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平成23年度全日本選手権大会最終日:1月22日

男子シングルス、吉村真晴が初優勝 ~水谷隼の6連覇を阻む~

高校3年生の吉村真晴が日本一に

 男子シングルス決勝は、史上初の6連覇を狙う水谷隼(明治大)と、高校生ながら決勝に進出した吉村真晴(野田学園高)が対戦した。

 試合は誰も予想しない立ち上がりを見せた。出足から吉村が水谷の意表を突く鋭い両ハンドで0-4と奪取をかける。水谷はいきなりの猛攻に対して緩くつないでミスを誘って4-6とすると、しっかり攻めて6-6に追い付いた。ここから流れが行き来して9-9となるが、強気の姿勢を崩さない吉村がサービスからの展開でフォアハンドを決めて第1ゲームを先行した。
 先制パンチを食らった水谷。第2ゲームは吉村の攻撃をブロックしてからフォアハンドドライブを打ち込んで4-1とする。吉村も負けじとバックサイドから打ち込んで4-5と逆転すると、慌てた水谷にドライブミスが出て6-9と引き離されて、吉村がこのゲームも連取した。

 まさかの展開に会場がざわめく。吉村の流れを断ち切りたい水谷は、第3ゲームは中盤から台上で揺さぶって4-2。一旦4-4とされるものの、巧みなコース取りを見せて8-4と引き離して、ようやく1ゲームを取り返した。
 このあとの流れを左右しそうな第4ゲームは、立ち上がりから先手の取り合いで互角となり5-5。ここで水谷が打ち合いを制して6-5とすると、サービスエースを決めて突き放して、なんとか2対2の五分に戻した。
 勝利に近づきたい両者。どうしても取りたい第5ゲームは一進一退の展開で3-3。ここで吉村が両ハンドのライジングを決めて3-5とすると、フォアストレートに打ち抜いて4-7、台上プレーで4-8とリードを広げる。しかし、水谷は1本ずつ我慢して粘って8-8に追い付く。大事なこの場面、吉村が強気のチキータをクロスに決めて8-9とすると、9-10から両ハンドで押し込んで、水谷に王手をかけた。
 ついに黄色信号が点った水谷だが、なかなかリードできずに3-3。ここでサービスから連打で5-3とリードを奪うと、フォアで動いてワイドに打ち込んで7-3として、なんとかゲームオールに持ち込んだ。

 いよいよ栄冠が目前に迫った最終ゲーム。互いに牽制し合って2-2。ここで水谷がまさかのサービスミスで2-3となるが、ドライブを決めて3-3。ここで水谷が台際のボールをストレートに打ち抜くファインプレーで4-3。見事なプレーに会場がどよめく。4-4から水谷が回り込みドライブをクロスに決めて5-4でチェンジエンドし、佳境が近づいてくる。吉村は緊迫の場面にも臆することなく、台上プレーで5-5に追い付くと、ドライブで踏ん張って6-7と逆転に成功。しかし、水谷はしゃがみ込んでドライブをストレートに決めて7-7と譲らない。ここで吉村がまさかのサービスミスで8-7となると、水谷がレシーブでバックドライブをかけて9-7と引き離し、吉村がタイムで流れを止めにかかる。一呼吸入れて観客もコートに集中する中、水谷が伝家のサービスエースでチャンピオンシップポイントを手にした。いよいよ水谷が決めるのか?と誰もが感じたところだが、土俵際に追い詰められた吉村は焦るそぶりをまったく見せず、水谷をフォアへ揺さぶって10-8。ここで水谷が万全のタイムアウトを入れる。タイムが開けてコートに付く吉村に対し、水谷は間合いを嫌って時間をかけて構えに入る。しかし、サービスを持った吉村は強気のドライブでポイントを連取して、ついにジュースに追い付いた。

 予想だにしない状況に観客も固唾を呑む。勝利に王手がかける重要な1点、水谷が渾身のロングサービスからフォアハンドで攻め込むが、吉村が中陣からバックハンドドライブではね返し、まさかの逆王手をかけた。すると最後は吉村のサービスに対して勝負に行った水谷のドライブがオーバー。この瞬間、水谷の連勝記録がストップし、6年振りに新王者が誕生した。
 吉村は勝利の瞬間、拳を握りしめてコートに倒れ込み、天を仰いだ。そして、ともに練習を積み重ね、会場で大声援を送った仲間たちに感謝の指さしポーズを贈った。最後に英雄をベンチで待ち構える恩師と熱い抱擁を交わし、勝利の味に酔いしれた。

