1. 卓球レポート Top
  2. その他
  3. 卓球レポートアーカイブ
  4. 「作戦あれこれ」長谷川信彦
  5. 「作戦あれこれ」第128回 前半戦の戦い方③こうすれば実力伯仲のカットに勝てる

「作戦あれこれ」第128回 前半戦の戦い方③こうすれば実力伯仲のカットに勝てる

 前回、速攻型のO君に対し、後半戦で逆転勝ちを収めたドライブマンのD君。前半戦の「レシーブ作戦」「サービス作戦」「スマッシュとストレートコースの使い方」がうまくいった会心の勝利だった。
 そのD君。今回はカットマンC君との対戦である。
 どのように前半戦を戦ったら、強豪カットマンのC君に勝てるか?その戦い方を、D君といっしょに考えてみよう。

カットマンに勝つための前半戦の戦い方

打倒、C君!


 C君は異質型のカットマン。フォア面裏ソフト、バック面イボ高ラバーで戦うが、反転プレーも多い。カットは変化が激しく、攻撃力もロングマン並み。ただし、守備範囲はそう広くなく凡ミスも出る。
 D君はおなじみのドライブマン。ドライブロングサービスに威力があり、得意のフォアクロスのドライブは威力も安定性もある。が、カット打ちの細かく動くフットワークや、ドライブの粘り強さはまだもう一歩。ストップやスマッシュの使い方にも課題がある。
 C君、D君の力はほぼ互角。対外成績では、プレーに変化のあるC君のほうがやや上である。
 さあ、この二人が地区予選の通過をかけて、代表決定戦で対戦した。「打倒C君!」を目指すD君はどのように戦ったらよいのだろうか!?

大局観を持て

 さて、ドライブマンがカットマンとの試合で「作戦だけで勝つ」ことはまず不可能である。作戦が悪くてアッサリ負けることはままある。が、勝つ時は、粘り、がんばり、集中力のすべてを出し、なおかつ接戦で勝つのが普通である。なぜなら、作戦が良くても、同レベルのカットマンに対してはどうしてもミスがでるからである。
 そのため、ドライブマンとしては、前半戦の作戦をたてる前に、試合全体の流れを考え、精神面も含めた大局観を持たなくてはならない。正しい大局観を持てば、試合中に自分のプレーの善し悪しが判断でき、自信をもってプレーすることができるようになる。
 では、D君がC君に勝つにはどのような大局観が必要なのだろうか?
 それは「前半~中盤戦で凡ミスをなくして失点を減らしていき、最後、カットに追い込んで打ち抜くようにする」ことである。そして、そのためには、いかにしてカット打ちの調子を出して決定球を打てるようにするか? いかにして相手の変化になれるか? いかにして反撃を防ぎ、相手に「カットでしか勝てない」と思わせるラリー展開にするか? という「前半戦の戦い方」が重要になってくる。

「いなしてやろう」はダメ

 さあ、試合開始。サーバーはD君で開始された。
 出足のサービスは得意のドライブロングサービスでもフォア前への変化サービスでも良い。大切なのは得意のサービスを思い切って出し、レシーブが甘くなるところを得意の3球目攻撃で攻めることである。カットマンはまだ調子がでていないため、比較的簡単に点がとれる。
 このように、簡単に点のとれる時はとってしまった方がいい。リードすれば余裕がうまれ、自分のプレーがやりやすい。ところが、攻撃選手の中には「まず様子見だ」とばかり、出足は何でもないロングサービスをポコンポコンと出し、ラリーにもちこもうとする選手がいる。これでは、カットマンに調子を出させてやっているようなもので、作戦に厳しさがない。強いカットマン相手に1本を争うような場合は致命傷となる。
 さて、D君は得意のドライブロングサービスとフォア前の変化サービスでレシーブを甘くさせ、得意の3球目ドライブを決めて3-0とリードした。
 ここでD君は、試合運び全体を考えるべきだ。
 もしD君が「試合は長丁場。今のサービスからの速攻パターンはいつでも点をとれる。山場までとっておこう。この調子なら、相手をうまくいなしてつないでおき、要所で今の3球目をすれば軽く勝てるな」と考えたのなら、負け試合だ。自分と同じレベルのカットマンに「いなして勝つ」ことなどできるはずがない。
 「いなしてやろう」と考えることでD君の足は止まり、ドライブに凡ミスが出る。しかも、ツッツキが甘くなり、C君得意の反撃で狙い打ちされる。あわてて3球目の速攻をかけても、あせりからミスが出たり、調子のでたC君にしのがれてしまう。
 このように、同レベルのカットマン相手に「いなしてやろう」と考えることは、大間違いなのである。

