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強化のフロントライン43 
2020年全日本卓球 
宇田幸矢の勝因②

〜宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策〜
 日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く強化のフロントライン
 今回も、前回に引き続き、2020年全日本卓球選手権大会男子シングルスで優勝した宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園)の勝因について話していただいた。

「体力が上がれば技量が上がる」を見事に証明した宇田幸矢

宇田幸矢は強打の迫力と安定性が際立っていた


 今回も、2020年全日本卓球選手権大会(以下、全日本)男子シングルスで優勝した宇田幸矢(JOCエリートアカデミー/大原学園)についてお話しします。
 前回は、自主性を養ったことが宇田の優勝の背景にあると述べました。今回は、もう少し具体的な勝因について言及したいと思います。

 宇田の持ち味は、リスクを恐れず、どんな場面でも果敢に強打を打ち込んでいくアグレッシブな(積極的な)プレーですが、今回の全日本では、その長所が存分に発揮されていました。
 これまでの宇田は、相手が誰であろうと得点できる強打を打つ半面、ミスが多いことが課題でした。しかし、今回の全日本ではこの課題が十分にクリアされていたことは、張本智和(木下グループ)との決勝を見れば一目瞭然です。
 宇田は、持ち前の強打を連続で安定して打ち込み、ブロックの堅い張本を下しました。これまでの宇田は、続けて強打したら体勢が崩れてミスが出ていましたが、今回の全日本では4本、5本と連続強打してもミスが出ませんでした。加えて、強打を連続して打つと打球点が徐々に落ちてしまうものなのですが、今大会の宇田は、強打の回数を重ねても打球点が落ちないどころか、打つたびに位置が前になり、打球点が早くなるという驚きのプレーを見せてくれました。

 宇田の強打が安定した理由は、ずばり「体力が向上した」ためです。
 宇田は高校3年生になって身長が伸びて体格がよくなり、これまで継続的に行ってきたトレーニングの成果が目に見えて表れるようになりました。体幹が強くなり、両サイドへ激しく素早くステップしても簡単には体勢が崩れなくなったことにより、強打の安定性が増しました。
 卓球に限らず、スポーツ全般に言えることですが、「体力が上がるほど技量も上がる」ものです。このことを、宇田は身をもって証明してくれました。

 宇田の事例は、多くの選手にとっても参考になると思います。
 強くなろうとしても、ボールを打つ練習だけでは限界があります。宇田が示したように、技量とは、体力が上がるほど、それに伴って必然と上がるものです。
 強くなろうと日々頑張っている選手は、ぜひこのことを念頭に置いていただき、打球練習に専念するだけでなく、継続的な体力トレーニングを行うことを心掛けてください。

優勝するイメージを明確に持って臨めたことが勝因

アグレッシブなプレーとは対照的に、冷静な所作が光っていた宇田幸矢


 私が思う宇田の勝因は、体力向上のほかにもう一つあります。
 それは、「イメージができていた」ということです。
 イメージとは抽象的な表現ですが、もう少し噛み砕くと「大舞台で優勝するイメージができていた」と言い換えることができるでしょう。

 宇田は幼少の頃から父と二人三脚で、当時の全日本や世界卓球の試合映像を毎日見ながら、将来の全日本や世界卓球のチャンピオンを目指してイメージトレーニングを行ってきたそうです。
 全日本における宇田は、リードしてもされても焦らず落ち着いてプレーに専念できていましたが、単に勢いで勝ち上がっただけでは、決勝の大舞台に初めて立って、あれほど冷静にプレーできるものではありません。
 宇田の地に足を着けた試合態度やプレーぶりは、彼が、小さい頃からトップ選手たちの試合を見続けて培ってきたイメージをそのまま実践しているからだと、私には見受けられました。

 宇田は「自分はこうすれば全日本で優勝できる」というイメージをしっかり持ちつつ、今回の全日本までの一年間、自ら積極的に動いて練習に励み、技術や体力を磨きました。
 そうして、長年培ってきたイメージにプレーが追い付いたからこそ、宇田は、実力や経験で差があったはずの張本を堂々と打ち破ることができたのだと、私なりに分析しています。

取材=猪瀬健治

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