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2021年全日本卓球 NT強化本部長 宮﨑義仁「及川のプレーは横綱相撲だった」

ナショナルチーム強化本部長として、日本代表選手の強化に努める宮﨑義仁氏。開催者側の立場、また、元選手、指導者としての経験から、今回の全日本卓球をどのよう見たのか。全日本卓球を終えて、その感想と強化の展望について聞いた。

-今回の全日本卓球の総括をお願いします。

 こういうコロナ禍で日本卓球協会として、まずこの大会を開催するのか、しないのか、というところから検討させてもらいました。多くの方から「開催してほしい」という要望がありましたが、いくつかの「開催すべきでない」という声もありました。
 協会としては、選手の安心・安全を一番に考えた上であっても、「アスリートにプレーをしてもらう」ということが一番の協会の役割だと最終的に判断をして、開催の方向をとりました。
 アスリート・選手の皆さんには、大変厳しい環境で戦うということを求めてしまいましたが、土地が変われば温度も変わって、マットがあったりなかったり、寒かったり暑かったり、いろんな環境があると思うんですね。
 今回はコロナ禍という環境で、そういう中でも対応しなくてはいけないのがアスリートだと思います。私たちは協会として大会をやれたことに喜びを感じておりますけど、そこに参加いただいて素晴らしい試合をしてくれたアスリートに感謝を申し上げたいと思っています。
 日本全国の卓球ファンの皆さまには、実際に見るのではなく、テレビやネットを通じて満足の行く試合内容だったのではないかと思っています。

ー女子シングルスの決勝についてはいかがでしたか?

 石川さん(佳純/全農)の巧みさ、卓球の中にはいろんな技が入ってくるんですけど、その中に「巧み」っていう技も入るんですけど、本当に威力ではない「ストップ」「ツッツキ」「ブロック」を織り交ぜた、相手に打たせながらコース取りをする、打つ時には一発で打ち抜くスイングをする。卓球を知り尽くした巧みさ、頭が下がるなと思いました。
 今、同年代の20歳の3人、平野(美宇/日本生命)・伊藤(美誠/スターツ)・早田(ひな/日本生命)の決勝の相手として3年連続敗れた、その悔しさがあって、へこたれるんじゃないかなと思いましたが、また今年も決勝まで出てきて、その3人の代表格である伊藤美誠と対戦して、そこで勝ってしまうんですから、「いやー参ったな」と頭が下がる思いです。本当に心から拍手を送りたい。勝つまでは涙ぐましいほどの努力の数々があるはずなんですよ。ぼーっと昼寝してて勝てるわけないんですよ。

ー男子シングルス決勝についてはいかがでしたか?

 水谷隼(木下グループ)というのは特別な選手で、彼は守りが主体の選手です。しかし、守って守って勝てるのは水谷くらいのものです。
 丹羽孝希(スヴェンソン)というのは超攻撃型の選手。今回は全日本の魔物に憑りつかれて、少し積極性に欠けました。
 一方、吉村真晴(愛知ダイハツ)、張本智和(木下グループ)という東京オリンピック代表選手を倒して決勝まできた及川(瑞基/木下グループ)。決勝は2020年世界卓球釜山大会代表の森薗(政崇/BOBSON)をゲームオールで退けました。あの素晴らしいバックハンドとラリー力、戦術転換の早さ、何と言ってもすべてのゲームを通して、あの落ち着き払った態度。
 相撲で言うと横綱相撲ですね。相手が色々と戦術を変えてきてもドンと構えて対応するという、チャンピオンに相応しい態度、チャンピオンに相応しい内容の試合だったなと思います。
 体は1m60cmですが、1m80cmぐらいあるんじゃないかと思わせるぐらい豪快さ、大変素晴らしいなと思いました。
 彼の心の中にある、自信なり、素養なり、いろんなものがあると思うんですね。それが卓球の軸とつながって優勝した。人間力がそのまま成果として出たのではないかと、及川選手を見ていたら思いました。

ーこれからホープス、ジュニアの選手に期待することは?
 
 2001年からアンダー12、ホープスナショナルチームを増設してから若い選手がどんどん全日本で活躍するようになりました。私たちが現役だった頃は、全日本のベスト16に中学生や高校生がはいるなんて考えられなかった。ベスト16のうちに14、5人、大学生が1、2人が当たり前の時代がありました。
 アンダー12、ホープスナショナルチームをつくってから、水谷が2006年度の全日本で初優勝した時には16人中9人の若手(大学生以下)がランクに入るくらい、時代が変わりました。
 今でもそれが引き継がれているわけですが、ジュニアの年代でシニアの部で活躍しないと将来のオリンピックや世界卓球の代表の可能性はないのではないか、ポテンシャルがないのではないかと思われる風潮があります。
 しかし、それはまったくの間違いです。20歳からでも25歳からでも卓球は活躍できます。ただし、日本卓球協会としてはハイポテンシャルの選手を幼いころから指導したいという想いから、ホープスナショナルチームを作って早い年代からの成長を促していますが、実際、オリンピックや世界卓球の代表を取るのにホープスから卓球をやってないといけないということはありません。遅咲きでも全然構いません。
 何が言いたいかと言うと、確かに若返りが進んでいますけど、それだけではないと。
 努力を忘れずに、しっかり頑張っていただいて、社会人になってからでもオリンピックや世界卓球の代表は狙えるんだと。地道な努力の方が重要なんだということをアスリートの皆さんに分かっていただいて、最後まで努力をしてほしいと思います。
 結果として、ベテランの石川さんが今回優勝しているし、ホープスの時、自分の年代ではチャンピオンではなかった及川選手が、今になって全日本チャンピオンになる、こういうことがあるんですよ。
 私も中学校から卓球を始めてオリンピックや世界卓球の代表になっている人間ですから、自分自身がホープスナショナルチーム作ってきましたけど、それが全てではない。ただのきっかけ作りをしているだけであって、アスリートの皆さんの現役生活が終わるまでの活躍を期待したいと私は思っています。

ー伊藤選手の決勝のプレーについてはいかがでしたか?

 皆さまも伊藤のプレーを見てお分かりになっていると思いますが、相当、動きが速くなりました。連続攻撃が相当うまくなりました。去年よりもうまくなっています。
 ではなぜ、石川佳純に負けたのか。
 伊藤はアグレッシブな卓球から、少しラリー力を磨いてラリー中心の卓球に変化してきています。日本の女子の中で、今まで天才的にラリーが強かったのが石川佳純です。私から言わせれば、伊藤美誠は石川佳純の土俵に乗っていったということなんです。石川佳純が一番得意な場所で勝負を仕掛けた。
 ただし、それは、伊藤が石川佳純を目標としているのではなくて、世界の頂点、中国を倒すことを目標としているので、まずはラリー力を強くしようと取り組んでいるのです。そういう目標でやっているから、まずは土台作りをしているので、そういう卓球になっている。その卓球が奇しくも、石川佳純が一番得意な卓球、石川佳純の一番優れているところを引き出すことになってしまった。
 もっとラリーというよりも変化を伴ったアグレッシブな卓球をすれば、もしかしたら石川佳純はついてこれなかったかもしれません。
 でも、今伊藤美誠の練習の中心がラリーですから、石川佳純の能力を十二分に引き出してしまったと、私自身は分析しております。

(まとめ=卓球レポート)

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