わたしの練習80荒蒔基邦 前陣ドライブマンを目指して

 私が卓球らしきものを始めたのは、小学校5年のころで、兄弟で、机を並べてピンポンをしたのがきっかけでした。
 本格的に始めたのは、大久保中学(茨城県)へ入学してからのことで、前野一正先生の熱心な指導のもとで、練習に励みました。そのころ、学校には、体育館がなかったので、教室の机を、部員全員で片すみに置いて練習しました。台が少なく、部員が多かったので、廊下に出て、よく素振りをしたものです。中学2年のとき、同級の千田君とダブルスを組んで、県大会で優勝したのが、初の栄冠でした。
 中学時代は、卓球がただ好きで、無心に、日が暮れるまで、毎日練習をくり返しました。そして、県下でトップクラスの日立一高に進学し、卓球部に籍をおきました。中学校とはまったく違う練習内容とトレーニングで毎日が、非常にきびしくて、精神的にもとまどいました。休みの日を利用して、近くの日立製作所へ練習に行き、左で流し打ちの名手坂本さん、同じくサウスポーの川田選手の指導を受けました。高校時代は、オールフォアで打ちまくる先手必勝の卓球を通していました。県内の試合では、私の卓球が通用しましたが、県外へ出ると、まったく井の中のかわずの感がありました。

 ~練習量では部内で誰にも負けない自信~

 高校時代に果たせなかったことを、大学へ行ってぜひ果たそう、また、自己の限界をためそうと思いました。先輩の角田啓輔さん(日立製作所監督)のすすめもあり、念願の中央大学へ進学。卓球部へ入部しましたが、まわりが強い選手ばかりで、気おくれがした感じでした。私の卓球の未熟さを痛切に感じましたが、それがかえって刺激と、一つの目標となり、“よし、やってやろう”という気持ちで、みんなに少しでも追いつこうと、朝から晩まで、卓球に明け暮れしたものです。関東学生新人戦では、どうにかベスト8に入ることができました。
 2年の初めごろから部内リーグでも、上位に食いこむようになりました。練習内容は、フットワーク中心に、ほとんどが基礎練習で、練習量だけは、部内でもだれにも負けない自信がありました。
 2年の春のリーグ戦で、専大の井上さんと当たり、セットオールで負けましたが、私にもこれだけやれるのだと、確信がもてました。そのころ、男子元監督の大津さんから「荒蒔は、体力もパワーもないのだから、前陣でプレーするように」と言われました。やはりこれからの卓球は自分に合った個性を生かして、フォアドライブと、バックショートによる、攻守の戦術を身につけようと思ったのです。2年後に控えた世界選手権(今年の春の名古屋大会)を目標にし、練習に励みました。この時点では、どうしてもショートを多用し、攻撃面で積極さに欠けるきらいがあったと思います。
 いままでの試合の中で、特に去年の全日本硬式大会で、私の一番苦手だった仲村渠さん(シチズン)とランク決定で対戦したときの試合が印象に残っています。この試合は、世界選手権の代表選考の参考となるので、無我夢中でした。1、2セット先取され、3セット目もリードされていましたが、中盤から挽回(ばんかい)して、フルセットのすえ勝つことができました。8決定で、長谷川さんと対戦しましたが、私の実力ではおよびませんでした。このとき、長谷川さんの勝負根性や、ボールに対する執念を見て、精神的にプラスとなり、勉強になりました。

 ~世界選手権の体験生かし、高い打点のドライブ~

 今春、名古屋で開催された第31回世界卓球選手権大会に参加し、ベンクソンに3:0の大差で、先手を取ることができず、惨敗を喫しました。
 その後、日中対抗横浜大会で、郗恩庭選手と対戦しても、前陣速攻の前に敗れ去りました。私はこの敗戦で、私の攻めのおそさに気づき、高い打点からのドライブとスマッシュが必要だと感じました。それからは、充実した練習内容とトレーニングの毎日でした。春のリーグ戦目ざし、死にもの狂いでがんばりましたが、残念にも盲腸炎手術で入院してしまいました。幸い回復が早く、関東学生選手権では納得のいく成績を残そうと、いままでの教訓をいかして練習に熱中しました。ラッキーな面もあって、関東選手権シングルスで、初のタイトルを勝ち得ることができました。

