1. 卓球レポート Top
  2. 大会
  3. 国際大会
  4. 世界卓球
  5. 2016クアラルンプール
  6. 元日本代表が世界卓球を語る「梅村礼の眼」⑭

元日本代表が世界卓球を語る「梅村礼の眼」⑭

世界卓球2016クアラルンプールでは、全日本チャンピオンの座に2度輝き、日本代表としても活躍した梅村礼がその鋭い目で見た世界卓球を語る。ここでは日本男子の決勝トーナメント準決勝となるイングランド戦について話を聞いた。


ayazo.jpg 日本は、水谷と吉村を2点起用、不調の丹羽に変えて3番に大島を使うという妥当なオーダーでした。イングランドは選手が3人しかいないので、エースのピッチフォードと今大会最も存在感を示している選手であるドリンコールを2点使いにして、3番手のウォーカーを3番というこちらもそれ以外あり得ないという妥当なオーダーの対決になりました。
 トップは昨日フランス戦のラストで決勝点を挙げて勢いに乗るドリンコールと水谷の対決でした。ドリンコールは72位と世界ランキングは高くありませんが、国際試合にあまり出ていないだけで、ワールドツアーでも優勝経験があるなど実力はある選手です。特に試合の組み立てがうまい選手という印象があります。また、前陣でカウンターすることもできますし、引き合いにも強く、相手のプレーにオールマイティーに対応する力のある選手です。水谷は序盤、様子を見ながらのプレーだったと思いますが、要所要所やりにくさを感じているようでした。最後のゲームはドリンコールのボールの質や相手とのベストの距離感を見抜いていたので、完全に水谷のペースで試合が進んでいました。
 吉村はエースのピッチフォードと対戦しました。吉村も国内では手足が長い方ですが、それよりもピッチフォードの方が手足が長く、両サイドに大きく振っても距離感が合ってしまうと非常に威力のある一発があります。1ゲーム目は吉村が相手のミドル、バックにボールを集めて相手を詰まらせているプレーが目立ちましたが、3ゲーム目でピッチフォードがサービスの立ち位置を変えてフォア側から出すようになってから、ピッチフォードのフォア側にボールが集まるようになってきました。引き合いは互角でしたが、一度ミドルを突いて相手の体勢を崩してから決めるという展開がもうちょっとあってもいいのではないかと思いながら見ていました。本来であれば3対0で勝ってもおかしくない試合でしたが、吉村は一発で抜けるチキータがあるので、リスクを負わなくてもいい場面でチキータを使って逆転を許しました。大事に行くところと、リスクを負って攻めるところのメリハリをもっと付ければもう少し楽な試合運びができたと思います。とはいえ、最終ゲームの粘り強いプレーは評価できますし、オリンピックに向けて大きな収穫があったのではないでしょうか。
 大島は2日ぶりの試合になりましたが、少し試合から離れていた影響があったでしょうか。大島は3球目をオールフォアで攻撃していましたが、深いツッツキに対して回り込んだボールがほとんどウォーカーのバック側に集まっていたので、待たれて上からカウンターされるという展開が多く見られ、この状況を打破するのは厳しいなと思って見ていました。それが決まらないので今度はフォア側に行くとそれも予測されて待たれているという悪い流れでした。引き合いでもウォーカーは威力がありました。バックハンドドライブも振れる分、大島は不利になったと思います。3ゲーム目は大島が回り込まずに我慢してバックハンドを多用していましたが、相手からするとこの戦術の方が嫌だったのではないでしょうか。ウォーカーは実にシンプルな戦術で、深いツッツキを両サイドに送って、持ち上げさせたボールをカウンターで狙い打つというプレーを徹底していました。大島のつないだボールも100%ではないので、相手にはカウンターしやすいボールになっていたというところが主な敗因でしょうか。
 4番はエース対決の水谷対ピッチフォードでした。ピッチフォードは2番で吉村に逆転負けをしてもっと気を落としているかと思いましたが、相手が水谷ということで、思い切って開き直ってプレーしていました。それこそ、ラケットに当てれば何でも入るというような強気な姿勢でした。そのピッチフォードを5ゲームを通して最終的には崩して勝ったというのが水谷の本当にすごいところですね。ただ、前半で両ハンドの強打を受けたせいで、少し固くなって普段はミスしないような台上のボールにもミスが出ていました。4ゲーム目の6-10からはピッチフォードが勝ちを意識して、早く点数が取りたいがために軽いプレーで失点が出て、流れが変わりました。マッチポイントを握られたあの状況で、水谷は引き合いでも負けず、バック側に来たボールもバックハンドで盛り返したりとスーパープレーが出るというのは、ただただすごいと思って見ていました。ピッチフォードのような強打者は少し歯車が狂ってくると修正が利きづらいという特徴があります。4ゲーム目を落とした時点で流れはかなり水谷に傾いていたので、最終ゲームは私は比較的安心して半ば勝利を確信して見ていました。
 男子は39年ぶりの決勝進出ということですが、ここまで苦しんで勝ち上がってきているので、対戦相手の中国の方がプレッシャーを感じていると思います。ここで自分たちの力を100%出せるように思い切ってプレーしてもらいたいですね。


大会の速報はツイッターでも配信中! ツイッターアカウントをお持ちの方はぜひフォローを!
https://www.twitter.com/takurepo/
 

今大会の模様は卓球レポート4月号(3月20日発売)に掲載

公益財団法人日本卓球協会:http://www.jtta.or.jp
世界卓球2016クアラルンプール/公式サイト(英語):http://www.perfectwttc2016.com.my/
国際卓球連盟(ITTF)世界卓球2016クアラルンプール(英語):
http://www.ittf.com/competitions/competitions2.asp?Competition_ID=2587&category=WTTC

 

\この記事をシェアする/

Rankingランキング

■大会の人気記事

NEW ARTICLE新着記事

■大会の新着記事