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強化のフロントライン24 全日本卓球2019の評価⑤
女子の技術傾向について

〜宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策〜
日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。
今回から、平成30年度全日本卓球選手権大会(以下、全日本)の女子シングルスについて宮﨑強化本部長の評価や感想を紹介する。

●女子もチキータを標準装備する時代へ

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混合ダブルス2位の長﨑美柚(左)は男子選手と見紛うほど強烈なチキータを見せた


 全日本は日本中のファンやメディアが注目する一方で、強化本部にとっても選手を評価する上で重要視する大会です。前回まで、男子の評価や感想をお話ししました。
 今回から女子にスポットを当てて、技術傾向や活躍した選手たちの評価を述べていきましょう。

 今回の全日本における女子のプレー内容は、男子以上に「これが世界のトップレベルだ」と言い切って差し支えないほどハイレベルでした。
 女子シングルス全体を通して際立っていたプレーがふたつあります。
 ひとつは、チキータです。
 女子シングルスで優勝した伊藤美誠(スターツSC)や3位に入った早田ひな、森さくら(ともに日本生命)、ベスト8の加藤美優(日本ペイントホールディングス)、芝田沙季(ミキハウス)、混合ダブルス準優勝の長﨑美柚(JOCエリートアカデミー/大原学園)ら今回の全日本で活躍した女子選手たちは、男子選手のように威力のあるチキータを随所で使っていました。
 特に、混合ダブルスのレシーブで長﨑が強烈なチキータで男子からたびたびノータッチを奪ったシーンなどは、例年の全日本では見られなかったプレーです。

 男子はチキータが必須技術になって久しいですが、女子の間でチキータが注目されたのはそれほど昔ではありません。女子が本腰を入れてチキータに取り組み始めたのは、2017年のアジア選手権大会で平野美宇(日本生命)が男子のようなチキータを連発して中国選手を連破し、優勝したことが契機になったと私は見ています。
 平野の活躍に触発されて、チキータを取り入れる女子が日本はもちろんのこと世界中で増えましたが、昨年までの全日本は使う選手が限られている印象でした。
 しかし、今大会では上位に勝ち上がった選手だけでなく、大会の序盤でもチキータを積極的に使っている女子選手を多く目にし、その精度も相当なレベルでした。「いよいよ女子の間でもチキータが標準装備の時代になってきた」という印象を強く受けましたし、今後、女子の卓球で勝ち上がるためには、男子同様チキータの精度を高めることが必須になってくるでしょう。

●女子は男子以上にスマッシュが大きな武器になる

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安定性と威力が抜群のスマッシュでベスト8に入った安藤みなみ


 今回の全日本の女子で際立っていたプレーのもうひとつは、スマッシュです。
 優勝した伊藤や2位の木原美悠(JOCエリートアカデミー)、ベスト8に入った安藤みなみ(専修大)らのプレーを見れば一目瞭然ですが、彼女たちの大きな得点源はスマッシュでした。
 前回の男子の技術評価でも述べましたが、動作に時間がかからないスマッシュは今の速い卓球にフィットした技術であることに加え、ボールがプラスチック製に変わって打球の回転量が減り、スマッシュを試みたときの成功率が高くなりました。
 また、前方向へスイングしてボールを強くはじくように打つスマッシュは、「ボールに目線が近いほど安定させやすい」という特徴があります。この点において、男子に比べると身長が低い傾向がある女子は自然とボールに目線が近づくため、スマッシュは女子にとって身に馴染みやすい技術だと思います。
 日本のトップレベルがスマッシュを効果的に使って活躍すれば、必然とこれから卓球を始める子どもたちや小中学生たちはそのまねをします。この循環でスマッシュが下の世代にうまく引き継がれれば、日本女子卓球界に新しいプレースタイルの波が来るでしょう。

 スマッシュは現代に合う効果的な技術というだけでなく、日本女子が世界の頂点に立つための重要な鍵でもあります。
 改めて述べるまでもなく、日本女子の最大の目標は「打倒・中国」です。その中国選手のほとんどが粘着性の裏ソフトラバーを使っていますが、粘着性裏ソフトラバーは摩擦力が高い半面、球離れが遅いという特徴があるので、ドライブなどのボールに回転をかける技術では威力を発揮しますが、スマッシュのようにボールをはじくような技術には適していません。
 したがって、中国選手にとって難しいスマッシュをプレーのバリエーションとして身に付ければ、日本女子は中国を一気に追い抜き、世界をリードする可能性があるのです。

 次回は、女子シングルスで上位に進出した選手たちの評価についてお話しします。

(取材=猪瀬健治)

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