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  6. 世界卓球2023ダーバン 上田仁が読み解く世界卓球「今大会の台風の目に完勝した樊振東と王楚欽は盤石の強さ」

世界卓球2023ダーバン 
上田仁が読み解く世界卓球
「今大会の台風の目に完勝した樊振東と王楚欽は盤石の強さ」

 
 元日本代表の経歴を持ち、その真摯な人柄から「卓球界の賢人」として名高い上田仁が、確かな実力と経験に裏打ちされた深く鋭い洞察力で世界卓球2023ダーバンの攻防を読み解く
 今回は世界卓球7日目に行われた樊振東(中国)対O.アサール(エジプト)、王楚欽(中国)対リンド(デンマーク)の男子シングルス準々決勝を解説してくれた


▼男子シングルス準々決勝
樊振東(中国) 7,11,3,7 O.アサール(エジプト)

 男子シングルス準々決勝で世界ランキング1位の樊振東に対したのはエジプトのO.アサールです。ホームといっても過言ではないO.アサールは、会場の大声援を受けながらモーレゴード(スウェーデン)ら強敵を連破してベスト8まで勝ち上がってきました。O.アサールはとにかく台にボールを入れるしつこさとバックハンドのブロック力、そしてラリー戦の強さを持ち味にする選手です。東京オリンピックでも男子シングルスでベスト8に入っているので安定感があります。

 試合は第1ゲームからバック対バックの応酬になりました。身長が高いO.アサールはミドル(右利きのO.アサールにとって右腰のあたり)のボールも簡単にバックハンドで対応できてしまうので、樊振東のボールも第1ゲームからうまく対応していました。しかし、台上のボールはがあまり得意とはいえないO.アサールに対し、樊振東は丁寧な台上から崩してポイントを重ね、ゲームを先取します。

 第2ゲームはO.アサールがバック対バックでさらに粘りを見せますが、それをさすがの技術力で上回る樊振東がスタートから引き離します。O.アサールもラリーで押し込む場面がありましたが、バック対バックで展開が少し良くないと察した樊振東は、時折フォアハンドで決定打を放つ戦術を併用します。第2ゲームはジュースまでもつれましたが、足を使った樊振東が逆転で物にし、ゲームを連取します。

 第3ゲームは、樊振東がYGサービス(逆横回転系サービス)に切り替えてO.アサールを突き放します。O.アサールにサービスを慣れられて得意のラリーに引き込まれると面倒な事態になるので、その機先を制した樊振東のサービス変更はさすがでしたね。
 樊振東は、このYGサービスをきっかけにO.アサールを圧倒し、第3、第4ゲームを連取し、ストレート勝利でベスト4入りを決めました。
 これぞ世界ランキングナンバーワンという内容の完勝だったと思います。

 一方のO.アサールもアフリカ大陸勢として全種目を通じて唯一のベスト8入賞は快挙です。強豪国と認知されていない国からこのような選手が現れるのは、本当にいろいろな人に夢や希望を与えると思います。O.アサールには引き続き頑張ってほしいですね。

樊振東は高い技術力と戦術力で完勝
今大会、全種目を通して唯一アフリカ勢で8強に入ったO.アサール


▼男子シングルス準々決勝

王楚欽(中国) 10,6,8,-10,8 リンド(デンマーク)

 リンドは、張禹珍‬(韓国)ら強豪を連破してベスト8まで勝ち上がってきました。リンドの国際的な知名度はまだ高くありませんが、彼は23歳と若く、プレースタイルはサービスがうまくてフォアハンドが強く、またレシーブは切れたツッツキを多用してカウンターをしたり、そのツッツキの種類も多彩で独創的なやりにくいタイプの選手です。デンマークといえばレジェンドのメイスが有名ですが、メイスさながらのロビングもとても上手です。
 そのリンドがメダルをかけて戦うのは、中国の次世代エースの呼び声高い王楚欽です。

 試合はスタートから王楚欽の精度の高い攻撃になかなか勝機を見いだせないリンドでしたが、時折見せる変化の多いツッツキからのカウンタープレーや、打ち込まれてからメイスさながらのロビングで王楚欽から何度も得点を奪いました。ロビングを打ちミスした時にまさかという表情の王楚欽とは対照的に、してやったりのリンドの表情を見ると、とても楽しそうに卓球をしているようで微笑ましかったですね。

 結局、リンドは王楚欽から1ゲームを奪うにとどまりましたが、今大会で大きくブレークした選手であることは間違いないでしょう。まだまだ若いので、これからさらに世界トップの常連選手へと成長してくるかどうか楽しみですね。
 一方、完勝といっていい王楚欽は、世界卓球でもう何度もメダルを取っていて当然のような強さと落ち着きでしたが、今大会が初のメダルというのは少し驚きです。金メダルまでには中国の大先輩をあと2回倒さなければたどり着きませんが、どのようにプレーのギアを上げて挑むのか楽しみです。

充実のプレーを続けている王楚欽。唯一三冠王の可能性がある選手だ
上田が「楽しそうにプレーしている」というリンド。これから要注目だ



※文中敬称略
(まとめ=卓球レポート)

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