「作戦あれこれ」第143回 こうすれば凡ミスは減る②

 前回、凡ミスを減らすための注意事項としてあげた、「ゲーム練習を多くする」「試合と同じ緊迫感で練習する」...等を心がけているD君だが、まだまだ凡ミスが多い。とても自分で満足できる状態ではない。
 軽く打たれたボールをポロッとショートミスする。3球目のツッツキをネットミスする。後半の競り合いでサービスミスが出て、追いつかれてしまう...。
 凡ミスで負けると悔いが残る。見ている人もつまらない。何より、なかなか強くなれない...。
 凡ミスを減らし、安定感のある選手になるため、前回に続き「どうしたら凡ミスを減らせるか」について考えてみよう。

 凡ミスの技術的原因

 実戦と同じ集中力で練習し、ゲーム練習を多くやれば凡ミスは減る。しかし、打ち方が悪い、等の技術面に問題がある場合は、いくら練習してもなかなか凡ミスは減らない。そこでまず、効率的に凡ミスを減らすため、技術面での原因を考えてみたい。
 さて、練習ではラリーが続く。しかし、試合になると凡ミスの多い選手に共通している技術面の原因としては
①.相手の打ったボールの変化を良く見ていない
②.打たれたボールに対するリズムの合わせ方が悪い
③.こきざみな足の調整が行なわれていない
④.連係動作(プレー)に不慣れである
⑤.グリップや体に力が入ってしまう
⑥.ある打法になるとミスが多い
⑦.練習の絶対量が少ない
...等があげられる。このほかにも、色々な原因が考えられるが、今回はこの①~⑦について考えてみよう。

 相手ボールは変化している

 練習で1000本ラリーを続けている時の相手ボールは一定である。コース、回転に差があっても、わずかである。
 しかし、実戦では一球一球全く違うボールがくる。特別な場合を除き、単調なボールが続いてくることはない。
にもかかわらず、試合中、相手の打ったボールの回転(スピード、長短)をよく見ないでプレーする選手がいる。当然、こういう選手は凡ミスが多い。
 相手のツッツキは切れているのか、いないのか。ショートはドライブ性なのか、ナックル性なのか。ループはかかっているのか、いないのか...等。試合中、一球一球ボールの球質を見極め、正しく判断してスイングするクセをつければ凡ミスは減る。
 同時に、試合で冷静にそういうプレーができるよう、基本練習の時から一球一球「自分はどんな回転のボールを打っているのか」意識して練習するクセをつけよう。

 リズムを合わせる

 凡ミスの大きな原因はリズム(タイミング)にある。
 打法は正しくても、リズムがあっていないと角度が狂い凡ミスになる。
 例えば、ペンショートのラケット角度は、初め下を向いていて、インパクトで正しい角度になり、その後上を向く。そのため、スピードの遅いループに対し普通のリズムで手を出すと、スイングが早く終わってラケット角度が上を向き、オーバーミスになる。その逆に、いきなりパンと打たれたボールに対しリズムが遅いと、ラケット角度が下を向いているうちに打球してしまいネットミスになる。
 これはショートに限らず、ドライブでもスマッシュでも、リズムが合わないための凡ミスなのである。練習の時から、パッと打たれたボールに対してはパッと反応し、ゆるく打たれたボールに対してはゆるく、または一呼吸待ってからパッと反応するクセをつけよう。

 足を小刻みに動かす

 基本練習では最も打ちやすい足の構えで打球する。だからミスがすくない。ところが実戦になるとそうはいかない。正しく足を動かす人とそうでない人で差がでる。
 スマッシュを打たれた場合は誰もが動く時間がない。これはしかたない。しかし、ショートをしていてフォアにやや浮いたボールがきた時など、サササッ、と正確に動いてスマッシュする選手と、ショートのままの足の位置、もしくは単調な1歩動で、腕だけでスマッシュしてしまう選手では凡ミスのでる確率が違う。
 時間に余裕のある時は、足数を多く使い、微調整をしてから打球するクセをつけよう。ロビング打ち等、チャンスボールに対しての凡ミスがグンと減るはずである。

 連係プレーを強化する

 フォアロングだけの練習の時はミスしない。しかし、ショートをした後にフォアを打つとかなりやさしいボールでも凡ミスしてしまう選手がいる。
 こういった選手は連係プレーの練習が少ない。そのため試合になると凡ミスがふえる。中には練習と試合で打ち方が変わってしまったりする。
 こういった選手は連係プレーの練習と、フットワークの練習を多くやるようにする。また連係プレーの練習もコース等を決めない練習をふやすようにする。例えば、フットワーク練習でも、オールサイドにランダム(不規則)に回してもらい、フォア・バックを使って動く練習をする。
 連係プレーのまずい選手は概して凡ミスが多い。毎日の練習の中に連係プレーを取り入れよう。

 力を入れない

 グリップや体に力が入ってしまうと凡ミスが出る。
 握り方や削り方が原因でグリップに力が入ってしまう選手は改めるべきである。握り方、削り方を変えることでグリップが柔らかくなり、手首が効くようになる。グリップが良くなれば打ち方も良くなり凡ミスが減る。
 体に力が入る選手は、振りが遅くなる。手首、指を柔らかく使えない。柔軟なラケット角度の変更がきかず、凡ミスが出る。こういう選手は力を抜いてスピードのあるプレーをするよう心がける。と同時に、緊張して力の入った場面でも凡ミスがでないよう、普段の練習から緊張したゲーム練習をするよう心がける。

 苦手打法をつくらない

 フォアハンドは安定しているのにハーフボレ―はミスが多い。もしくは、ショートはミスしないのにロビングが上がるとスマッシュミスが出る。
 こういった選手は長所を伸ばしながらも、苦手打法の基本練習をしっかりやる。自分の苦手打法を練習することは精神的に苦しいが、死角があると試合でそこをつかれ勝てない。たとえ苦手が得意には変わらないまでも、自分の得意に結びつけられる程度までは絶対に練習しておく必要がある。
 「自分はどんな打法にミスが多いか」。試合をよく分析し、基本練習の時にその打法の練習を多くやろう。

 練習量をふやす

 初心者は、練習量が少なく、技術レベルが低いため凡ミスが多い。また、一流選手が練習を休むと、やっている技術は変わらないのに凡ミスがふえる。
 凡ミスの原因は色々あるが、ボールに接する時間が長ければ長いほど凡ミスは減ってくる。その逆に、いくらセンスのよいプレーをしても、練習量が少ないと凡ミスが多い。従って取りこぼしが多くなる。
 実際に打球する時間をいかにふやすか、そしていかに内容のよい練習を集中してやるか。凡ミスを減らすための絶対条件である。

 心・技・体・智の凡ミス

 さて、今回は技術面での凡ミスの原因について考えてみた。あせらず、ひとつ一つ課題に取り組んでいけば必ず凡ミスは減り、勝負強い選手になることと思う。
 また今回は紙面の都合で説明しきれなかったが、凡ミスには、心・技・体・智の各面からの原因がある。例は「試合中の集中力を高める」とか「ボールをていねいにあつかう」...などは心の問題であるし「疲れて体が動かなくなり凡ミスが出る」は体の問題。また「つい相手の待っているところへ返してしまう」...などは智(作戦)の問題である。これらについては次の機会に述べたい。

 凡ミスを減らすことは競技生活を続ける限りついてまわる問題。あせらず、一本一本ていねいにボールをあつかい、凡ミスの少ない選手になろう。



筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1988年5月号に掲載されたものです。
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