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【特別企画】林昀儒の神業チキータ 
①フォア前に来た下回転サービスに対するスピードチキータ

 幼少より「中華台北の至宝」として注目され、今や世界のトップ選手としての地位を確固たるものにした林昀儒。以前、卓球レポートでは林昀儒のサービスに注目したが、今回の特別企画では彼のチキータにスポットを当てたい。
 現代卓球ではトップ選手のほぼ全員がチキータを使うが、その中でも林昀儒のチキータの得点力は抜きん出ている。「あいつのチキータはマジでやばい」。そうトップ選手たちが異口同音におそれる神業(かみわざ)のようなスピードが速くて鋭いチキータのコツを、林昀儒本人のコメントを交えながら紹介していこう。
 第1回は、フォア前に来た下回転サービスに対するスピードチキータを取り上げる。
※本文の技術解説は左利きプレーヤーをモデルにしています

林昀儒が自身の神業チキータのコツを解説!

体の正面でボールを捉えられる位置まで動くことが先決

--林昀儒選手にとってチキータはどのような技術ですか?

林昀儒(以下、林) チキータは私の中でとても重要で、戦術面において欠かせない技術です。

--チキータを覚えたのはいつ頃ですか?

 チキータを使い始めたのは、確か中学1、2年生の頃だったと思います。張継科(中国/元五輪金メダリスト)にもチキータを教えたことがある中国の山東省出身のコーチから教わりました。特別な工夫をした覚えはありませんが、コーチと相談しながら練習をたくさん繰り返してチキータの質を磨きました。

--最近のあなたのチキータは威力が増していると感じます。理由は思い当たりますか?

 バックハンドの練習をすごく行っているので、その影響かもしれません。あとは、インパクト(打球の瞬間)でボールをラケットに当てる位置を気にしています。

--チキータにスピードを出すためには、ボールをラケットのどのあたりで捉えますか?

 あまり詳しくは分かりません(笑)。ですが、ラケットの少し上の方(先端あたり)で打球すると良いと思います。安定させたいときは、ラケットの真ん中あたりで打ちます。

--分かりました。それでは、フォア前に来た下回転サービスに対して、まずクロス(右利きの相手のバック側)にスピードチキータをするポイントを教えてください。

 はい。良いチキータをするためには、まず足の位置が大切です。具体的には、体の正面でボールを捉えられる位置まで足を動かします。この動きをより正確にするため、チキータした後は必ずレシーブを構える位置まで戻ることを心掛けて練習しています。

フォア前に来た下回転サービスに対してクロスにスピードチキータするときの動き



 林昀儒が話すように、チキータの質を高めるためには、体の正面でボールを捉えられる位置まで動くことが先決になる。体の正面でボールを捉えることで打球時に力を入れやすくなり、また、目測も正確になるからだ。
 フォア前へ動く際は床すれすれに足を運ぶことを意識しよう。そうすると体の上下動が抑えられるので、足を素早くスムーズに運ぶことができる。
 フォア前に素早く動いたら、上体の前傾を深め、左足前(右利きの選手は右足前)のスタンス(足の構え)で打球準備することがポイントだ。

手首ではなく、前腕を速く振るイメージでスイング

--スイングのポイントを教えてください。

 スイングは、手首をたくさん使っているように見えると思いますが、実際のところ、自分では手首を使っているイメージはあまりないんです。チキータするときは、打球の瞬間に前腕(ひじから先)を速く振るイメージでスイングしています。

--手首をかなり使っているように見えますが、そうではないんですね。

 はい。手首は最後に少しだけ使って打球をコントールしている感じです。

--打球時はどの指に力を入れますか?

 打球するときは親指と人さし指の2本でラケットをしっかり持って力を入れます。

フォア前に来た下回転サービスに対するクロスへのスピードチキータ



 チキータするときは、手首を利かせるというよりは、前腕全体を使ってラケットを振っているという林昀儒。スイングでは、特にフォロースルー(打球後のラケットの動き)に注目してほしい。林昀儒は打球後、ラケットを横方向へ振り抜くようにフォロースルーを取っているが(写真6〜8)、このようにフォロースルーを取ると打球の軌道が山なりになるのを抑えることができるので、必然とチキータの軌道が低くなり、スピードも速くなる。
「チキータのスピードが遅い」「チキータすると軌道が高くなってしまう」といった悩みを抱えている選手は、林昀儒が話すように前腕を速く振って回転をしっかりかけつつ、ラケットを横方向へ振り抜くようにフォロースルーを取ることを意識してみよう。
 また、打球に回転をかけられるよう、ひじを体から離して高く上げ、手首をしっかりひねったバックスイングも参考にしてほしい(写真4)。

ストレートへ打つときは、回転を強めにかけて弧線をつくる

--続いて、フォア前に来た下回転サービスをストレート(右利きの相手のフォア側)にスピードチキータするときに心掛けているポイントを教えてください。

 クロスへ打つときと大きくは変わりませんが、ストレートは距離が短いのでオーバーミスを防ぐために、回転を少し強めにかけて弧線をつくるようにしています。

--林昀儒選手がフォア前に来たサービスをチキータするときは、ストレートとクロスのどちらへ打つことが多いですか?

 相手が右利きか左利きかによりますが、基本的に相手のバック側へ打つことが多いです。ストレートを狙うと得点率が高くなる半面、どうしてもこちらのバック側が大きく空いてしまうので、ストレートにチキータした後は次のボールに対して素早く準備するよう心掛けています。

フォア前に来た下回転サービスに対するストレートへのスピードチキータ



 クロスに比べて距離が短いストレートへスピードチキータする場合は、林昀儒が言うように弧線をつくることを意識することがポイントになる。このポイントを踏まえ、ストレートへスピードチキータするときは、クロスへ打つときよりも回転を強くかける意識を持って打球しよう。このとき、フォロースルーでラケットが上に行ってしまうと打球が山なりになってスピードが出ない。回転はかけつつも、フォロースルーは横方向へ取るようにスイングすることを心掛けよう。
 次回は、バック前に来た下回転サービスに対してスピードチキータするときのポイントを林昀儒が紹介してくれる。

↓動画はこちら

(取材/まとめ=卓球レポート)

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