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「作戦あれこれ」第136回 こうすればバック攻めに負けない

 この1年で、レシーブ、ドライブ処理、バック系技術...が上達し、念願の全国大会出場も果たしたペンドライブマンのD君。秋の県大会でも優勝を狙ったが、何と2回戦で伏兵のイボ高攻撃型I君に敗れてしまった。
 残念無念のD君。「調子が出なかった」「I君のようなタイプはうちの学校にいない」と悔んでみても後の祭り。I君のイボ高ショートにまったくボールが合わず、裏+イボ高の反転攻撃にひっかき回され、完敗だった。悔しさでいっぱいのD君。次の対戦でI君のようなイボ高攻撃型に勝つにはどうしたらよいのだろうか?

 性質を知り、慣れる

 イボ高攻撃型に勝つためには、作戦の前に、イボ高ラバーの性質を知り、イボ高ラバーのボールを実際に打って慣れておかなくてはならない。
1.イボ高ラバーの性質
 イボ高ラバーはこちらのかけた回転がそのまま残って返ってくる。
 ドライブやスマッシュをショート→強い下回転
 ロングのつなぎボールをショート→弱い下回転
 ツッツキをプッシュ→前進回転
 切ったサービスをツッツキ→弱い前進回転
 横回転サービスをショート→横回転が残り曲がる
...といった回転で返ってくる。このことが分かっていないと、相手のツッツキをツッツいて高く浮かせてしまったり、相手のイボ高ショートをネットの下のほうに落としてしまうことになる。まず、イボ高ラバーの性質を頭で理解しておくことである。
2.イボ高選手がいない場合の練習法
 当然のことであるが、イボ高攻撃型に強くなるには、イボ高攻撃型と数多く練習することである。
 しかし、D君のようにチームにイボ高攻撃型のいないチームも多いことだろう。そんな時は、イボ高をはったラケットをつくり、練習の時、順番にそのラケットで練習相手をする。自分がイボ高を使うことで、イボ高の長所、短所がよりよく分かる。あまり難しい練習は無理でも、3球目攻撃の練習、イボ高ショートをドライブで粘る練習...などは十分行なえるはずだ。
 また、基本的な練習を一人でやりたい時は、卓球台の向こうに板をたてかけ、イボ高ラバーをはる(板の木地のままでもほぼ同じ球質になる)。その板にドライブ性のロングサービスを出し、カット性のイボ高ショートを3球目ドライブで狙う練習をする。またはロングやショートで粘る練習をする。
 こういった基本的なイボ高ラバーに対する練習、イボ高ラバーに対する理解ができていれば、レベルの低いイボ高攻撃型に不覚をとることはない。しかし、強いイボ高攻撃型に勝つためには、さらに良い作戦をたてイボ高攻撃選手と練習しておくことが必要になる。

