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世界卓球2022成都 「中国はチャンスボールの範囲が広すぎる」 男子決勝T1回戦を渡辺理貴が解説

 元ナショナルチームコーチとして数々のトップ選手の指導に携わり、現在はTリーグの解説者としても活躍する渡辺理貴氏が、その卓越した観察眼で世界卓球2022成都を鋭く分析する企画。
 今回は、10/5に続き、10/6に行われた男子団体決勝トーナメント1回戦の残り4試合について分析していただいた。


【中国対インド】
チャンスボールの範囲の違いで中国がインドを圧倒

▼男子団体決勝トーナメント1回戦
 中国 3-0 インド
○樊振東 2,9,5 デサイ
○馬龍 12,5,0 グナナセカラン
○王楚欽 4,5,6 シャー

 グループリーグではドイツを倒すなど健闘したインドでしたが、中国には歯が立ちませんでしたね。
 樊振東と馬龍がほかの選手と大きく違うのは、「チャンスボールの範囲」です。二人がチャンスボールと判断して決めてしまう範囲は驚くほど広い。特に、相手がストップなどでボールを短めに返し、「これはさすがに打たれないだろう」というボールに対して、強打するフットワークと身のこなし、判断力がずば抜けています。インドのデサイ、グナナセカランといえば優れたブロック力で世界の第一線に上がってきた選手たちですが、打たれないだろうと守備の準備をしていないところに強打されるわけですから、いくらブロックの名手といえども対応できません。
 加えて、二人は守備力もずば抜けています。相手に先手を取られても台から少し距離を取って対応し、簡単に得点を許しません。守備をしながらもチャンスがあればカウンターで盛り返すので、樊振東と馬龍は本当に隙のないプレーをしていました。
 3番の王楚欽も死角のないプレーをしていましたね。一方、今大会初出場の世界ランキング142位のシャーにとっては、自分のプレーが全く発揮できない厳しいデビュー戦になってしまいましたが、貴重な経験を積めたのではないかと思います。
 盤石の強さを見せた中国ですが、王楚欽が巻き込みサービスでフォルトを取られる場面がありました。些細なことではありますが、予期せぬ結果は、小さなほころびが招いてしまうものです。自国開催で必勝を期す中国にとっては見過ごせないミスだったと思います。

馬龍は相変わらず隙のない強さ


【スウェーデン対ベルギー】
天才・モーレゴードが逆転勝利でスウェーデンの流れをつくる

▼男子団体決勝トーナメント1回戦
 スウェーデン 3-0 ベルギー
○モーレゴード 9,-9,-8,3,6 アレグロ
○ファルク -12,9,13,8 ニュイティンク
○ケルベリ 6,9,7 ラッセンフォス

 トップのモーレゴード対アレグロの試合は、ゲームカウント1対1で迎えた3ゲーム目でリードしていたアレグロがタイムアウトを取った際、副審がゲームが終わったと勘違いしてカウントを0-0に戻してしまう間違いがありました。追い上げていたモーレゴードは、勢いに水を差された感じになりましたが、スウェーデンの天才には、このハプニングは関係ありませんでしたね。モーレゴードは結局第3ゲームを失ったものの、第4、第5ゲームをスーパープレーの連続で連取し、スウェーデン勝利の流れをつくりました。
 2番のファルク対ニュイティンクは見ごたえがありました。ファルクが3対1で勝ちましたが内容は全くの互角で、経験によるゲームの組み立てとボールコントロールでほんのわずかにファルクが上回りました。
 3番のケルベリも充実したプレーでラッセンフォスをストレートで下し、スウェーデンがベスト8に勝ち上がりました。
 スウェーデンはメダルをかけた準々決勝で中国と対戦します。タレントぞろいのスウェーデンといえど、中国から3点を取るのは極めて難しいですが、鍵はやはりモーレゴードです。モーレゴードが持ち前の想定外のプレーで前半で勝利できれば、ひょっとしたら中国の牙城が揺らぐかもしれません。

トップで先制したモーレゴード。創造性あふれる選手だ


【ポルトガル対スロベニア】
2番のジェラルドが徹底した戦術でヨルジッチに値千金の勝利

▼男子団体決勝トーナメント1回戦
 ポルトガル 3-0 スロベニア
○フレイタス 8,6,-9,7 コズル
○ジェラルド 6,-11,-4,9,8 ヨルジッチ
○モンテイロ 9,10,3 フリバール

 トップは、エースのフレイタスがコズルのバック側を連続でうまく攻めて台から下げ、ポルトガルが先制します。
 そして、なんといってもこの試合のハイライトは、2番のジェラルド対ヨルジッチ。第1ゲームはヨルジッチのバックハンドをしっかり待てたジェラルドが先制しますが、パワーと実績に勝るヨルジッチが2ゲームを連取し、逆転します。このまま勝負あったかに見えましたが、ジェラルドが早いタイミングでストレート(右利きのヨルジッチのバック側)を突く戦術でヨルジッチのパワーポジション(強く打球できる位置や機会)を奪い、盛り返します。結局、ジェラルドは最後まで相手が嫌がる展開を積極的につくり続け、大金星につなげました。ジェラルドの奮戦に加え、ポルトガルは3番にベテランのモンテイロを配置する盤石の体制でしたね。
 勝ったポルトガルは、メダルをかけて日本と準々決勝を戦います。
 ポルトガルが全員サウスポーということで、全員右利きの日本からするとバッククロスは相手のフォア側になります。そのため、バッククロスのラリー展開を工夫して制しつつ、機を見て相手をフォア側へ大きく動かすラリー構成が注目ポイントになると思います。いずれにしても、日本は選手全員が「メダルを意識しないで目の前の試合をしっかり戦う」というぶれないメンタルで大一番に臨んでほしいと思います。

2番でジェラルドがヨルジッチを下し、ポルトガル勝利を決定付けた


【ドイツ対クロアチア】
グループリーグとは打って変わり、躍動したドイツ

▼男子団体決勝トーナメント1回戦
  ドイツ 3-0 クロアチア
○ドゥダ 9,3,14 ガシナ
○ダン・チウ 5,7,4 ジェリコ
○シュトゥンパー -3,12,4,4 プッツァー

 ドイツは1番のドゥダが、グループリーグの出来からは信じられない攻守の安定ぶりを見せました。特に、2対0とリードした3ゲーム目の逆転勝利は、メンタル的な安定感を感じさせました。一方のガシナは、チャンスで決定打を打つもののなかなか得点につながらない展開が続き、焦りで持ち味であるラリー戦で粘れませんでしたね。
 ドイツは2番のダン・チウもヨーロッパチャンピオンにふさわしい素晴らしい攻守を見せてくれました。
 3番のシュトゥンパーは、グループリーグのフランス戦でルベッソンに勝利するなど好調でしたが、この決勝トーナメントでも力のあるプッツァーを下し、ベンチの起用に応えました。シュトゥンパーは19歳とまだ若く、YGサービス(逆横回転系サービス)からの積極的な攻撃が持ち味の選手です。新星ドイツチームの3番手として十分な活躍を見せていると思います。
 それにしても、この試合のドイツは、苦しそうにプレーしていたグループリーグとは打って変わって躍動していました。グループリーグが終わり、この試合までに1日のインターバルがありましたが、その間にどのようにチーム状態を立て直したのか、とても興味深いですね。選手個々のがんばりはもちろんですが、名将・ロスコフ監督とスタッフたちの手腕によるところも大きいと推察しています。 

グループリーグとは見違える充実のプレーを見せたドゥダ



※時刻は日本時間


(まとめ=卓球レポート)

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