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「作戦あれこれ」第37回 レシーブ強打はバウンドの頂点をとらえよ、ストップレシーブは必修技術、対スウェーデン戦から

 私が、レシーブのとき強打していく作戦をとって失敗した試合で今でも忘れられないのは'74年の5月に第1回世界4強リーグ戦(日本、中国、スウェーデン、ユーゴ)のスウェーデン戦で新人のドライブマン・ビクストロムに敗れた一戦である。このときの日本チームは、ユーゴ、中国をともに5対3で破っており絶好の優勝チャンスだった。このときの私の心境は'73年のサラエボで行なわれた世界選手権で、団体3位という日本にとって不名誉な成績に終わっていただけに、何としても優勝したい一心だった。
 ビクストロムとは、このとき1番で対戦した。スウェーデンには、世界2位のヨハンソン、'71年の名古屋大会で優勝しているベンクソンの強豪2人がいるので、日本が勝つにはビクストロムから3勝しなければむずかしくビクストロム戦は絶対に負けられなかった。この試合、私はドライブの引き合いに持ち込めば絶対に勝てると判断し、レシーブでの作戦はロングサービスはドライブで攻める。ショートサービスは鋭く払ってレシーブするのを主体とし、ロング戦に持ち込むという戦法で臨んだ。だが試合は、新人ビクストロムのショートサービスがコートから1バウンドで出るか出ないかの巧妙なサービスだったため、私はインパクトの直前ドライブレシーブで攻めるか、払ってレシーブをするか迷ってしまい、頂点からボール1個か1個半くらい落ちたところをとらえてレシーブしてしまった。しかもいつものはじいて払うレシーブでなく、ひっかける威力のないレシーブと角度で押すだけのレシーブしかできなかった。そのために、ビクストロムに鋭いドライブで先に攻められ、守りに追い込まれて、レシーブのときになるとラリーの主導権を奪われ2対1で大事な試合を落としてしまった。このショックで私は自信をなくし、次のベンクソン戦にも負け日本は5対1で敗れた。その結果、勝率の差で日本は一挙に3位に転落...。「もっとうまく頂点をとらえてレシーブしたら...」と非常に悔いが残る大会となった。
 逆に、強気で頂点を払ってレシーブして成功したのが'67年ストックホルムで行なわれた世界選手権のときだ。準決勝リーグの最終戦で、大接戦の末にソ連を倒してAリーグで全勝し決勝進出を決めたその夜、翌日の朝鮮との決勝に備えてのミーティングで木村興治プレイイングコーチから「明日の決勝戦は、レシーブからメチャクチャに動き、積極的に攻めよ。若さを思い切りぶつけよ」という内容の話があった。このとき私は「ヨーシ、明日の決勝戦はレシーブから思い切り動いて積極的に闘うぞ」と決心をした。決勝戦は、夕刻の7時開始だった。私は2番、4番、7番に出場。このときチーム世界一を決める大事な試合で大変固くなったが、ミーティングであった木村プレイイングコーチの言葉を思い出し、ショートサービスを出されたときは、思い切り前に踏み込み確実にボールの頂点をとらえて、鋭くはじくスピードのあるレシーブで攻めた。ロングサービスを出されたときも、思い切り動いてバウンドの頂点をとらえてレシーブからいきなり威力のあるドライブで攻めたので、得意のラリー戦に持ち込め、2番で両ハンドの攻撃がうまい鄭良雄選手、3対3で迎えた7番で、強豪・朴信一選手を破り、日本の団体優勝に役立つことができた。
 このように、レシーブから強打するときバウンドの頂点をとらえると、威力のある良いレシーブができるが、バウンドの頂点をはずすとどうしてもひっかけるか、角度で押すレシーブ、またはツッツキなどの威力のないレシーブしかできず相手にやすやすと3球目攻撃され勝ちにくい。特にレシーブから強打するときは、バウンドの頂点をとらえることが大切だ。
 また、ストックホルム世界選手権のときを振り返ってみると、頂点をとらえたレシーブには次のような多くの利点があった。
 1.ボールをしっかり見て打てたし、ボールをからだにしっかり引きつけて打てたので、レシーブミスが非常に少なかった
 2.フォアハンドでレシーブする場合は左肩、バックハンドでレシーブするときは頂点をとらえようと右肩がしっかり入り踏み込んで打てたことからボールにスピードがあったし緩急もつけられ、相手の3球目攻撃のタイミングを狂わすことができた。
 3.しっかり踏み込み、十分な態勢でボールを落とさずにレシーブできたことから、レシーブ後のもどりが早くでき4球目の攻守がやりやすかった。
 4.レシーブからフォアハンド強打ができたために、その他のプレイに余裕ができ、試合に勢いがあった。
 5.レシーブになっても自信があったことから、サービスのときに余裕を持って攻撃できた。
 6.5本の内、1、2本レシーブでノータッチを取り得点できた。
...など、このような多くの利点があった。また、無駄なプレイをしないですんだので1日に8~10試合したがあまり疲れなかった。このことが、この大会のシングルス優勝の1つの大きな原因になったといえる。
 レシーブするときは、できるかぎりバウンドの頂点をとらえて返すことを考えてやろう。