 対イボ高攻撃型作戦

 さて、試合でイボ高攻撃型と対戦した時に、基本となる作戦をあげてみよう。
①.ロングサービスを多く使う
 小さな変化サービスはイボ高攻撃型に回転を利用され前後左右にゆさぶられやすい。慣れている選手はともかく、基本的には大きいドライブロングサービスを出し、レシーブを大きく返させてドライブ攻撃していく。大きい変化サービスをショートさせて狙う作戦もよい。(サービスからの攻め方については後述)
②.フォアを攻める
 一般にイボ高攻撃型はショートがうまい。それに対してフォア側は強打もあるかわりにミスが多く、守りが弱い。攻める時も相手に打たせる時もフォアへボールを多く回すようにする。よくきく作戦としては、ツッツいてイボ高攻撃型にバッククロスにプッシュさせ、前進回転のボールを相手のフォアへプッシュ、イボ高攻撃型が合わせてくるナックル性ボールを強ドライブで決める作戦がある。
③.ストレートボールで攻める
 ショートで守る選手に対してはストレートボールがきく。特にバックストレートに打つとよく決まる。
④.相手を動かす
 イボ高攻撃型はショートや3球目攻撃は安定しているが、回転のかけづらいラバーの関係上、動きながらのプレーにミスが多い。フォアへ動かした後であればバックショートにもミスがでる。
⑤.両サイドへ攻める
 ミドルの弱いイボ高攻撃型もいるが、手の届きづらい両サイドを苦手とするイボ高攻撃型が多い。
⑥.攻めに緩急をつける
 イボ高攻撃型は、リズム、回転の変化に弱い。ゆるいループと速いドライブ...というように、回転、スピードに強弱をつけミスをさそう。
⑦.1本でも多くしのぐ
 イボ高の強打は、ナックル性でボールが直線的に飛ぶため、連続強打にミスがでやすい。ネットミスに注意して1本でも多くしのぐようにする。
⑧コートから離れない
 イボ高のボールは伸びない。強く打たれたようでも前でしのげるケースが多い。短いボールに対して凡ミスが出ないように、コートの近くでプレーする。(相手が裏ソフトに持ち変えて攻めてきた時は台からの距離をとるようにする)
⑨.しっかり動く
 フォア主戦の選手は、山なりの軽ドライブでイボ高のショートを粘り、機をみてフォアへ攻める。ロングボールを打つのが苦手なイボ高攻撃型に対してはこの作戦で勝てる。イボ高攻撃型の前後左右へのゆさぶりに対し、しっかり動く。
⑩.あまり無理して回り込まない
 しっかり動くことは大切だが、山なりのロングで時間をかせいで粘ろうとすると、裏ソフトに持ち変えて攻撃してくるイボ高攻撃型もいる。また逆をつくのがうまいイボ高攻撃型もいる。こんな相手に対しては無理してバック側に回り込まない。バック側はツッツキ、ショート、バックロングで粘り、機をみて回り込む。
⑪.攻撃的なレシーブをする
 裏ソフト面で出すことの多いイボ高攻撃型のサービスに対し、つい安全にレシーブしがちだが、これはイボ高攻撃型の思うつぼ。プッシュ、ツッツキ...に変化をつけて攻められる。払って、ナックル(下回転)ショートをドライブで攻める。低く切ってツッツき、打たせてショートでゆさぶる...等の作戦を多くする。イボ高攻撃型は低いツッツきをスマッシュするのは苦手。つないでくる軽打をプッシュで攻め返す。

 サービスからの攻め

 イボ高攻撃型と対戦した時の作戦を色々紹介したが、特に重要な、最も攻め込みやすい、サービスからの3球目攻撃について詳しく紹介しよう。
ア.ドライブロングサービスをバックに出した場合
 イボ高攻撃型のカット性ショートが浮いてきたらスマッシュ、狙っているコースにきたらストレートに強ドライブで攻める。カット性ショートの浅い、深いにあわせ前後にしっかり動く。そして、ツッツきを攻めるような気持ちで思い切りドライブ攻撃する。
 相手のイボ高ショートがバックへ低く沈み、フォアハンドで回り込めない時はバック系技術でつなぐ。
 バックロング(ドライブ)でつなげる選手は、カット性ショートをバック軽打、ドライブでつなぎ、チャンスボールをバックスマッシュ、強ドライブで狙う。
 バック側はショートを使う選手は、横回転を入れたショートで連続してつなぎ、回り込んで攻める。または、深くツッツいて、上回転になるイボ高ショートをプッシュで押し返す。次のカット性ショートに対してはドライブで攻める、または再びツッツきでつなぐ。
イ.ドライブロングサービスをフォアに出した場合
 イボ高攻撃型としては、威力のあるロングサービスをフォアに出されるのが一番恐い。
 強打に対してはバックへつなぎ、動いた後の甘くなったカット性ショートを狙う。
 合わせてきたカット性ボールは、これを待っていて、前に踏み込んで3球目ドライブで狙う
ウ.大きい変化サービスから攻める場合
 ドライブロングサービスからの攻めばかりだと、イボ高攻撃型のレシーブが低く安定し、攻めあぐむ。そこで下回転、斜め下回転、ナックル性...等の変化ロングサービスでイボ高攻撃型のレシーブを乱すようにする。
 バックへの下回転系サービスに対して、イボ高攻撃型はプッシュでレシーブしてくる。自分のサービス回転が残っていることに注意して3球目ドライブで攻める。
 フォアへ変化ロングサービスを出した後は、軽打をプッシュとドライブで狙い打ちしていく。
エ.フォア前へのショートサービス
 イボ高攻撃型が大きいサービスを警戒した時はショートサービスがきく。コースはプッシュされにくいフォア前。3球目が攻めやすいように切ったふりをして切らないナックル性サービスがよい。
 やっと返してくるレシーブをフォアドライブで狙う。場合によっては、プッシュで押して次球を狙う。

 イボ高の練習相手のいないD君だが、恐れず作戦どおりプレーすれば、試合が進むにつれて相手の球質にも慣れ、きっと競り勝てることだろう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1987年11月号に掲載されたものです。

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