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「作戦あれこれ」第54回 高性能ラバーの上手な使い方(最終回)

 高性能ラバーの上手な使い方は、これまで3回にわたって述べてきたが、今回技術で云い残したことを1つと、試合のときに特に気をつけなければならないことを述べて終わりとする。

 強打を受ける守りの練習をたくさんやろう

 私は、一昨年の秋ごろから2本のラケット(コントロール系ラバー貼りと高性能ラバー貼り)を併用している。また、高性能ラバーを使用する一流プレイヤーがたくさん出場した平壌世界大会やバンコクで行なわれたアジア競技大会などの大試合を見ている。そして強く感じていることは、高性能ラバーを使用している選手は守りも上手にならなければいけないということだ。
 平壌世界大会のとき、目の前で男子シングルスの決勝戦を見た。小野選手が郭躍華選手を倒して優勝できたのは、鋭い攻撃力だけでなく守りも良く攻守のバランスがとれていたからだった。郭躍華選手がバーミンガム世界大会に続いて2位になったのも、パワードライブに加え攻められたときの壁のようなブロックショートがあり、やはり攻守のバランスがとれていたからだった。
 この攻守のバランスが、片寄っていると大きな大会を制覇することはできない。攻撃がうまい選手であっても、攻撃しているときに「攻め返されないように」とか「一気に攻めこんで決めなければ...」というプレッシャーがかかる。逆に攻撃が下手で守りの上手な選手は、守りのときに得点しようとプレッシャーがかかるために力んだりして、攻撃力があってもいい攻撃ができないし、強い守りがあってもいい守りができなくなってしまう。
 しかし、攻守のバランスがとれている選手は、攻撃するときでも守りになったときでも「反撃されても守る自信がある」また守っていても攻撃力のある自信から「チャンスがくるまでしっかり粘るぞ」と、しっかりした技術の自信からボールを打つことだけに集中できる。その気持ちのゆとりからボールをからだに正確にひきつけることができ、威力のあるボールが打てるようになるし、狙ったところへもコントロールしやすくボールの威力がグンと増す。サービスからの3球目のときやレシーブのとき、スマッシュを打つときにも気持ちにゆとりができとても勝負強い選手になれる。
 しかし、高性能ラバーは、軽くあてただけでもポーンと弾むラバーの特徴から、攻撃するときより守るときの方がむずかしいといえる。したがって高性能ラバーを使っている選手達は守りの練習を多くやる必要がある。

 強打をショートブロックとロビングで守る練習を多くやろう

 守りを強化する練習はいろいろあるが、その中で特に効果をあげられると思われるものを選んで紹介しよう。
 ①ショートを連続強打で打ち込んでもらい、それをショートで止める。このときのコツは、一球一球足を動かしてボールをからだの正面でとらえること。手先だけで返そうとするといつまでたっても上達しないので注意して欲しい。ショートの下手な人や強打する方が下手な場合は、箱の中にたくさんボールを入れ左手にボールを持ってボールを強く打ってやるとよい。
 ②①のショートブロックがある程度できるようになったら、ミドルやフォアにも強く打ってもらい、それをショートでブロックする。この練習をする場合はボールをたくさん使ってやるとよい。このときも、できるだけからだでブロックするようにすると早くマスターできる。それから、どんなむずかしいコースに飛んできても絶対にあきらめず食いついていくと覚えるのが早い。それと、常に正確な角度を出すように心がけよう。そして、この練習をするときバックサイドからだけでなく、フォアサイドからもミドルからも打ってもらうようにしよう。
 ③次は台から50㎝ぐらいの前陣でロングを続け、4本目か5本目に強打をしてもらう。それを同じ位置でブロックする。これは前陣でブロックする自信をつけるための練習だ。できるだけコートから離れないようにしよう。両クロスともやるとよい。1メートルぐらい離れた位置からもやろう。
 ④ドライブマンは、後陣でプレイすることがよくありロビングを使うことも多い。高いロビングを上げてそれをコートから離れてロビングで粘る練習もしよう。このとき、ボールをからだにしっかりひきつけ真上に向かって強いスピンをかけて返すことがコツ。これをフォアハンドとバックハンド両方やる。
 ⑤カットマンが守備練習をするときと同様の方法をカットをロビングにおきかえてやる。つまり、ロビングをストップしてもらい前に出て相手が打ちやすいように高く上げそれを強く打ってもらい再びロビングで返すのを繰り返す。または実戦的にスマッシュとストップを混ぜてもらいそれを粘り強くしのぐ。
 この5つが代表的な守備練習である。守備からの反撃の練習もやっておけばなおよい。
 私は、1日に30~40分の守備練習をしたが、守備練習をやったおかげでさきほどあげた以外に勇猛心や忍耐心、ボディワーク、反射神経等がよくなり試合でどれだけ役に立ったかわからないほどだ。高性能ラバーを使っている選手は大事な練習であるのでしっかり練習をしてほしい。

