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全日本卓球2017 ジュニア男女、混合ダブルス決勝 ~元王者が全日本を語る「渋谷浩の眼」~

大会4日目を迎えた平成28年度全日本選手権大会(一般・ジュニアの部)。男女ジュニアと混合ダブルスで決勝が行われ、3種目で今大会初の全日本チャンピオンが誕生した。それぞれの種目の戦いについて、平成11年度全日本チャンピオンの渋谷浩が大会を振り返った。

<ジュニア男子>
 決勝の木造(愛工大名電高)は前年度王者として臨みましたが、受け身にならず、最初から最後まで先に攻める姿勢を貫いて圧倒したような決勝戦となりました。常に相手の先手をとる攻撃で、打球点の高い攻撃を両サイドに厳しく打ち分けていました。木造は台上プレーでもストップとチキータをうまく使い分けて、とにかく先に攻めるためのプレーを徹底していました。決勝の舞台というのは人それぞれ感じ方は違うと思いますが、独特の空気があります。しかし、木造は昨年頂点に立っているということもあり、場慣れしている様子がうかがえました。堂々たる優勝といえるでしょう。
 宮本(愛工大名電高)は決勝では木造の厳しいプレーの前に力を出し切れなかった感がありました。木造と同様に先に攻めたいという考えはあったと思いますが、後手に回ってしまって、慌ててカウンターを狙いにいってミスをするなど、失点につながってしまうケースが多く見られました。攻めたいという気持ちはあったものの、無理に打ちにいくという状況になってしまいました。精神的にプレッシャーを与えるようなプレーで木造を揺さぶりたかったですね。決勝では敗れましたが、準々決勝で張本(JOCエリートアカデミー)を破るなど、素晴らしい結果を残したといえるでしょう。

 3位に入賞した沼村(野田学園高)は準決勝で木造から第1ゲームで先にゲームポイントを奪いながらもあと一点を奪うことができなかったのが響いたといえるでしょう。1ゲームを先制していたらその後の展開は変わっていたかもしれません。また準々決勝で宇田(JOCエリートアカデミー)との接戦を制した高見(愛工大名電高)はラリー戦での強さが光りました。敗れはしましたが、宇田も昨年よりもパワーが付いて、良いプレー内容だったと思います。また、今大会も注目を集めた張本は準々決勝では、受けに回ってしまうような展開が続いてしまいました。なんとかして流れを呼び込もうとしましたが、宮本に押し切られてしまいました。
 今大会はベスト4に愛工大名電の選手が3人入りました。インターハイでも感じたことですが、彼らの強さの1つは精神的に崩れず競った場面でも確実に点をとれることです。普段の厳しい練習がそのようなプレーを生み出している要因だといえるでしょう。

<ジュニア女子>
 決勝は笹尾がバック面の表ラバーでボールを送り、長﨑に持ち上げさせたところをたたきつけるようなフォアハンド強打する形が良かったです。長﨑としてはそのような展開を防ぎたかったのですが、最後まで笹尾のバックハンドから繰り出すボールに合いませんでした。それだけ笹尾の出来が良かったといえるでしょう。笹尾はバックハンドでチャンスをつくり、フォアハンドで仕留めるプレーが確立されていました。また、ミスがほとんどありませんでした。決勝では、ゲームの中盤以降で抜け出すケースが多く、得点が欲しいときに確実に点を取ることができていた点も光りました。中盤以降の競り合いで崩れるというケースがほとんどありませんでした。
 長﨑は決勝で敗れはしましたが、大健闘の決勝進出です。今大会はバックハンドドライブにも進境が見られました。特に準決勝の早田との試合ではバックハンドが良かったです。長﨑と早田は女子シングルス4回戦でも対戦しており、長﨑がゲーム中盤以降、早田の回転量の多いドライブに対応し始めました。長﨑はそうした流れでジュニア女子準決勝に臨んだこともあり、試合開始時から早田のドライブに対応することができ、自信を持って打球点の高いところでドライブを打ち、早田のバック側を突くことができました。早田はそれに対して受け身になる展開が続きました。試合終盤はバックハンドドライブで攻め返しましたが、ミスが出てしまいました。

 もう一方の準決勝の笹尾対加藤は、笹尾が加藤のフォアサイドを徹底して攻めていました。特に加藤のチキータを警戒してサービスを組み立てていた点が良かったです。加藤はバックハンドの安定感が抜群で守りがうまく、最近では攻撃力も付いてきたということで、笹尾はとにかくフォアサイドを徹底して突いていました。その形を貫いたことが勝因の1つといえるでしょう。
 優勝候補の早田、加藤を破って決勝に進んだ2選手のプレーは印象に残りました。世界ランキング上位の2選手が準決勝で敗れるという結果から見ると、今後の楽しみな選手が続々と出てきているというのが現状ですね。
 ジュニア男女のプレーを見て、試合の中での間合いの取り方や駆け引きが大人びていると感じました。一例を出すと、相手がサービスの構えに入っても、自分のタイミングでレシーブに入るという選手が多かったです。ジュニアといえども、卓球歴は10年以上という選手ばかりで、小さいころから多くの試合を経験しているということもあり、試合運びがうまいと感じました。

<混合ダブルス決勝>
 決勝は、前田が前陣でさばき、田添が中陣からドライブを打ち込むという田添/前田の良いところが出ました。とにかく前田が台の近くでチャンスをつくり、田添が決めるというパターンが多かったです。それに対して、吉村/石川(名古屋ダイハツ/全農)は苦し紛れにドライブを打つという場面が多かったです。こういった形でドライブを打つと、入ればすごいですが、その分ミスのリスクもあります。また、吉村が台から下げられるケースも多く、それだけ田添/前田の戦術が徹底していたともいえるでしょう。最終ゲームは田添/前田がスタートダッシュに成功したことが勝利の大きな要因です。田添/前田は前陣と後陣と、プレー領域がそれぞれ異なっていますが、このような選手がペアを組むと、相手からすると、打球のタイミングがずれやすく、攻めることができないというケースが見受けられます。田添/前田ペアはそうしたプレー領域の違いをうまく生かして戦ったことが連覇につながったと思います。

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