ドライブで粘る

 では、どうするか?
 ここでD君は「そろそろ相手も速攻になれ、ラリーになるはずだ。ここは、正確にドライブで粘ってミスをへらし、チャンスをつくってスマッシュで得点しよう」と考えるのがよい。速攻と遅攻を混ぜるのである。
 粘るためのチェックポイントとしては
①カット打ちは動け
 ロングマンと対戦する時と同じスピードで、一番打ちやすい位置まで早く動き、打球後は次球に備えすぐもどる。どんな時も足の動きを止めないようにする
②大振りをするな
 粘るドライブは、打球ポイントまでボールをひきつけ腰を使って、小さく鋭くドライブをかけて粘る。腕だけでブンブンふり回し、「ドライブで得点してやろう」と思って粘るとミスが多くでる
③変化を見分ける
 カットマンの打球時の手首の動きをよく見る。ラバーの性格をよく知る。ツッツキの変化が分かればカットの変化もわかるはず。カット打ちのミスは、動き方の不足やタイミングのズレなどが多い。変化を見分けたら、多少のミスは気にせず、自信をもってカットを打つ...等が、カットを打って粘るコツである。

前半戦でスマッシュを使え

 さて、このようにして粘ることができれば基本的には成功である(もし、打って粘れなければ2ゲーム目からはツッツキも使って粘る作戦もある)。
 そして、ここからがカットを打ち抜くための作戦である。
 D君のエースボールはフォアクロスの強ドライブである。立ち上がりはこのボールで連続得点した。が、ドライブばかりではひろわれるようになるし、無理な強ドライブをすると自分のフォームを崩すおそれがある。
 そこで、いくらドライブが得意でも、打つボールをしぼっておいて(ドライブ後の切れないカット、とか、イボ高面の単調な切れたカット、等を)、前半戦からスマッシュしておくことである。そうすれば、自分はスマッシュを使うクセがつき、後半戦の勝負どころでもスマッシュを使うことができる。
 このスマッシュのコースは、立ち上がりは自分の打ちやすいコース(主にクロス)でよい。そして相手も自分も調子がでてきたら状況にあわせ、ストレートや相手のミドルにも打つようにする。

攻撃を防ぐ

 さて、このようにD君にじっくり腰をすえられ、正攻法でカットを攻略されたのではたまらない。C君は「攻撃」をしかけてくることだろう。
 では、D君としては、どんな戦い方でC君の攻撃を防ぐようにしたらよいのだろうか?
 まず、D君としては「相手の攻撃をしのいでカットに追い込む作戦」と「相手に攻撃させない作戦」の2つの作戦を頭に入れておかなくてはならない。目的はどちらも「攻めていくと不利だ」とC君に思わせ、カットオンリーに追い込んで、打ち抜いてしまうことにある。
[相手に攻めさせてカットに追い込む作戦]
 相手の攻めをしのいでカットに追い込む方法は色々あるが、代表的な方法としては、
①相手のフォア前サービスをバックにツッツく
②相手の3球目ドライブをフォアへしのぐ
③飛びついたカットマンのドライブをバックにしのぐ
④カットマンにバックカットさせる
 また相手のフォアサービスに対しては
①バックへの投げ上げサービスをフォアへツッツく
②フォアからドライブをかけさせ、早いタイミングのフォアロングかショートでバックへしのぐ
③相手にバックカットさせる
 といった方法が一般的である。この後は、じっくり粘ってもよく、攻撃の後のカットが甘くなるところを、スマッシュ、強ドライブで攻めていってもよい。大切なのは、ツッツキを切って、サイド深くを狙ってレシーブし、相手ドライブを逃げずにコースをついてゆさぶることである。切ったツッツキに対してはループが多くなる。角度さえ押さえれば処理しやすいし、ゆさぶったボールに対してのカットマンの連続攻撃はミスが出る。
[相手に攻撃させない作戦]
 もうひとつの「相手に攻撃させない作戦」の代表的なレシーブとしては払うレシーブがある。
 これは、相手が攻撃が得意であったり、一発の攻撃に威力がある場合に多く使われる。払う場合は、レシーブの時「相手はロングマンだ」と思って集中して払うことだ。フォア前サービスを、バックへツッツくような感じからフォアへパッと払うと、いくら攻撃力のあるカットマンでも、回り込んだらノータッチで抜ける。そうするとバックへツッツいてレシーブしても回り込まれなくなる。このように、前半戦で払うレシーブを使っておけば後半戦でのストップやツッツキレシーブがまた生きる。余裕のある前半戦に、払えるサービスは払っておき、調子をだすことが大切である。
 同様に、台から2バウンド目が出るようなサービスはレシーブからドライブで攻め込むようにしよう。

 このような展開で試合を運べば、攻撃力のあるカットマンのC君といえども思うような攻撃ができず、後半戦では調子をあげたD君がC君をカットに追い込んで打ち抜き、きっと代表の座を獲得することだろう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1987年2月号に掲載されたものです。

Recommendおすすめ記事

■その他の新着記事

■その他のカテゴリ一覧

Rankingランキング

■その他の人気記事

Page Top