへ動くクセをつけておけば、後半戦で相手ドライブをバックへショートした時、相手は動きの逆をつかれ、バック技術でようやく返してくる。それを攻める。

 D君がリラックスして戦えば、団体優勝の立役者として、きっと監督にほめられることだろう。



筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1987年3月号に掲載されたものです。
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