 吉村は、1つ年下の丹羽孝希ら次世代のスター候補の陰に隠れてきたが、メキメキと力を付けてアジアジュニアで中国勢を連破して日本人初優勝を遂げた。世界ジュニアでも準決勝に進出するなど、徐々に頭角を現し始めた。そして今大会で全日本初ランクを果たすと、一気に栄光ロードを駆け上がり、水谷以来史上2人目の高校生での全日本チャンピオンとなった。
 世界に通じる攻撃の切れ味を持ち、強気のハートで勝負を仕掛ける独特のスタイルがここに結実した。今春に進学する愛知工業大学の偉大な先輩、世界チャンピオン・長谷川信彦氏の"努力三倍"という遺訓を胸に、日本一に満足せず、世界一を目指してさらなるスケールアップを続けて欲しい。
 ≫この一戦から今日のナイスゲームを選出

■優勝インタビュー
 信じられない感じです。うれしいです。水谷選手は格上の選手ですし、全日本で優勝している選手なので、決勝は自分のプレーをして悔いのない試合をすることだけを考えました。自分は両ハンドの鋭いボールがあるので、それでどんどん攻めて・・・勝つためにはそれぐらいしかないかなと思っていました。応援してくれたチームメートと橋津先生に感謝しています。
 目標は世界で勝つなので強い選手に勝てるように努力していきたいです。


吉村が積極果敢な攻撃で殊勲

水谷はあと一本が取れず・・・

一気に栄光への架け橋を駆け上った


準決勝第1試合:水谷隼vs松平賢二 ~同級生対決で水谷が圧勝~


 準決勝第1試合は青森山田高の同級生として、インターハイの男子ダブルスで優勝した水谷隼と松平賢二(青森大)が対決した。
 準々決勝で昨年敗れた高木和(東京アート)にリベンジし、好調を維持して勝ち上がった松平賢二。しかし、水谷のプレーはそれをさらに上回る出来だった。立ち上がりから水谷がフォアハンドドライブを両サイドに打ち分けて8-2として先行する。続く第2ゲームは松平が台上からの攻撃で3-5とするが、水谷はフォアハンド攻撃で押し返して8-5とひっくり返して、2対0とリードを広げた。
 すると、第3ゲームは水谷が出足からスパートをかけて7-2と一気に引き離して、6年連続での決勝進出に王手をかけた。
 このままでは同級生になすすべなく敗れ去る松平。第4ゲームはたちあがりから台上プレーを生かして猛攻を仕掛けて1-5とリードを奪う。しかし、水谷は小さくかわして松平の攻めを封じて4-5とし、松平がたまらずタイムアウト。しかし、水谷の流れは止まらず、ラリーで両ハンドを広角に打ち込んで7-5と逆転し、そのまま一気に抜き去った。


水谷が同級生対決で完封勝利

賢二は隼の壁を越えられず


準決勝第2試合:吉村真晴vs松平健太 ~吉村が会心のプレーで健太に勝利~


 準決勝第2試合は、ともに優勝候補を下した吉村真晴と松平健太(早稲田大)が対戦した。吉村は前回2位の張(東京アート)、松平は吉田(OVERLIGHT)と丹羽(青森山田高)を連破して勝ち上がってきた。
 注目の一戦は、直前の準々決勝で丹羽を圧倒した松平に分があるかと思われたが、吉村がそれを覆して会心の当たりを見せた。
 吉村は立ち上がりからチキータで松平に攻め込むと、得意のバックドライブで7-4とリードする。松平も声を出して7-7と踏ん張ると、ここから一進一退で7-7、8-8、9-9。吉村が10-9からサービスエースを決めて、第1ゲームを先行した。続く第2ゲームは松平がバッククロスに攻め込んで2-5とリード。ここで吉村が両ハンドカウンターを織り交ぜて7-5と逆転すると、回り込みドライブをストレートに決めて2ゲームを連取した。こうなると完全に吉村ペース。第3ゲームは中盤まで6-6と競り合うが、吉村がフォアドライブをバッククロスに3本打ち込んで、松平に早くも王手をかけた。
 あとがない松平。第4ゲームは5-5から小さく揺さぶって吉村のミスを誘い、なんとか1ゲームを取り返した。すると、第5ゲームは松平が立ち上がりからエンジンをかけて0-4とすると、巧みな攻守で4-8と点差を保つ。しかし、松平は集中力が続かず、ラリーにミスが出て7-8となり、たまらずタイムアウト。ここでなんとか止めて7-10とゲームポイントを握った。しかし、ここで吉村の強気のプレーが火を噴いて、鋭いドライブを連発してジュースに追い付いた。すると吉村が攻め手を緩めず一気に抜き去って、松平を粉砕した。


