1. 卓球レポート Top
  2. 技術・戦術
  3. 倉嶋洋介の未来予想図
  4. 倉嶋洋介の未来予想図【解説編】今、効くサービスのキーワードは「勢い」

倉嶋洋介の未来予想図
【解説編】今、効くサービスのキーワードは「勢い」

 元ナショナルチーム監督として日本男子をけん引し、現在はTリーグの強豪・木下マイスター東京の監督を務める倉嶋洋介氏が、その確かな視点で現代卓球を考察する新企画。最先端のプレーはもちろん、これからトレンドになりそうなプレーを切り出し、解説から技術指導まで、さまざまな角度から一歩先へ行くためのヒントを提案していく。
 第1回は、これからの卓球で勝つために必要なサービスについて語っていただいた。

輝かしい指導キャリアを持つ倉嶋氏が、現代卓球を鮮やかに切り取る

今の卓球はサーバー優位の流れに戻りつつある

 連載のスタートは、今の世界のサービスのトレンドや、これからトレンドになりそうなサービスについて、私なりの見解を述べることから始めたいと思います。
 あらためて述べるまでもなく、サービスは1球目の攻撃球であり、強くなるために必ず磨かなくてはならない技術ですが、チキータ(台上のボールをバックハンドドライブする技術)の出現で、サーバー(サービスを出す側)が必ずしも優位ではない時期が続きました。しかし、選手たちのチキータへの対策が進んだ今は、サービスが本来の優位性を取り戻しつつあります。5月に行われた世界卓球2023ダーバン(以下、世界卓球)を見ても、サーバーがチキータで先手を奪われるシーンは減り、サービスのうまい選手が勝ち上がっていました。サービスの工夫によって以前よりも思うようにチキータでレシーブできなくなった側面もあると思いますが、いずれにしても6対4もしくは7対3でサーバー優位の流れに戻ってきているなという個人的な感覚です。世界卓球の男子シングルスではベスト4を中国選手が独占しましたが、彼らの大きな勝因もサービスでした。
 そこで、サービスをテーマに据えた1回目は、中国選手のサービスの特徴とそのメリットについてお話ししていきたいと思います。

中国選手のサービスで強く印象に残ったのが
フォームと球足の勢いのすごさ

 世界卓球で中国選手たちが出していたサービスで強く印象に残っているのが、「ものすごく勢いのあるサービス」です。「迫力のあるフォームから出すサービス」とも言い換えられると思います。
 王楚欽や梁靖崑のサービスを見れば一目瞭然ですが、彼らは体重移動を目いっぱい使ってドーンとサービスを出します。あんなふうにものすごい勢いでサービスを出されると、レシーバー(レシーブする側)は毎回「ロングサービスが来る?」と身構えなくてはなりません。その迫力のフォームから短いサービスを多用してくるので、レシーバーはどうしても反応が遅れてしまいます。

 彼らの勢いよく出すサービスは、実際に球足(スピード)も速いのが特徴です。見た目のフォームだけでなく、ボールにも勢いがあるのです。
 サービスの球足がポン・ポンという感じでゆっくりだと、サービスがふっと止まる瞬間ができるので、レシーバーからするとチキータする絶好のチャンスです。しかし、王楚欽や梁靖崑が勢いよく出すサービスの球足はト・トンと速いのでチキータするタイミングを見つけにくいし、ストップもしにくい。そのため、良いレシーブをするのが非常に難しいサービスだという印象を強く受けました。

 加えて、「コントロールが適度に乱れる」ことも、勢いよく出すサービスの見逃せないメリットだと私は思います。
 勢いよく出すサービスは相手にプレッシャーをかけられる半面、コントロールが難しい側面があります。王楚欽や梁靖崑ほどのテクニックの持ち主でも、「今のサービスはおそらくコントロールミスだろうな」と見受けられるサービスをしばしば出していましたが、この適度なコントロールの乱れ加減が、レシーバーからすると非常に厄介なのです。
 野球では「ピッチャーのボールが適度に荒れている方がバッターは的が絞りにくいので打てない」と言いますが、勢いよく出すサービスにはそれに通じるものがあります。王楚欽や梁靖崑のサービスは正確にコントロールされて来ることが多いものの、不意に想定より長かったり短かったりと適度に荒れてくるので、レシーバーからすると予測がとても立てにくい。
 実際のところ、王楚欽や梁靖崑が意図してコントロールを乱しているかどうかは定かではありませんが(意図的だとしたらすごいことですが)、この適度なコントロールの乱れも、勢いよく出すサービスの効果をいっそう高めていました。
 王楚欽や梁靖崑は、ここまで述べた勢いよく出すサービスをメインにしながら、時折、何気なくスッと普通に出すサービスも交えていました。そうして、要所要所でペースチェンジしていたところも巧みだったと思います。

 次回は、勢いよくサービスを出すための技術的なポイントについて具体的に解説します。

世界卓球2位の王楚欽。迫力満点のサービスが大きな武器だ

↓動画はこちら

(取材/まとめ=卓球レポート)

\この記事をシェアする/

Rankingランキング

■技術・戦術の人気記事

NEW ARTICLE新着記事

■技術・戦術の新着記事