 ~ショート中心だが、練習内容をいろいろ工夫して~

 私の目ざす卓球は、ショートを生かした前陣ドライブマンです。練習内容は、やはりショート中心の練習が多くなります。ショートをするとき、①小さな動きを正確にやること ②台の高さよりも高い位置でラケットを保持すること ③よけいな運動(からだの上下運動)をつけないこと(もどりがおそくなり、フォア強打できない) ④フリーハンド(肘の角度を90°ぐらいにして後ろに引く)に注意すること ⑤台から離れすぎないようにすること ⑥体の前でボールをとらえること ⑦重心を高く保つこと、などを頭において練習します。
 いつも同じ位置で練習しては意味がないので、私なりに工夫してやっています。前でショートをしたり、中陣からプッシュ性ショートをしたり、わざとミドルへボールがくるようにして返したりします。そのほかにも、連続スマッシュを返す練習とか、1本1本種類の違ったボール(フォアロング→ドライブ)を送ってもらい、角度を変えて返す練習等をしました。
 中国式グリップに比べれば、フォア攻撃のやりやすい日本式グリップでは、バックショートの角度が出しにくいのは確かなので、私はバックショートのときだけ、親指を立てて(サムアップ)、角度が出しやすいようにしました。最初のうちは、ショート後フォアへ返球されたボールを打つのに、指がしっくりいかず、打てないので苦しみましたが、切りかえ練習や、ショート対ショートから回り込んでスマッシュする練習を多く積むことによって解決できました。
 ちょっと意識をかえてやれば、実戦で役立つショート練習の場は、たくさんあります。相手がフットワーク練習のときは、動いて打ってくるいろいろなボールを、確実に思ったところへ角度を合わせて返す練習。相手がツッツキ打ちのときは、試合でツッツキからスマッシュされたと思い、それを返す練習などです。相手の練習のとき、自分も練習しているんだと言いきかせながらやるようにしています。
 特に多くやる練習は、3球目にドライブで攻められたのを返球する練習です。そのとき注意していることは、肩の力を抜いて(リラクセイション)上から押さえるような気持ちで、また、上述の基本を守ることなどです。ショートやドライブボールでチャンスボールをつくっても、結局フォア強打(高い打点のスマッシュ)ができないといけません。これからは、ショートに片寄ることなく、積極的なプレーをすることを心がけて、サービスを持ったら3球目・5球目攻撃をし、レシーブに回ったら、受け身にならず、攻撃できるような、速攻ドライブマンを目ざしてがんばりたいと思います。
 これにともなってトレーニングも必要性が増しました。父が昔、陸上競技をしていた関係で、運動選手は足腰がすべてだと口ぐせのように言っていたので、ランニングを欠かさず30分ぐらい走ります。それから腹筋と鉄アレイを行い、シャドープレー(7動作)や、体の切りかえ(90度の腰のひねり、180度転回)、素振り等を行います。これからは、もっともっと筋力トレーニングをしなければいけないと自覚しております。
 今後、どんな相手(特に速攻選手やフォア強ドライブと、バック側ハーフボレーの選手)に対しても、自分のプレーが発揮できるような強烈なものを、何か一つマスターしたいと思います。私の好きな言葉“努力をすれば必ず報われる”ということを常に念頭におき、毎日のきびしさの中に、真の自分を見いだし、中央大学卓球部の一部員として、また、日本の一卓球人として頑張っていこうと思います。

あらまき もとくに 中央大4年
ペン左きき。1971年関東学生選手権優勝


(1971年11月号掲載)
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