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「卓球は血と魂だ」 第三章 三 中国と対等に並ぼう

第三章 卓球の炎をかかげて

三 中国と対等に並ぼう

 香川県高瀬町で開催されている松崎杯大会は、今年で二〇周年。これを記念して中国からジュニア選手団を招待したが、中国は男女とも技術の差を示し、研修の成果は大きかった。さる四月一日、その中国ジュニア選手団の希望でバタフライ・ラブ見学に来社された、丘鐘恵団長さんらと約五時間卓球技術論で交歓した。

 丘さんは一九六一年世界選手権北京大会の女子チャンピオン。現在中国卓球協会副会長で雑誌編集をかね用具開発や科学的研究部門のリーダー。人柄も明朗で率直、おせじも少なく質問に答えていただいた。「現在、中国の卓球選手の戦型の割合は三七%がペン式速攻型。二〇%がシェークの速攻型(一部ペン式)、二八~三三%がドライブ型(ペン式も約三分の一)。これを合計するとペンとシェークの割合はおよそ五〇対五〇。大体この割合で選手を育成していくのが中国の方針です」「今回来日してみても同じ考え方ですが、日本の長所はフォアハンドとフットワークが良いこと。が、バック側が弱い。これはグリップの関係がありますね」「日本のように固い握り方とか、裏面の指を伸ばしたり、指を広げたりするやり方は中国ではやらせません。手首、ヒジ、指の動きの自由がきかなくなるからです。ラケットはなるべく楽に握ります」「日本でも中国式グリップをテストケースとして一部のジュニア選手にやらせてみたらいかが」日本式グリップを中国でもテストケースとしてやらせてみる気はないか、とたずねたが、「それはやらせません」の回答だった。

 荘則棟、李富栄、徐寅生三選手の中で誰が一番強かったのか、と質問したところ「荘が一番でしょう。彼はフォアもバックも平均して強かった」。その時代と郭や李の現在はどちらが実力が上か、に対しては「総合して現在の方が上と思う。なぜなら昔は相手の技術が単調だった。現在は相手が強くなり、技術も多様になった」「中国では指導者は自分のやり方を押しつけることはしない。保守的にならないよう気をつけている。それは新しい技術と個性を育てるために大切」という。将来観も明快。「一九五〇年代は日本の時代、六〇年代は荘則棟らの時代、七〇~八〇年代は複雑高度化の時代」という。「一九八〇年代の選手は、まずフォア、バックに弱点がないこと、次に速い攻撃に対して強く、変化(回転)に対して強くなければならぬ、そしてパワー…」。

 そこで、ノビサドは全種目中国? と問うてみた。「さあ、三つか四つでしょう(笑)。女子関係は良いと思う。女子で中国に続くのは朝鮮と韓国。その次に日本とユーゴ、スウェーデンなど。男子は中国とハンガリー。次にチェコ、スウェーデン、日本、ユーゴ、英国などでしょうか」。相互研究の話になった。「中国の卓球もこれまでは体験的指導だったが、科学的指導が不足している。今後この面で協力してほしい」と申し入れがあった。「このたび中国で卓球世界という本を季刊することになった。創刊号には日本の卓球指導誌に掲載された“中国との差どうする”という記事をのせました。これはとても良い記事で、このとおりやれば中国に勝てます」。おや、それは私が書いたものですね、と答えると、「あ、そうですか。卓球レポート一一月号の炎の記事です」で大笑い。

 さて、日本の卓球に何が必要か。世界一の立派なピラミッドだが頂点がない日本。このままでは中国に追いつけない。
(卓球レポート一九八一年六月号)

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