 ストップレシーブは近代卓球の必修技術
 (対ベンクソン戦の敗戦から)


 ストップレシーブは、4球目攻撃に大変結びつけやすく、ドライブマンにも速攻型にもカットマンにも大切な技術だ。
 先に述べた世界4強リーグのスウェーデン戦、4番でベンクソンと対戦したときに、このことを強く感じた。私は短く止めるレシーブができなかったために、ベンクソンに対しても払うレシーブを主体とし、得意のドライブに結びつける作戦で臨んだ。しかし、世界の一流相手の場合、よほど払うレシーブがうまくできなければ相手の3球目攻撃を封じることはできるものではない。特にベンクソンのように左利きでショートサービスに変化があり、フォアへ鋭いドライブ性ロングサービスを持っている選手だと、コースが読みづらく、払うレシーブを常にうまく決めるのは非常にむずかしい。苦戦は必至だった。
 予想どおり、試合はベンクソンのうまいショートサービスと、ロングサービスの使い分けに、払うレシーブが決らず流すレシーブをしたり、ツッツキに変化をつけたり、ナックル性のレシーブで返すなど他にもいろいろと工夫をして相手の3球目攻撃を封じようとしたが、回転の変化とスピードの変化による左右のゆさぶりだけでは対等のラリーに持ち込むことができず、先手を取られて鋭いドライブでバックを攻められ、2ゲーム目をジュースに持ち込んだのが精一杯でストレート負けした。
 私はこの試合のことを今でもはっきり覚えているが、試合中「ストップレシーブができたらな」とどれほど思ったかわからない。対するベンクソンは鋭く払うレシーブこそないが、ストップレシーブがうまく4球目攻撃に結びつけていた。
 日本の中では、鍵本選手(早大―荻村商事)がうまかった。鍵本選手は、スマッシュ以外のフォアハンドはそれほど威力がなかったが、ショートサービスを出されると両サイドに短くストップレシーブし、そこからの4球目攻撃、6球目攻撃が非常にうまかった。それゆえドライブマンには滅法強く、大学2年の東日本学生選手権と大学3年のときの全日本学生選手権で共に決勝戦で私を破り優勝。大学3年生のときは決勝戦で伊藤選手(タマス、'69年世界チャンピオン)を破り、東日本学生に2連勝し、"ドライブマンキラーの鍵本"と呼ばれるほどだった。
 このように、ストップレシーブとそこからの4球目攻撃がうまいと、ドライブによる3球目攻撃をしようとする選手には、抜群の強さを発揮するものである。特に現在はドライブ全盛時代なので、ストップレシーブを身につけ相手を前後に攻めることが絶対に必要になってきた。カットマンの場合でも、短く止めるストップレシーブがあると4球目攻撃がしやすくなるのでマスターすべきだ。ストップレシーブから4球目攻撃するシステム練習も勝つための必修練習といえる。

