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世界ろう者卓球選手権大会、7月8日から中華台北で開催
全日本王者の灘光晋太郎(株式会社タマス)が出場

 2023年7月8日~20日まで中華台北の台北市で開催される第4回世界ろう者卓球選手権大会に、全日本王者の灘光晋太郎(株式会社タマス)が出場する。

世界ろう者選手権大会に出場する灘光晋太郎(中央)
激励した佐藤亮(左、ラバー生産担当取締役)と大澤卓子(右、代表取締役社長)

株式会社タマス(バタフライ)のラバー生産部に所属
 灘光は2017年に株式会社タマス(バタフライ)に入社し、ラバー生産部に所属している。今回、初めて世界ろう者卓球選手権大会への出場するということで、株式会社タマス代表取締役社長の大澤卓子とラバー生産担当取締役の佐藤亮から激励を受けた。

 大澤はバタフライで働くろう者の歴史に触れ、灘光の入社を振り返る。
「最初にろう者の社員として入社したのは、1970年の幾島さん(幾島政幸氏、元デフリンピック金メダリスト)が最初で、その時代に幾島さんも含めて4名が入社されたと聞いています。その後しばらく入社がなかったのですが、10年ほど前から新たに数名が加わってくれて、現在は4名のろう者が勤務しています。ろう者の社員は見る仕事というのが得意で、みなさんコツコツとまじめに働いてくれています。それで、ろう者の社員を増やそうと考えていろいろと回っていたところ、灘光さんが入社を希望してくれたので、仲間に加わってもらいました」
 また、世界ろう者卓球選手権大会に向けて「日本一になり、新しく自覚が出て、自分は強くならなければいけない、これが最後のチャンスかもしれないという思いでやってきたということですから、その気持ちを忘れずに大会でしっかり頑張ってもらいたいと思います」とエールを送った。

 灘光が入社した時の直属の上司で、現在はラバー生産の責任者として現場を預かる佐藤は「灘光さんはラバー加工課のラバー仕上係で、主に後半工程のラバーが出来上がるところを中心に担当しています。接着など5つほどの工程をマスターしていて、幅広く安定して作業を務めることができます。灘光さんは部署では若手の方で、明るく陽気なキャラクターなので、先輩社員に褒められたり、時には叱られたりしています」と職場でのエピソードを紹介した。

 今年で入社6年目を迎える灘光は「中学生から卓球をやってきて、バタフライは有名な卓球メーカーなので、応募してみたいと思いました。入社試験を受けてみてびっくりしたのは、最初の説明会で手話通訳が準備されていたことです。私からは依頼していないのに、こういうふうに配慮してもらえる会社なのだと感じて、入社したいという思いが固まりました。実際に働いてみて感じたのは、現場はやはり品質のいい物を作らなければいけないので、そこのこだわりがとても強く、すごく細かいところまで指導してもらいました。私は少し大ざっぱなところがあるのですが、仕事中は細かく進めることができるようになってきました」と語る。
 また、日本一になったことについては「大学生の頃から日本代表に手が届きそうなポジションにいて、周りは若い時から優勝していて、自分だけ勝てていないという状況でした。それで、昨年29歳になって焦りとかが出てきましたが、そういう中で優勝できたことは今までの卓球人生の中で一番うれしいことでした。優勝した時の実感はあまりなかったのですが、出社して同僚や先輩から"おめでとう"と言葉をもらった時に、自分のしたことの大きさを実感しました」と喜びを口にした。

大澤はバタフライとろう者の歴史や灘光の入社エピソードを、手話を交えて紹介

上司として灘光を入社時から指導・育成した佐藤(左)は、働きぶりを評価

灘光は全日本チャンピオンとして世界ろう者選手権大会への抱負を語った

主にラバー仕上係の業務を担当し、多くの工程をマスター

モノづくりのこだわりを受け継ぎ、精魂込めてラバー作りに携わる


全国ろうあ者卓球選手権大会で初優勝
 灘光は、2023年2月に行われた第45回全国ろうあ者卓球選手権大会の男子シングルスで初優勝し、今回の世界ろう者卓球選手権大会の代表に選ばれた。
 自身も選手として全日本卓球への出場経験を持つ佐藤は「数年前に灘光さんに頼まれてベンチコーチを務めたのですが、私の見立てではトップの4選手ぐらいのところに灘光さんが入り込んでいるけど、ちょっと差があるように感じました。灘光さんは凡ミスが多いので、その課題に気を付けるようにアドバイスしました。その時は4位に終わりましたが、ノーチャンスではない、頑張ればチャンピオンになれるからと励ましました。それで、その後に道場(バタフライ・テック5階のバタフライ所沢卓球道場)で練習する時には、仕事よりも厳しく指導したのを覚えています」と当時のエピソードを語った。

 灘光は、そこでの変化について「それまではバックハンドが強くて、フォアに課題があるというのはわかっていたのですが、その部分は多少曖昧にしてしまっていました。しかし、自分の状況を考えたときに、年齢的にも逃げ場がないなと思って、課題をしっかり克服するということをやりました。練習は自分の得意なことをやる方が楽しいのですが、優勝する前は苦手なことばかりやるのでつまらない練習が増えたと思います。今の男子は実力が近い選手が5人ぐらいいて、4人しか代表に選ばれないので一人が落ちてしまいます。自分は弱いところが多かったので、落とされやすいかなと自覚していました。ですので、いつまでも同じ負け方を繰り返さないで、直していこうと練習に取り組んでいきました」と課題克服に取り組んだ日々を振り返った。

佐藤からの助言を生かして、灘光が努力の成果を見せた


第4回世界ろう者卓球選手権大会、7月8日から中華台北で開催
 初めて世界ろう者卓球選手権大会に出場する灘光は「今大会は4種目に出場し、どの種目でもいいのでよりいい色のメダルを目指して頑張っていきたいです。世界の上位に食い込んでくる選手は私たちよりも実力が上なので、ひとりで戦うよりもダブルスや団体戦の方がチャンスがあると思っています」とメダルへの意気込みを語った。

 大会名称: 第4回世界ろう者卓球選手権大会(日本ろうあ者卓球協会ホームページへ)
 大会日程: 2023年7月8日~20日
 開催地: 中華台北・台北市
 主催: 国際ろう者スポーツ委員会
 主管: 中華台北ろう者スポーツ協会
 競技種目: 7種目(男子団体、女子団体、男子シングルス、女子シングルス、 男子ダブルス、女子ダブルス、混合ダブルス)

得意のバックハンドに磨きをかけて、世界に挑む!

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