「作戦あれこれ」第168回 積極的に攻める

 打つことだけが積極的、ではない

 筆者が『長谷川語録』の五番目に書いた言葉は『積極的に攻める』であった。

 積極的に攻めることの大切さは誰もが知っていることである。しかし、試合になると山場で弱気になって相手のミスを待つプレーをする選手や、逆に何でもかんでも打ってしまって「あれじゃ、積極的というよりムチャ攻めだなあ。ああいうことやっていたのではいつまでたってもうまく勝つことはできないなあ。強くなる芽をつぶしてしまっている消極的な試合だなあ」と感じさせられる選手がよくいる。
 結論から言うならば、『積極的に攻める』とは、"自分が勝ちやすい作戦を積極的に色々と考え、それを実行に移す"ことである。自分から点を取りにいくのであれば、ストップでも、変化ツッツキでも積極的であるし、状況によっては、相手のミスを誘うショートやロビングでも積極的ということがある。
 その反対に、消極的なプレーとは、"どうしたら勝てるか"と積極的に考えることをせず、自分がミスすることだけを恐れて入れにいくプレーをいう。こういった相手しだいの消極的なプレーをしていると、時には相手の調子が悪くてうまくいったとしても、長い目で見るといつまでも同じことをくり返しているだけで進歩がない。積極的に自分から点を取りにいってこそ、こういう状況ではこうやる、こういうふうにやればミスが出づらい...というように、徐々に覚えて強くなれるのである。

 台上で先手をとり連続ドライブ攻撃

 ドライブ型の選手が消極的になると、ツッツキレシーブが多くなり、すぐ台から下がるようなプレーになる。サービスを出して、相手がバックにツッツいてきても、足が思うように動かず、つまったドライブになる。打点を落とし、入れるだけのループぎみのドライブになり、相手がショートでフォアへ回してくると、斜め後ろに下がりながら、相手のミスを期待するようなドライブになる。こういったプレーをしていたのでは強い選手に勝てるようにはなれない。
 苦しい場面でも『積極的に攻めよう』と心に何度もいい聞かす。そして、どういった作戦が勝ちやすいか考える。
 下回転のショートサービスであれば、ストップレシーブで先手をとり、4球目ドライブで攻めることを考える。大きければレシーブから積極的にドライブする。
 斜め回転や、切れないショートサービスであれば、頂点をとらえて払ってレシーブする。できれば7~8分の力で、バック(状況により、フォア、ミドル)に払う。逆モーションで軽打してもよい。そして、相手のショートを高い打点の強ドライブで狙い打ちしていく。
 相手のミスを待つ心境だと、足が止まってしまい、合わせて入れるプレーが多くなる。ところが"積極的に攻めるしかない"と本心から思えると、ストップレシーブや払うレシーブから高い打点で思いきった連続ドライブ攻撃ができる。足が良く動き、スイングが速くなる。積極的に次のボールを狙っていくため、もどりが早くなる。"すこしはミスが出ることもある"と開き直っているから、ミスしても動揺しないし、逆にミスが出づらい。ツッツく時でも、積極的な気持ちでいると、切ったツッツキからカウンタードライブを狙ったり、ショートで振り回すプレーになる。下がった時でも回転、コースに変化をつけてしのぎ、積極的に相手のミスを誘うプレーになる。

 速攻型は振り切れる距離で

 表ソフトの速攻選手が消極的になると、小さいサービスばかりになり、ツッツキ、ストップによるレシーブが多くなる。ラリーになってもショートで相手のミスを待つプレーになり、チャンスボールをストップしてミスしたりする。足が止まって、振りが遅くなり、下回転ボールに対してドライブばかりになる。
 練習の時は打って、打って打ちまくるようなプレーをしている速攻選手が、試合になるとショートばかりになる。しかも自分では気づかずに無意識のうちにそういった消極的なプレーになっているのでは重症である。
 "どうも相手に狙い打ちされているな"と感じたら消極的になっている証拠である。『速攻型は積極的に攻める戦型』と心に強く念じよう。打てなくなっている時は、足が止まってショートばかりになり、台につきすぎてしまっていることが多い。払った後などは、半歩下がって余裕をもってボールを待ち、振り切ってみる。調子が出てくれば、強打を返されても、ステップバックして、そこからまた前に出て連続強打していくような攻めになってくる。レシーブでも、台上ボールは積極的に払っていき、大きいサービスに対しては強打していく。角度打ちを積極的に取り入れる。ドライブは入れるだけでなく、攻撃的な変化をつける。ショートも入れるだけでなく。ストップ性やプッシュ性を使っていく。ドライブに対してのフォアハンドは合わせるだけでなく、パンと合わせ打っていく...。