 ストップレシーブのコツはバウンドの上がり際を短いスイングで打球すること

 ストップレシーブは、このように重要な技術である。鍵本選手、ベンクソン選手のストップレシーブのやり方を紹介しよう。
 両選手のやり方は、①レシーブのとき、相手の動きを見ていてサービスを出す前に「このショートサービスのときはこう返す。こちらにきたショートサービスのときはこう返す」と決めてかかっている。このときすでに4球目攻撃の方法を決めていることが多い→相手がショートサービスを出した瞬間、バウンドする位置へ素早く動く→そしてどちらかの足を軸足にして、バウンドの直後をとらえネット際にぽとりと落とすように短いスイングでレシーブ→次に相手の動きを見ながら、素早く次の攻撃態勢にもどる。というふうにしていた。
 ストップレシーブが下手な選手は、反対に頂点後をとらえてストップしたり、押しが強く、しかも長いスイングで返している。また軸足がないためにうまくからだに力を入れたり抜いたりすることができず失敗している。または、私と同じように払うレシーブをしようしようとしすげているとできない。
 つまり、良いストップレシーブをするのに大切なことは、相手がサービスを出す前に、すでにどのようなレシーブが効くか情勢判断をし払ってレシーブするか、流すか、ストップレシーブするかだいたい決めてレシーブすることが必要だ。そして決めたならば、よほどのことがないかぎり実行してしまうこと。そうすれば、無駄な動きや無駄な力が入らないのでいいストップレシーブができやすい。特にストップレシーブは、バウンド直後をとらえなければならないだけに、無駄な動きや力があってはいけない。レシーブの前に、はっきりストップレシーブすると決めてかかることが大事だ。

 レシーブのときは無欲で闘え

 それから、レシーブのときもう1つさらに大事なことがある。それは、気持ちの持ち方である。気持ちの持ち方が悪ければいくらいい技術を持っていても、固くなったり無理なレシーブをしてしまい得点できない。
 「レシーブのときに5本全部とろう」とか「負けられない」と考えると、必ずといってよいぐらい守ろうという気持ちが起こり、そのために固くなって相手のコートに返すだけの消極的なレシーブになってしまい、その後の動きも同じように固くなりいいレシーブからの4球目攻撃などできず負けてしまう。
 一番良いのは、作戦はしっかり立てるが無欲で闘うことだ。もし、無欲では集中したいいレシーブができない選手は、5本のうち2本取ればいいという考えで臨むことだ。そうすれば、1、2本ミスしても負担にならず思い切り動け思い切ったレシーブができる。また、その後のラリーもプレッシャーがないのでいいレシーブからの4球目攻撃ができ、3本、4本、ときには5本全部取れることもある。私の場合も、そのどちらかの気持ちで臨んだ。だからサービスを持ったときよりレシーブのときの方が気がラクで、レシーブの方が好きだったしレシーブのときに4本、5本と連続得点をすることも多かった。
 しかし、長年にわたってやってきていえることは、レシーブのときいくら無欲で臨もうとか、5本の内2本だけ得点すればいいと思っても、レシーブ練習をしっかりやったときでなければ必ず焦りが出て心底そう思えず思い切ってできないものだ。良いレシーブとそこからの4球目攻撃をしっかりやろうとしたら、やはり十二分にレシーブ練習とレシーブからの4球目攻撃の練習をやることだ。
 私の経験では、レシーブ練習はすべての練習―とくにフットワークとネットプレイとフォーム作り―に役立った。それで、レシーブ練習をしっかりやって試合に臨んだときはそれに比例して成績も良かった。大会前だけでなく、ふだんのときからしっかりレシーブ練習をしてほしい。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1978年8月号に掲載されたものです。

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