吉村が会心の当たりを見せた

健太、まさかの防戦に・・・


ベスト8は高木和、丹羽、、森本、時吉佑一の4選手


 ベスト8は高木和卓(東京アート)、丹羽孝希(青森山田高)、森本耕平(愛知工業大)、時吉佑一(時吉スクール)の4選手。


世界ジュニア王者・丹羽はベスト8に終わる

森本は前回から1ランクアップ

時吉は水谷から1ゲーム奪う

高木和、賢二にリベンジ喫す


準々決勝第1試合:水谷vs時吉 ~水谷が時吉とのラリーを制す~


 準々決勝第1試合は、王者・水谷に時吉が挑んだ。昨日の6回戦でオリンピック代表の岸川(スヴェンソン)を下した時吉だが、今日は水谷がその強打を封じ込む。立ち上がりから水谷が台上プレーでゲームをコントロールし、3ゲームを連取する。時吉は捨て身のフルスイングで第3ゲームをジュースで奪い取るものの、その後は再び水谷がラリーを制圧して圧倒した。


水谷がラリー戦で時吉を圧倒


準々決勝第2試合:高木和卓vs松平賢二 ~賢二が卓にリベンジ達成~


 準々決勝第2試合は、昨年と同じ顔合わせとなった。前回はゲームオール9本というきわどい試合を高木和がものにしたが、今日は松平が主導権を握る。
 立ち上がりから松平が高木和のバックに早い送球でペースを握って先行する。第2ゲームは互角の打ち合いでジュースにもつれ込むが、松平がラリーでプレッシャーをかけて2対0とリードを広げる。すると第3ゲームは松平が中陣で動いて11-9で競り勝つと、第4ゲームも再びジュースの競り合いを松平が制して高木和にリベンジを果たした。


昨年同様の打撃戦、今年は賢二が制す


準々決勝第3試合:松平健太vs丹羽孝希 ~新旧世界ジュニア王者対決は松平が快勝~


 準々決勝第3試合は、元世界ジュニア王者の松平健太と現・王者の丹羽孝希の対戦となった。昨年末の世界卓球代表選考会では丹羽が松平を圧倒している。
 注目の立ち上がりは松平の速攻が冴える。巧みなカウンターで鋭く打ち抜いて第1ゲームを先行した。しかし、第2ゲームは丹羽がバックサイドから広角に攻め返す。このゲームを丹羽が競り勝つと、松平の速攻を見切ってブロックで押し返して1対2と逆転した。
 これまでの松平だとこのまま押し切られてしまうパターンだが、今日は違った。第4ゲームは切れ味を取り戻した両ハンドで攻め込んで0-5とする。松平はバックハンドでファインプレーを決めて2対2に追い付くと、勢いに乗って第6ゲームも攻め立てて一気に逆転に成功。松平が王手をかけた第6ゲームは攻守が目紛しく変わる展開で10-10。続くラリーで松平の攻撃がエッジにかかると、最後は丹羽がフリックをミス。新旧世界ジュニア王者の対決は、経験に勝る松平が丹羽をストップした。


新旧世界ジュニア王者対決は、健太が丹羽を下す


準々決勝第4試合:吉村真晴vs森本耕平 ~吉村がノーガードの叩き合いを制す~


 準々決勝第4試合は、アジアジュニア王者の吉村真晴と森本耕平が対戦した。
 立ち上がりは吉村が台上の先手争いを制して2対0とリードする。大事につなぐと吉村に一発を食らう森本は、捨て身の攻撃に切り替えて第3ゲームを奪い返す。
 しかし、吉村は森本の両ハンドを慌てず受け止めてラリーに持ち込んで3対1と引き離す。後がなくなった森本はフォアハンドドライブを打ち込んで第5ゲームを取るものの、再び吉村が強気のラリーを展開して、森本との打撃戦を制した。


