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「作戦あれこれ」第144回 ループと速いドライブの使い分け

 シェークドライブ型のS君は高校1年生。フォアドライブ主戦の粘り強いタイプである。
 先週の日曜日。高校に入って初めての地区大会にS君は出場した。
 1回戦不戦勝のS君は2回戦でY君と対戦。切ったサービスから一生懸命回り込んでドライブをかけたが、Y君にフォアへゆさぶられ、飛びついてドライブをかけるとバックへ回され、終始運動会のように走り回されて完敗を喫した。
 「なんでドライブが効かなかったんだろう?」「中学時代は通用したのに...」と納得のいかないS君。
 高校で勝ち抜くのは、かなり大変なようである。

 ドライブを使い分ける

 S君の敗因はドライブにある。パワーのないS君がドライブで点をとろうと速いドライブばかりかけたため、単調な、相手にとってとりやすいドライブになってしまったのである。ブロックのうまいY君が、試合の後半は全くミスしなかったのもうなずける。
 ドライブマンはドライブの使い分けが大切である。パワーのある選手でもドライブの使い分けができないと勝てなくなる。ましてS君のようにパワーのない選手にとってはその必要性が高い。1種類のドライブではとても勝てない。
 では、どんな種類のドライブが必要なのか?
 高いレベルを目指すには、①速いドライブ ②強い回転のループドライブ ③ループに見えてかかっていないドライブ ④横回転を入れたドライブ の4種類が必要である。この4種類のドライブが使い分けられるようになればドライブの得点率は飛躍的にあがる。
 とはいえ、いきなりどのドライブも使い分けることは難しい。一足飛びにすべてやろうと無理をすると試合では自滅につながる。そこでまず、野球でいえば直球とカーブのような、基本となる速いドライブとループドライブの使い分けをしっかり覚えることである。

 バックスイングを同じに

 速いドライブとループドライブの使い分けで大切なのは、相手にどちらのドライブがくるか分からせないことである。
 速いドライブをかける時はいかにも打つぞという感じでバックスイングを後ろにとり、ループの時はバックスイングを下げ、バックスイングが完全に違ってしまうのでは、たとえドライブの種類が違ってもあまり効果はない。自分は変化をつけているつもりでも、相手にはバックスイングでドライブの種類が分かってしまうのだからうまく処理されてしまう。
 バックスイングは常に速いドライブが打てるように時間の許すかぎり大きくとり、そこからループドライブをかける。処理する身になれば、速いドライブを予想して足が止まるところに猛烈な回転のループがくるのだから処理しづらいことこの上ない。
 ドライブをきかすコツは、どんなドライブをかける時も、バックスイング、打球直前までのフォームは同じにすることである。大きな鏡のある選手は、素振りで自分のフォームが同じに見えるかどうかチェックしてみるとよい。

 予想の逆をつく

 速いドライブとループドライブのフォームが似ても、試合になると、チャンスボールは速いドライブ、難しいボールはループドライブと、かけるドライブが決まってしまう選手がいる。
 これではやはり相手に待たれてしまう。
 相手に待たれないためには、どんなツッツキに対しても速いドライブとループドライブの2種類で攻められなくてはならない。そしてそのためには、どんなツッツキに対しても足を正確に動かして十分な体勢をつくって打つクセをつけることと、切れたツッツキに対しても速いドライブで攻められるパワー、打法を身につけることである。
 それができるようになれば、試合で、速いドライブを打てる十分な体勢の時にループドライブを混ぜ、その逆に難しいツッツキで相手がループを予想する時に速いドライブを使う。そうすれば相手の逆をついて得点しやすい。相手の心理を読み、予想の逆をついてドライブできるようになれば試合運びにグンと余裕ができる。

 コースを使い分ける

 バックスイング同様、コースを読まれてもドライブはきかない。フォア、バック、ミドル、そして深いドライブと浅いドライブを使い分けることである。
 ループをきかせるためには、相手の足を止める必要がある。そのためには、まず速いドライブを好きなコースに打ち分けられることが必要である。
 やさしいツッツキを送ってもらい、フォア、ミドル、バックへ、同じバックスイングから打ち分ける練習を十分にやろう。逆モーションぎみに打てればなおよい。
 実戦でレベルの高い選手は、ストレートと相手ミドルへの速いドライブを決定球としてうまく使う。相手の予測をはずしやすいからである。

