2020年2月11日、茨城県の日立市池の川さくらアリーナで「BUTTERFLY講習会」が行われた。過去に全日本を2度制したペンホルダーの雄・吉田海偉選手(東京アート)と、昨年の全日本社会人チャンピオンの大矢英俊選手(ファースト)という豪華な講師を迎えて開催された。
開会式では、卓球専門店ゼネラルスポーツの社長であり日立市卓球協会の事務局を務める大串博史氏が「トップ選手のプレーを動画で見るのと生で見るのとでは全然違うので、今回の講習会を皆さんの技術向上に役立ててください」とあいさつ。一人でも多くの人にトップ選手のプレーを見てほしいという大串氏の尽力が実を結び、昨年よりも多い約300人が参加した。
技術講習①【小中学生の時の練習】
技術講習では、まず、両選手が小中学生の時にやり込んだ練習が紹介された。
吉田選手はフットワーク練習をやり込んだという。「まずは基本練習をしっかりやりました。それから、フォアハンドで1本1本のような簡単なフットワーク、両ハンドの切り替え、多球練習など、とにかくフットワーク練習をたくさんやりました」と吉田選手。
一方、大矢選手は吉田選手とは対称的に、卓球を始めた小学校1年生から6年生になるまで、ゲーム練習ばかりしていたそうだ。ゲーム練習では、対戦相手の選定も大切だという。「僕は、自分よりもちょっと弱い選手と試合し、何度も勝つ経験をすることによって、自信をつけました」と大矢選手は体験を述べた。
技術講習②【フットワーク】
続いて実技が披露され、吉田選手はフットワークを披露した。バック・ミドルを1本ずつフォアハンドドライブするという基本的なフットワーク練習だが、その動きの質はとても高かった。
吉田選手は打球前に必ず右足の大腿・股関節付近に力をためて、打球直前に床を蹴ってしっかりと左足に重心移動をしている。これがボールに威力を生み出すメカニズムだ。
技術講習③【両ハンドの切り替え】
大矢選手は「フォアとバックのどちらかが強いだけでは勝てないので、両ハンドをバランスよく強化することが大切です」と、フォアハンドとバックハンド(両ハンド)の切り替えの実技を披露。今も毎日欠かさず行っているという「バック・ミドル・バック・フォアを両ハンドドライブ」という練習をやってみせた。
ドイツのティモ・ボル選手も行うこの練習は、両ハンドの切り替えの中にミドル処理が入ることが特徴だ。シェーク攻撃型が狙われることが多いミドルへの対応を磨きつつ、両ハンドを強化することができる。「両ハンドとも同じ強さでバランスよく打つことがポイントです」と大矢選手は述べた。
技術講習のほかに、参加者が講師に挑戦するにチャレンジマッチも行われ、植田選手(太田一高)が吉田選手と、菊地選手(日立商業高)が大矢選手と1ゲーム先取で試合を行った。
植田選手は、吉田選手の天井高くまで上がるロビングに苦しみながらも一生懸命戦った。菊地選手は、強烈なドライブを防ぎ切れなかったが、大矢選手のボールに徐々に対応していた。
また、吉田選手と大矢選手によるエキシビションマッチが行われた。試合は白熱したラリーの応酬となり、大矢選手が台から下がらずに前陣の両ハンドで攻めたが、コート狭しと縦横無尽に動き回った吉田選手に軍配が上がった。両選手が繰り広げる迫力満点のラリーに多くの歓声が上がった。
なお、今回の講習会では、吉田海偉選手と大矢英俊選手のほか、吉田選手の夫人である小西杏さんと、長女の紅偉(べにい)ちゃんも登場した。
小西杏さんは元日本代表選手。2000年シドニー五輪べスト16、2001年世界卓球選手権大阪大会女子団体銅メダルなどの実績の持ち主だ。現在は、埼玉県戸田市のWEILAI卓球スクールで指導に当たっている。紅偉ちゃんは小学校1年生で、卓球を始めてわずか1年だが、すでに将来が楽しみな選手だ。
小西さんは「男女に限らず、フットワーク練習はすごく大事だと思います。女子選手は特に、ツッツキや台上の技術がすごく有効です。もちろん、ドライブを打つことも大事ですが、その前にあるサービス、レシーブ、台上技術を強化すると、チャンスが生まれやすくなります」「練習では、ミスをしないことよりも、正しいフォームでしっかりボールを打つことを重視してください」と参加者にアドバイスを送った。
講習会の最後にはプレゼント抽選会。吉田選手と大矢選手から、サイン色紙やシューズ袋、ラケットケースなどが抽選でプレゼントされた。
(取材=小松賢)