吉村が森本との打ち合いを制した


女子ダブルスは藤井寛子・若宮三紗子が3連覇 ~2年続けて阿部・小野との決勝を制す~

藤井・若宮が史上5組目の3連覇

 女子ダブルス決勝は、3年連続優勝を狙う前回王者の藤井寛子・若宮三紗子(日本生命)と、前回準優勝の阿部恵・小野思保(サンリツ)が再び対戦した。

 前回の決勝はゲームオールの大接戦となったが、今回も立ち上がりから拮抗したラリーが展開される。出足は藤井・若宮が阿部のフォアと小野のバックを攻めて5-2とリードすると、巧みにラリーを展開して8-4と点差を広げる。阿部・小野がクロスに盛り返して10-9に追い付くも、小野がバックハンドをミスして藤井・若宮が先制する。
 第2ゲームは探り合いとなって6-6。ここで若宮のレシーブから2本連取して8-6とするが、阿部・小野も必死にブロックしてジュースにもつれ込む。互いに譲らぬ高ラリーで13-13となるが、藤井・若宮が連続ドライブで14-13とすると、つなぎボールでミスを誘って2対0と王手をかけた。
 昨年の決勝も藤井・若宮が2ゲームを先行してからゲームオールに持ち込まれた。そのことを忘れていない藤井・若宮は、立ち上がりからしっかり動いて3-1として、阿部・小野がたまらずタイムアウト。藤井・若宮は流れを譲らず6-3とすると、阿部を大きくフォアに動かして8-4と点差を広げた。
 結局、このまま藤井・若宮が阿部・小野を圧倒して3対0の完封勝利。見事に大会3連覇を達成した。


藤井・若宮が見事なコンビ攻撃で快勝

阿部・小野は2年連続2位に


 3位は田代早紀・藤井優子(日本生命)と石塚美和子・山梨有理(十六銀行)が入賞した。
 第3シードの田代・藤井は準々決勝でインターハイ優勝の松本・松平(四天王寺高)のコンビプレーを振り切ってベスト4入り。準決勝は阿部・小野の左右の強打に及ばなかったが、しっかりとシードを守って準決勝まで駒を進めたことは大いに評価されるだろう。
 石塚・山梨は準々決勝で第4シードの野上・市川(日立化成)との打ち合いを制した。準決勝も藤井・若宮に打撃戦を挑んだが、攻撃の多彩さと安定感で押し切られ、1ゲームを奪うのが精一杯だった。


田代・藤井はシードを守った

石塚・山梨は王者ペアに敗れた


 優勝候補として期待された福原愛・石川佳純(ANA・全農)は、準々決勝で藤井・若宮に大激戦の末競り負けた。
 両者は国際大会で幾度も対戦しており、互いに手の内を知り尽くしている。試合はその流れのままに一歩も譲らぬ大接戦となった。
 第1ゲームは終盤に福原・石川が攻めて先行するが、第2・第3ゲームは藤井・若宮が競り合いを制して王手をかけるが、第4ゲームは福原・石川が強気のプレーで競り勝ってゲームオールにもつれ込んだ。
 注目の最終ゲームは藤井・若宮が先手を取って5-1でチェンジエンド。このまま点差を保って8-4と押し込んだ。しかし、諦めない福原・石川が懸命の攻守で9-8に追いすがると、藤井・若宮にミスが出て福原・石川が9-10と王手。ここで福原が台上プレーでミスしてジュースにもつれる。ここで藤井が回り込みドライブをストレートに決めると、最後は福原が空振りして万事休す。


オリンピックコンビは無念のベスト8


今大会の模様は、卓球レポート3月号に掲載

勝者の陰には敗者の涙が・・・

 6年ぶりに男子シングルスで新王者が誕生し、天皇杯が新たな主へと旅立っていった。
 たった一人の王者の陰には、敗れ去った268人の思いが連なっている。元王者となった天才左腕も、今日の試合を一生忘れられない敗戦として胸に刻み、再び歩み始める。

 今大会の模様は 3月号(2/20発売予定)に掲載予定。

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