 ループは浅めにかける

 このようにして速いドライブをうまく使い分けられるようになると、相手の足が止まる。ループドライブで変化をつける絶好のチャンスである。
 ループドライブは、ドライブ処理の苦手な選手には特に効果が高い。が、ループに慣れている選手には、スピードが遅く、バウンドが高いため狙い打たれるおそれがある。そのため、いかにも速いドライブをかけるかのような体勢で相手の足を止める必要がある。
 相手の足が止まった場合は、一般的にいって、サイドを切るコース、もしくはミドルへ「浅めに」かける。これがループで得点を狙う時のコツである。相手が狙っていそうな時は低いループ、相手に打つ気がない時は高めのループを使い分けるとさらに効果が高い。
 なぜ浅めにかけるかというと、自分でループ処理する場合を考えれば分かるように、深いループに対してはそのままの位置でラケット角度がでるが、浅いループに対しては踏み込みがないとラケット角度が上を向いてしまう。ループの処理練習をやり込んでいない選手は、速いドライブを予想して足が止まった時に、足が前に出ないためオーバーミスが多くなるのである。
 もちろん、相手が浅めのループを予測している時は、速いドライブ、または深いループを混ぜ、待たれないようにする。

 ループを変化させる

 ループドライブは、全力で、猛烈な回転をかけるのが基本である。そして相手にショートさせ、次球をスマッシュで狙い打つ。高校生ぐらいまではこの練習と速いドライブをかける練習を徹底してやり込むのがよい。
 しかし、それ以上のレベルの選手の場合は、ループと同じフォームから、いかにも回転をかけたふりをして、ほとんどロング同様の回転の少ない山なりのドライブをかける。ワルドナー(スウェーデン。世界2位)などはこのドライブを得意とする。ドライブ処理のうまいヨーロッパ勢同士の対戦では、速いドライブや猛烈なループドライブも読まれていればきかず、それより回転の変化で相手の読みをはずし、ラケット角度を狂わしミスを誘うプレーが効果的なケースが多い。
 上級者になったら、このナックル性ドライブや左右の横回転を混ぜたドライブに挑戦しよう。

 練習方法

 速いドライブとループドライブの使い分けを早くマスターするためには、まずツッツキに対するループドライブの練習を十分やるとよい。
 相手にツッツいてもらい、しっかり動き、ボールをよく見て、全力でボールの後ろをうすくこすり上げる。
 スイングの速さが命である。全身を使い、前に踏み込みながら、すこしジャンプするぐらいけり上げ(右ききは右足で)、インパクトの瞬間に手首を鋭く使って打つ。スイングのフィニッシュは、ボールをよく見て、後頭部の上に振り上げるようにする。顔の前に振り上げるとスピードがでて回転がかからなかったり、上体が起き上がったりしてしまいやすい。
 そして打球後、すぐニュートラル(ラリー中の基本姿勢、位置)にもどる。
 この練習を、体力に応じ、納得がいくまで毎日やり込む。バックからかけたら、フォアからかける練習もしよう。ループドライブをマスターすれば速いドライブは比較的簡単にできる。同じバックスイングから、速いドライブをかけられるように練習しよう。

 このような形で、速いドライブとループドライブを使い分けられるようになれば、パワー不足のS君といえどもドライブでの得点はグンとふえる。その上、ドライブ一辺倒にならずスマッシュを積極的に使うよう心がければ将来は明るい。
 もちろん、練習熱心なS君のこと、ドライブのパワーをつけるため、トレーニングにも積極的に取り組んでいくことだろう。



筆者紹介 長谷川信彦
hase.jpg1947年3月5日-2005年11月7日
1965年に史上最年少の18歳9カ月で全日本選手権大会男子シングルス優勝。1967年世界選手権ストックホルム大会では初出場で3冠(男子団体・男子 シングルス・混合ダブルス)に輝いた。男子団体に3回連続優勝。伊藤繁雄、河野満とともに1960〜70年代の日本の黄金時代を支えた。
運動能力が決して優れていたわけではなかった長谷川は、そのコンプレックスをバネに想像を絶する猛練習を行って世界一になった「努力の天才」である。
人差し指がバック面の中央付近にくる「1本差し」と呼ばれる独特のグリップから放つ"ジェットドライブ"や、ロビングからのカウンターバックハンドスマッシュなど、絵に描いたようなスーパープレーで観衆を魅了した。
本稿は卓球レポート1988年6月号に掲載されたものです。

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