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元王者が全日本を語る「渋谷浩の眼」⑦再び王座についた水谷の成長

元全日本王者の渋谷浩が大会6日目の男子シングルス決勝、女子シングルス決勝について振り返った。

■男子シングルス決勝・準決勝
水谷のプレーはさすがと思わせるものがありました。ちょっとやそっとではミスが出ない、1球1球のコース取りやタイミングの厳しさは他の選手を上回っていました。決勝は極力前陣でプレーしようとしていましたが、下げられたときもコースを突いて逆襲するテクニック、パワーはすばらしかったですね。男子全般にいえることですが、水谷のプレーも年々より速く、より厳しくというスタイルに変わってきています。技術面では、本人もインタビューでいっていたようにバックハンドの精度はすごい上がっていました。また、今大会は力みもなく、フォアハンドのスイングも非常にスムーズでとてもよかったですね。精神的にもフラットないい状態で大会期間中通せたことがよかったんじゃないでしょうか。ちょっとやそっとのことでは動じなかったし、貫禄がありました。
町は4ゲーム目の早い打球点で攻めていくリスクを負ったプレーがよかったですね。あのプレーを最初から出していたらどうなっていたのかと少し思います。気持ち的に開き直って5ゲーム目もその流れでいこうと思っていたと思いますが、水谷のミスを誘うようなプレーがそうはさせてくれませんでした。ただ、チキータとライジングのバックハンドカウンターは素晴らしかったです。町としては水谷を後ろに下げて、自分の得意なフォアハンドで追い込みたかったと思いますが、水谷のうまさにそこを封じられてしまいました。

準決勝の水谷対上田は、スタートから水谷が速攻をかけて圧倒しました。上田も途中でハイリスクハイリターンで打球点の早いボールで水谷のフォアサイドを攻めて、水谷が下がったところで回転量の多い威力のあるフォアハンドドライブで狙い打つという戦術で流れをつかみかけましたが、水谷は落ち着いて対処しました。技術的にはチキータそのもので得点できるほどのスピードと威力があるので、相手はサービスのときにかなり神経を使うし、3球目を攻めようという気持ちもなくなり、チキータをどうブロックしようと考えてしまいます。あのチキータは強烈な武器ですね。
町対吉田は、町のバックストレートの高速バックハンドカウンターがポイントになりました。吉田が点を取るときは、町のバックサイドを切るようなドライブで町のミスを誘っていました。吉田は町のバックサイドにドライブを置きに行ったら町のカウンターを浴びてしまうので、逆に利用してちょっとコースをずらしてミスを誘うという高度な心理戦も繰り広げられていました。終盤は町のフォア側にボールを集めるなどして競りましたが、最後は吉田のボールが甘く町のバックサイドに入ってカウンターを浴びてしまいました。ペンホルダーの吉田は、現代卓球では必須のチキータレシーブなど台上バックハンドの攻撃がないという構造的な問題を、高い心肺機能、身体能力に置き換えていいプレーをしていました。特にフットワークがよかったですね。また、バック系の技術は安定性を増してきた上に、カット性ショートやサイドスピンショートなどバリエーションも出てきて、うまさの部分で成長してきました。

■女子ダブルス決勝ほか
平野・石川の動きがよく、2人のフォアハンドで圧倒しましたね。中川・土田美佳は前陣両ハンドのタイミングの早いプレーで思い切りよく攻撃していて、コンビネーションもよく準決勝まではそのよさが出ていました。決勝では相手の威力のあるフォアハンドをブロックしきれませんでした。
田代・藤井優子はラリー戦に強く、威力あるボールで押していけるいいペアでしたが、平野・石川にはそのよさを出せないまま負けてしまいました。
市川・中村は異質型の中村がチャンスをつくって、市川がよく動いてパワードライブを決めていました。
5連覇を狙っていた藤井寛子・若宮は準々決勝で敗れてしまいました。最終ゲームの終盤リードしたところで気持ちが守りに入ってしまったのか、やや消極的になってしまったように感じました。残念でしたが、この2人は国際大会で活躍しましたし、全日本でも4連覇を達成した歴史に残る名ペアだったと思います。本当にお疲れ様でした。


記録・タイムテーブル等の情報は日本卓球協会ホームページに掲載されています。
日本卓球協会:http:/www.jtta.or.jp
記録ページ:http://www.jtta.or.jp/AJ/result2013/

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全日本選手権大会の特集は卓球レポート3月号(2月20日発売号)に掲載します。

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