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わたしの練習⑮水上茂 古人の求めんとしたものを求めて

 なぜ卓球競技をおこなうのか?卓球を愛好しているからだ。勝敗は競技の結果であって、目的ではない。よい相手を得て、お互いが全心全霊を打ちこんで、よりよい卓球試合を創造する。そこに興味があり、目的がある。
 2度と同じ試合はできない。

 ◇なぜ卓球をやるのか?

 自己に忠実な卓球生活が長くなれば長くなるほど喜びがふえる。よい試合をもったという喜びの記憶―それを得るには、種々の苦労が必要である。自分自身と全く同じに喜びや悲しみを感じられるのは、この世で自分だけしかない。すなわち、卓球選手は孤独を覚悟しなければならない。この覚悟がきまれば、自分を理解してくれない他人にも親しみがもてるし、自分を理解しようとする他人には感謝の気持ちがおこる。
 卓球に対して、深い興味があって、上達への強い意志力があり、努力、節制、研究があれば、上達し、よい試合を創造することができる。よい試合ができたときは本当に気が晴れ晴れとし、高い山の頂上へ登ったような爽快感をおぼえる。
「“卓球をやってきてよかった”そう思う瞬間を味わいたくて、多くのものを捨ててつづけてきた卓球…」とある人が卓球競技について語っておられたが、まさにそのとおり。愛好するから、それをつづけてきてよかったと思う瞬間を味わいたいから、卓球をおこなう。
 そして、地位とか名声、金銭、および自分自身を真に理解してくれる人達以外の声援とは別個に、自らを楽しむことのできる人間になるために、今後もひたすら練習苦行の道を歩んで行きたいと思う。

 ◇納得できるまで基本をくり返し練習

 古きをたずねて、新しきを知る。古人が苦しみ、そして歩んだ道をさかのぼり、自分の求めんとする根本=基本を知る。そして、納得のできるまで、確信をもって使えるようになるまで、あきることなく毎日毎日、基本の練習をくり返す。こうして基本打法、すなわち最も安定性のある打法を身につけ、一歩一歩次の応用の段階へ進めるように努力をする。基本については門屋(東レ監督)のおやじさんは特にうるさく、たびたび稽古を見に来てくれる。
 一人一人の求める卓球がちがうように、それを得るために背負う自分の負担も、それなりに他人とちがう。比較的早く納得できるものもあれば、そうでないものもある。
 稽古をするその時その時が苦しいし、また楽しい。朝から晩まで、時には徹夜で稽古をすることもあるし、比較的早く眠ることもある。ただ、自分自身が“常に戦場に置かれている”ことは、どこで何をしていても、無意識に自分の体が知っているようである。それと共に、コッペパンをかじりつつ稽古をし、疲れればコートの下で毛布にくるまって眠るような、それに似たことを何度も経験しておりながら、いまだにそうしたことにあこがれをもっている自分でもある。

 ◇トレーニングの主体はランニング

 日々の練習とあわせて、考えながらトレーニングもおこなう。多く走る日もあれば、そうでない日もある。ランニングは嫌いでないし、それほど負担には思わないので、トレーニングをする場合の種目には、ランニングが入っている場合が多い。短距離走もやるし、長距離走もやる。別々にやる時もあれば、長距離走の中に短距離走を組み入れる時もある。また、サーキット・トレーニングを今年からやり始めた。ランニングを除くと、サーキット・トレーニングをかなり重要視している。このほか、柔軟体操に関心をはらっているが、その他の卓球に直接関係のないラケットの素振りなどは、ほとんどやっていない。そして教えられたことの中で、必要なことは実行に移している。

 ◇バーグマンのように一枚ラバーで…

 伝え聞く名手バーグマン選手(編集部注:一枚ラバーからくり出す守備範囲の広い正確なカットを主戦とし、世界選手権男子シングルスに4回優勝した英国の卓球選手。現在はプロ卓球選手として活躍中)の卓球を、練習苦行を通して知りたいと思う。リチャード・バーグマン選手―その名が自分の頭から消えないかぎり、彼の求めんとしたものを求めつづけたい。そして、バーグマン選手がそうであるように、自分も一枚ラバーで自分なりの卓球を創造したい。だから、もうおそらく他のラバーへ変わることはないと思う(現在の心境に達するまでには、いろいろなラバーを使ったこともある)。一枚ラバーが好きで、自分自身が納得できるのだから、それでよいと思っている。

 ◇「よくやった」といわれる選手に

 卓球競技と親しみ、やっとどうにか人並みにそのスタートラインに立つことができたいま、一流選手をめざして他の多くのプレーヤーともども、練習苦行の道を“逃避(とうひ)”することなく、歩み励んでいきたいと思っている。そして、自分に喜びの記憶がふえるよう、自分が現役を去ったとき古人から「よくやった」といわれる選手になれるよう、頑張りたい。
 最後に、長い間、自分を教え導き、共に苦しみ喜んでくださった幾多の人々と父母に対して、限りない感謝をささげると共に、今後ともよろしくご指導くださることをお願いして、むすびとする。

みずかみ しげる
京都福知山高出、中大4年、21歳。
一枚ラバーのシェーク選手。守備範囲の広いカットを主戦とし、フォア、バックの攻撃もうまい。全国選抜大会(2月)優勝、東京硬式選手権(3月)優勝。

(1964年6月号掲載)

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