動かぬヒーローたち

一番憧れたワルドナー。なのに自分は日本式ペンドラという不思議

 編集部の本棚には創刊からこれまでの卓球レポートがずらりと並んでいます。その中から、4月号カラー特集「卓球レポート60年の軌跡 時代を制した技よ、もう一度」に取り上げる選手を選ぶ作業で一番困ったのは、もちろん人選。限られた誌面に歴代の名選手を選りすぐって載せるわけですから、そう簡単には収拾がつきません。ああでもないこうでもないと過去の卓レポを引っくり返しながら千思万考の末、プレーの変遷が分かりやすいよう選んでみましたがいかがでしたか。納得できる人選ができたと思いますが、読み手によっては「なぜ、あの選手が入っていない?」「俺だったらあの選手は外さない」などのご批判もあろうかと思いますがご容赦ください。そうしたツッコミも入れつつ、最後のカラー特集を楽しんでいただければ幸いです。

 同世代の多くの方がおっしゃるように、茨城の片田舎で卓球に夢中になっていた私にとっても卓球レポートは拠りどころでした。当時、トップ選手のプレーを映像で見る機会は本当に稀でしたから、誌面に載った江加良やワルドナー、グルッバらを見て、実物の彼らの動きや打球音はどれほどのものかとあれこれ思いを馳せたものです。
 やがて縁があり、卓球レポートの制作に携わらせていただいたときは、うれしさや誇らしさよりも「自分に本当に務まるんだろうか」という恐れの方が圧倒的に強かったことを覚えています。以来、国内外の大会取材や選手取材、チーム訪問などを通じて代え難い経験を積ませていただきました。それらのエピソードについては、折を見て記していければと思っています。

 卓球レポート休刊にあたり、卓球に関する動画や情報が氾濫している今、自分たちに何ができるのか。そんなことを考えながら過去の卓球レポートをぼんやり眺めていたら、軸足はやはり卓球レポートなのだと気づきました。60年にわたり、「強くなりたい人たちのために」という卓球レポートが持ち続けてきたマインドは、形を変えても簡単には揺らがない。紙面で動かないヒーローたちに、そう勇気づけられたと勝手に思っています。
 卓球レポートに携わったことが縁なら、休刊に立ち会ったことも自分の縁だと思い定め、これまでの卓球レポートに恥じないよう、地に足をつけて取り組んで参りたいと思います。

 最後に、これまでご愛読いただいた読者の皆さま、本当にありがとうございました。休刊に際し、読者ハガキに寄せていただいた皆さまの声、すべて胸に届いております。今後は、本サイトで「卓球が強くなりたい!」「卓球が好き!」という人たちに役立つようなコンテンツの提供に務めますので、どうぞご期待ください。
(猪瀬健治)

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