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卓球 ヨーロッパチャンピオンズリーグ 
張本智和デビュー戦勝利の裏にオフチャロフの献身サポート

 12月4日、ノイウルムのホームマッチでECL2022-2023のデビュー戦を勝利で飾った張本智和(IMG)。この1戦を現地で取材したスポーツライター高樹ミナ氏のレポートをお届けする。

 12月4日に開かれたヨーロッパチャンピオンズリーグ(ECL)2022-2023シーズン第2ステージ。そのグループCでノイウルム(ドイツ)からECLデビューを果たした張本智和がスポルティング(ポルトガル)から2勝を挙げ、チームの勝利に大きく貢献した。
 世界ランキング2位の座にふさわしいハイレベルなプレーでドイツの熱狂的な卓球ファンを沸かせたのもさることながら「まだまだ強くなれる」と豪語する19歳は、日本にいてはできない数々の経験を通して、さらなる成長を図ろうとしている。

世界ランキング2位のスーパースター張本のプレーにドイツの観客たちも釘づけ


 張本にとって、チームメートのオフチャロフ(ドイツ)の存在は大きい。もともと張本をノイウルムに誘ったのはオフチャロフで、その理由を「監督や首脳陣からアドバイスもあったし、僕は智和を長年知っていてお互いを信頼し合っているから、彼がより快適にプレーする手伝いをしたかったんだ」と話す。
 実際、15歳下の張本をコートの内外で気遣い自ら声をかけ、食事のときも隣席に座ってドイツ語のメニューを説明するなど、2人の様子はまるで年の離れた兄弟のようだ。もちろん練習でも一緒に汗を流し、試合ではチームを指揮するマズノフ監督と張本をベンチで見守った。

 気になるゲーム間のアドバイスについては、張本が1番でチェン・ディオゴ(ポルトガル)に第1ゲームを奪われた際、「『相手はリスクを負って打っているだけだから何も変える必要はない。焦って自分から攻めたりする必要はない』と言われた」と張本。
 確かに張本は緊張を隠せず、本人も「初めてのチャンピオンズリーグの舞台で少し不慣れだった」と振り返るが、オフチャロフの言葉で気持ちが落ち着き、第2ゲームからは徐々に本来のペースを取り戻して3ゲーム連取で逆転勝利を収めた。

マズノフ監督とオフチャロフからアドバイスをもらう張本


 すると、張本からバトンを受け取った2番のオフチャロフもシルバ(ポルトガル)にストレートで勝ち、3番でツムデンコ(ウクライナ)がカルバリョ(ポルトガル)とのフルゲームを落としたものの、再び4番でコートに立った張本がシルバに付け入る隙を与えずストレートで圧勝。チームの勝利を決めた張本は、「特に2試合目はリラックスしていたので、すごく楽しめました」と笑顔で、デビュー戦をサポートしてくれたオフチャロフについてこう話した。
「これまでオフチャロフからアドバイスを受けることはなかったので、僕より十何年も長い間、世界で活躍してきた経験っていうのは本当にすごいんだなと感じました。今回、彼の考え方を結構知れたので、今度対戦するときにはこう考えているなというのが分かると思います。普段はライバルですけど、チャンピオンズリーグ中は心強い味方なので、自分が苦しいときはチームメートである彼を信じながら戦いたいと思います」

 一方、オフチャロフは張本のことを、「新しいチームでの初戦だったので少しストレスを感じたと思うけど、それは普通のこと。誰もがそうだから」とここでもやはり気遣いを見せ、「第1ゲームは相手のペースだったけど、彼は自分を落ち着かせて強さを保ち、素晴らしいプレーで第1マッチはゲームカウント3対1、第4マッチはストレートで勝った。良いスピリットをチームと観客にもたらしてくれた」とノイウルムの新しい仲間として張本を歓迎した。

2番のオフチャロフもチームの大黒柱として着実に1点を稼いだ


チームの勝利にノイウルムの観客はスタンディングオベーション


2022-2023 ECL 第2ステージ
 ノイウルム(ドイツ) 3-1 スポルティング(ポルトガル)
○張本 -4,5,4,7 チェン・ディオゴ
○オフチャロフ 8,4,4 シルバ
 ツムデンコ -9,-7,-5 カルバリョ○
○張本 3,6,3 シルバ

 また、マズノフ監督も次のように話している。
「彼にとっては初戦で特別な試合だった。第1マッチの1ゲーム目はとてもナーバスだったけど、ヨーロッパで新しいチームでの初戦だから当たり前。2ゲーム目からはプレーが良くなってチームに勝利をもたらしてくれた。私からはそれほどアドバイスをしていないけれど、いつも通りプレーすれば大丈夫だと言った。彼は高い集中力とハイレベルなプレーを見せてくれた」

 張本は引き続きドイツに滞在し、ブンデスリーガの名門クラブとして知られるボルシア・デュッセルドルフの本拠地DTTZ(ドイツ卓球センター)で調整練習をしながら、13日のジャウドヴォ(ポーランド)戦に出場する。同チームには41歳のベテラン小西海偉が所属しており、11月30日のノイウルム戦ではオフチャロフをゲームカウント3対1で破って話題になった。

 このときノイウルムは林昀儒(中華台北)が2点を取り、モーレゴード(スウェーデン)も1点を取って勝利したが、張本が初戦で勝ったスポルティングよりも手強い相手だ。そして、ジャウドヴォには張本にとって因縁の相手がいる。
「次のチームには去年の世界選手権ヒューストン大会初戦で負けたディヤスがいるので、個人的にもしっかりリベンジしたいですし、次に勝てばリーグを1位で抜けられるので全力で勝ちにいきたいです」

 新天地での未知なる経験と勝利がまた張本を強くする。

試合後のサイン会では張本のサインを求めて長蛇の列ができた


サイン会でもにこやかに会話する張本とオフチャロフ


ドイツはクリスマスシーズン。ウルムもクリスマスマーケットで賑わっている


(文・写真=高樹ミナ/スポーツライター)

元王者 水谷隼が語るECLの魅力

ヨーロッパチャンピオンズリーグは海外リーグの中でも最も権威があるといっていいリーグだが、その実情を知るファンは決して多くはないだろう。ここでは、自身もこのリーグに参戦し、豊富な試合経験、さらには優勝経験も持つ水谷隼(木下グループ)が余すところなくその魅力と見どころを教えてくれた。
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