 守備型選手こそ攻めのプレーを

 攻撃選手だけでなく、カットマンや、ツブ高のショートマンも同様に積極的にプレーすることが大切である。
 卓球をあまり知らない人は、守備型の選手は消極的に入れておけばいいんだろう、と考えがちだが、とんでもない間違いである。こういうタイプの選手こそ作戦を考え、積極的に攻めのプレーをしなければ強い選手に勝つことはできない。カットマンも、入れよう、入れようとすると振りが遅くなってかえってボールが浮いてしまう。自信をもって変化をつけ、相手が弱気になったら狙い打ちしていくようなプレーをしていくと調子が出てくる。
 サービスからの攻め、レシーブからの変化...と、守備型の選手も積極的にコンビネーションを考え、攻めの気持ちでプレーすることが大切である。

 積極的にいくと良い結果が出る

 ミスを恐れ、相手のミスを期待して入れるだけの消極的なプレーで出たミスは単なるミスだが、積極的にプレーして出たミスはたとえミスをしても効果があることが多い。
 たとえば消極的な選手は20-16ぐらいのカウントで勝っていると"一本ぐらいは相手がミスするだろう"と全部バックへツッツキ、思わぬ逆転負けを喫することがある。"この一本をミスしたくない"と思いすぎるとズルズルと同じ展開を繰り返してしまう。相手はコースが読めるので、ドライブにミスが出ない。
 ところが、『積極的に攻めよう』と心がける選手は、20-16からでも、払ったり、ストップしたりして自分から点を取りにいく。たとえ1本フォアへ払ってミスしても"次はミスしないぞ"と集中して払えば2本目、3本目には入り、レシーブから先手を取ることができる。そのうちの1本をバックにツッツいたとしても、相手は"フォアへ払われるかもしれない"と読んでいるので、バックへの回り込みが遅くなり、威力のないドライブになったり、思わぬミスをしたりする。ストップにしろ、逆モーションレシーブにしろ、積極的に自分から点を取りにいけば、よい結果が出ることが多いのである。
 同様に、サービスの時も"この一本"だけにこだわらず、試合の流れ全体を考え、積極的に組み立てることである。フォアへのロングサービスを使うと、たとえその一本は効かなくとも相手はそのロングサービスを警戒するため、ショートサービスのレシーブが甘くなってくるものである。
 このように、積極的に色々な技術を使っていけば、相手はこちらのプレーが読めず、自分のペースで試合することができる。

 積極的にやって課題を見つける

 積極的に攻めようと心がけていると色々な技術の必要性が試合を通じてわかってくる。
① 練習試合ではバック前サービスを回って払っているのだが、相手がフォアへのロングサービスがうまく、バックはツッツキになって先手がとれなかった。バックツッツキのコースを読ませないラケット操作、ストップ、バックハンドの払いなどを練習して積極的に攻められるようにしよう
②フォアハンドのバック前サービスを回って払われ先手がとれなかった。フォアへのロングサービスとフォア前へフォアサービスを出せるようにしよう
③フォアへきたツッツキに対し、クロスへばかりボールがいってしまうので、押されて消極的なプレーになってしまった。相手の読みをはずすフォアストレートへのボールを自然に打てるようにしよう
④台上で先手をとるのに、ドライブをしのがれると連続攻撃にミスが出て思いきって攻められず、だんだん消極的なプレーになってしまった。相手の中陣ロングを打ち抜けるフットワークとスマッシュを強化しよう
―このように、積極的にプレーしようと心がけていると、自分の現在の課題が浮きぼりにされ、何を強化したらよいかがわかってくるのである。

 卓球に限らず、積極的にやることはすべてのことにおいて大切。何ごとに対しても、消極的にならず、積極的に取り組んでいこう。



筆者紹介 長谷川信彦
1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1990年7月号に掲載されたものです。
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