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「卓球は血と魂だ」 第四章 九 世界東京大会後、日本の課題

九 世界東京大会後、日本の課題

 昭和五十八年の世界選手権東京大会はいくつかの成果をあげて閉幕した。選手強化や大会運営に尽力された方々に深甚な感謝と敬意を捧げるものである。私達日本の卓球関係者は、あらかじめ予期された通りの日本選手諸君の奮闘の結果を、しっかりと認識し分析し、次の世界大会や五年後のオリンピック卓球初参加に備え、直ちに行動を起さねばならない、と思う。

 前回のノビサド大会で全種目を制覇した中国は今回ユーゴの奮闘で男子複を失って六種目となった。選手の質も高く、量も多い中国が圧倒的な強味を見せた点では前回通りだが、三十六才の欧州の模範生シュルベクの奮戦は大会の花だった。大会のあと彼が云った言葉を一つ紹介しよう。「僕は最後の血の一滴まで戦かうんです」。また、ベルチック監督のシュルベク評を紹介しよう。「彼はベリー・ディンジャラス・ダブルスプレイヤーです。彼は誰かと組んだ複ではいつも強い。常に摂生し、努力する本当に立派な選手です」。

 反面、男女シングルスのベスト8に欧州から一人も残らなかったことは欧州指導者に強いショックを残した。それに対し、日本、韓国、朝鮮の奮闘は何ヵ所かで中国の心胆を寒からしめたが、その一点から今後の中国対策を出発させなければなるまい。

 日本選手団は全力をつくした。現在の力ではこの成績で満足せねばならない、と思うが、これは情ないことだ。しかし、男子の斉藤、女子の新保の活躍は欧州やアジアの指導者に強い印象を与えた。特に二十才の斉藤には未来がある。彼の情熱とパワーが今一歩前進したら、次の世界選手権を狙える。そして十八才の韓国の梁英子が三人の中国選手を破って堂々と決勝に進出したように、日本の十代も奮起し、斉藤に続いてもらいたい。

 技術面においてまず感じることは、ラケットの両面異質ラバーの選手が一段と大活躍したことだ。その上にサービスの技術が進み、しかも、ドタン、バタンと足音をならして心理戦を展開する選手がふえたことが問題となっている。代表的な選手は中国の蔡振華だ、と人々は云う。ベスト十六に入る所で蔡はゲームオールの8-10とシ―ミラー(米)にリードを奪われていた。そこでバタンと足音を鳴らしてトラブルを起し、十分間休憩したことが有利となり、逆転した。

 この種の問題は一つや二つでない。こうした現状から新たに国際ルールの改正が行われた。来年一月以降。公認の国際競技会(国内は従来通り)では、ラケットの両面は異色となる。また今年七月からサービスに三つの規制が強化された。打球前はラケットハンドは常に台より高く保持しなければならない。打球は体の後方は不可。体と台との間で打球しなければならない。サービスの時にバタンと足音を出したら直ちに失点する、ことになった。

 これで次の世界大会は若干のプレー改善にはなろうが依然として中国の優位は動くまい。二年前、中国に二ヵ月滞在した欧州女子の名花フリーゼコープ(オランダ)は「私が見た時、中国選手たちは朝八時から十二時まで、五万個のボールを使ってサービスの猛練習をしていた」と云った。

 この話を半分に割引したとしても大変だ。両面異質ラバーの活用訓練を極限まで追求し、サービス訓練を徹底的に訓練することは、現行ルールで勝つためには最も正しい優先訓練事項である。中国には二千人のプロコーチがいる、と日本から中国を訪問した人達が云う。選手も多い。選手もプロなのである。

 だから日本は負けるんだ、とは私は云いたくないが、日本の問題は指導者はプロに負けない人が必要なのだ。また、数人で世界を争う男女団体戦に出場する人達は、最高の訓練環境を持たせたいものである。

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