史上稀に見る激戦になった男子シングルス決勝・宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園)対張本智和(木下グループ)の攻防を、水谷隼(木下グループ)が圧倒的な分析力と説得力で読み解くスペシャル企画。
第5ゲームは宇田が2度のチャンピオンシップポイントを握るが、張本が驚異の粘りで奪い返し、試合はいよいよ終盤へ。第6ゲームの二人の攻防を、水谷が解説する。
張本がチキータから押す本来のプレーを取り戻す
宇田 1-0 張本 宇田がバック前のサービスからのラリーで得点
宇田 1-1 張本 宇田がバック側へのロングサービスをミス。張本が得点
スタートから、宇田はこの試合で2回目か3回目になるバック前へサービスを出してきました。
続いて、バック側へのロングサービスをミスしましたが、回転が入っていない純粋なロングサービスを新しく出してきました。
宇田 1-2 張本 宇田がフォア前に来たサービスに対してチキータをミス。張本が得点
宇田 1-3 張本 張本がフォア前へのサービスから3球目でチキータして得点
宇田がサービスを工夫してきた一方、張本はフォア前へのサービスを徹底しています。フォア前のサービスに対し、宇田はフォア前にストップかバック側にツッツキがほとんどなので、張本はそれを狙っていこうと思っているでしょう。
張本が持ち味であるチキータで連続得点
宇田 1-4 張本 張本がフォア前に来たサービスに対して、チキータからの4球目攻撃で得点
宇田 1-5 張本 張本がフォア前に来たサービスに対して、チキータで得点
宇田としては、張本に2本連続でチキータされているので、サービスの配球がよくなかったですね。
僕は試合前、大体がこのような流れで張本が優位に進めると予想していました。宇田があまり考えず不用意にサービスを出すと、張本にチキータで攻められてこのような展開になってしまいます。
宇田 1-7 張本 張本がフォア前に来たストップをフリックで3球目攻撃して得点
張本はフリック(払い)で得点しましたが、これが得点源になっています。
一方、宇田は、このゲームはあきらめているというか、次のゲーム(最終ゲーム)のために自分の感覚を試している感じがあります。点数を取りにいくというより、次のゲームを見据えていろいろと試していますね。
宇田 4-9 張本 張本がフォア前に来たサービスをチキータしてからの4球目で得点
宇田はサービスの回転をいろいろ変えてはいますが、ロングサービスは出していません。この段階では、(最終ゲームに備えて)ロングサービスを見せたくないのでしょう。
決勝を通して宇田の得点源になっていた
リスクの少ないツッツキからのカウンター
宇田 6-9 張本 宇田がツッツキした後、バックハンドドライブをカウンターしてからのラリーで得点
張本は、ツッツキに対するバックハンドドライブを宇田に狙われるパターンが多いし、この技術自体のミスも多い。
宇田としては楽です。ツッツキはリスクがないので、どんなサービスが来ても、とりあえずバック側にツッツキで返しておけば展開をつくることができます。
宇田 6-10 張本 張本が3球目チキータからのラリーで得点
相変わらず、張本はバック側へのチキータが効いています。これを見せておくことによって、フォア前へのストップも相乗効果で効くようになります。
●男子シングルス決勝
第1ゲーム 宇田幸矢 13-11 張本智和
第2ゲーム 宇田幸矢 11-9 張本智和
第3ゲーム 宇田幸矢 8-11 張本智和
第4ゲーム 宇田幸矢 12-10 張本智和
第5ゲーム 宇田幸矢 11-13 張本智和
第6ゲーム 宇田幸矢 6-11 張本智和
勝つビジョンがようやく見えた張本
逆に追い詰められた宇田
このゲームは、張本が序盤からよかったですね。フォア前に来たボールに対して積極的に攻めていけたし、チキータもミスがありませんでした。
試合が振り出しに戻ったことで、宇田としては苦しい。5ゲーム目でマッチポイントを2本握っていたにもかかわらず追いつかれたことに加え、この6ゲーム目は勝機を見いだせませんでした。
張本としては、「第6ゲームと全く同じことをやれば勝つ」という自分の勝ち方のビジョンが見えたと思います。一方、宇田としては、(第6ゲームと)同じプレーをしていたら絶対に勝てないと感じているでしょう。
(まとめ=猪瀬健治 動画=小松賢)