 自信を持ってやろう

 さて次は試合のときの気持ちの持ち方について話そう。
 私は今でもときどき高性能ラバー貼りのラケットで試合をしているが、高性能ラバーを使用する人は自信を持ってやることがとくに大切だと思う。
 高性能ラバーは、コントロール系のラバーと比べるとよく弾む。そこで、威力で連続得点もできるが少し集中力が落ちると続けてミスすることも多く、自信を失いやすい。とくに気が小さい人はそうだ。そこで自信を失う人と強気に攻めて盛り返す人がいる。自信を失ってしまうと、どうしても消極的になり足の動きや腕の動きが鈍くなって、ミートや決断力が悪くなるものだ。そのために、レシーブミスや3球目攻撃のミスが多くなる。そしてよけいにツッツキなどの安全策が増えますます自分のプレイができなくなってしまう。つい先日行なわれた東京選手権を見ていても、自信のない人はこのようなプレイにかたよってしまっていた。力があっても早い回で負けて涙をのんでいた。
 逆に常に自信を持ってプレイすれば自然と積極的になり、決断力や判断力も冴えて無駄なく素早く動ける。また、ボールを打つことに集中できるため、ミートが鋭くなり高性能ラバーの特徴が存分に出せる。勝ちやすい。
 したがって、得点したときはもちろんのこと凡ミスが続けて出たときも自信をもってプレイするように心がけることだ。だからミスを重ねたとき、すぐにプレイするのではなく少し間を取って気を落ち着けてからはじめることが大切だ。高性能ラバーを使っている強い選手は、このことを必ず守ってやっている。それから、自信を持ってやろうとするときにミスや試合に負けることを恐れていたらプレッシャーがかかって自信がつきにくいので、ミスや試合に負けることを恐れないように考えてプレイすることも大切なことだ。

 油断大敵

 さきほども述べたように、高性能ラバーは充実しているときは威力のあるボールで連続得点できる、反面ちょっと気をゆるめると威力が落ち連続得点されやすい。そなわち、いくら大量にリードしたときでも相手が自分より弱いときでも絶対に油断をしてはならない。
 私は、現役時代に好調のときよく試合前も試合中も「勝てるかもしれないが、負けるかもしれない」という言葉を思い出し、大量リードしたときや弱い相手と対戦したときでも油断をしないよう心がけた。大きくリードされたときには「ばん回できるかもしれない」と思い、最後まで絶対にあきらめないエネルギーとした。逆転して勝つ試合は多かったが、逆転されて負ける試合が少なかったゆえんと思う。
 高性能ラバーを使っている人は、気をゆるめるとからだ全体の動きが鈍くなって威力がガクッと落ちるので絶対に油断をしないようにしよう。もし、気をゆるめるのであればラリーが終わってから始まるまでの間にするか、相手の集中力が落ちたときに自分も落とす。だが、相手の集中力より落とすと得点されやすくなるので相手の集中力よりやや上回ったかたちで落とすこと。また、ある程度のレベルにいった人しかわからないかもしれないが、相手のレベルと集中力から実力を判断しそれに負けない集中力で戦うことも大切なことで忘れてはならない。
 
 自分の主戦武器を忘れないようにプレイしよう

 試合のとき、それが一番得意でない技術であっても、一番効いている技術を使うことは大切だ。つまり、最初からドライブを使って攻めるのがよいときはドライブを使う。ショートでゆさぶってからドライブで攻めるのがよいときは、ショートからのドライブを使う。表ソフトの速攻選手とやるときは、ツッツキをドライブで攻めさせたのをドライブで攻め返すと効く場合もある。このように、自分はドライブが得意であってもドライブでいきなり攻めるよりも1本目はショートやツッツキで返した方がいい場合もある。
 小野選手が郭躍華選手を破ったときは、台上のボールを軽く払って相手にドライブをかけさせそれをショートでゆさぶって次のボールをドライブで攻めたのがよかった。
 ところが、中、高校生の多くは試合になると冷静さを失って自分の技術の中で一番効いているのは何かということなんか全然忘れて、一番得点されている技術を一生懸命使ってやっている人が多くいる。これでは、相手に思いどおりに攻められてとても勝ち目はない。
 したがって、試合は常に冷静になって相手に一番効果的な攻め方はどういうラリー展開のときかよく考えてプレイすることだ。高性能ラバーを使用している人は一般的に、レシーブから積極的に払ってドライブに持ち込む戦法、このときドライブで攻められないときは1本ショートで攻めておいて次をドライブで攻める戦法、ネット際に短く止めて次をドライブで攻める戦法、サービスを持ったときの3球目も同じように攻める戦法をとるとよい。反対に、ツッツキやショートが多くなったときは負けるパターンのときが多い。しっかり考えて攻めよう。そして「この攻め方がいい」と思ったら、勇気を持って実行しよう。

 ウォーミングアップはコントロール系のラバーを使う人の2倍やろう

 最後になったが、試合のときのウォーミングアップはとても大切だ。ふつうの量ではいけない。コントロール系のラバーの人がふつう7~10分やるとしたらその2倍の15~20分ぐらいはやる必要があると思う。
 それは、すでに何度も述べているとおり高性能ラバーはボールにスピードが出ることから自分のコートに速く返ってくる。角度や力の入れ具合いが違うと飛距離もコントロール系のラバーより差が大きい。
 このために、必然的に以前に多くの人が使っていたコントロール系のラバーよりも速いフットワークと柔軟性が要求される。それと、集中力、気力、忍耐心なども高くなければならない。それには、少しのウォーミングアップでは役にたたない。長時間の試合に耐えられるよう、柔軟体操、ダッシュ、スマッシュの素振り、シャドープレイ、早い横振り、180度回転などを時間をかけてやることだ。平壌世界大会のとき、高島選手や小野選手や阿部選手は、試合前はもちろん、早朝トレーニングをやって集中力や敏しょう性を養っていた。それが全員好調を維持する力となり小野選手の優勝が生まれたように思う。
 また、ウォーミングアップをしっかりやると緊張感や固さがほぐれるし試合で大切な闘志もものすごくわいてくるものだ。ケガも少ない。
 私は現役時代、試合の1本目から全力で振り切れるようにウォーミングアップをしたが、高性能ラバーを使っている人はとくにこの心構えが大切だと思う。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1980年5月号に掲載されたものです。

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