世界卓球2025ドーハ(個人戦)が5月17日〜25日までカタールのドーハで開催される。ドーハでの開催は2004年以来2度目で、個人戦は今回が初開催。
大会7日目の5月23日(金)は女子シングルス準々決勝が行われ、日本からは伊藤美誠、早田ひな、大藤沙月、張本美和が出場し、伊藤が王芸迪(中国)を下して準決勝進出。早田、大藤、張本は敗れ、メダル獲得はならなかった。
※写真は王芸迪(中国)を下した伊藤美誠
▼女子シングルス準々決勝
伊藤美誠(日本) -6,8,6,8,9 王芸迪(中国)
陳幸同(中国) 10,6,7,9 早田ひな(日本)
孫穎莎(中国) -9,8,4,11,5 大藤沙月(日本)
王曼昱(中国) 5,8,9,5 張本美和(日本)
4試合全てが日中対決になった女子シングルス準々決勝。1番手で登場した伊藤美誠がいきなり大仕事をやってのけた。
伊藤は、2021年ヒューストン大会の準々決勝で敗れている王芸迪(中国)と対戦。第1ゲームは速攻を王芸迪の力強い両ハンドに跳ね返されて落とすが、第2ゲームから多彩なレシーブとサービスでペースを握り返す。
「1ゲーム目が終わってベンチでお母さんと『レシーブで点数が取れれば』という話をして、いろいろ試行錯誤してレシーブから点数が取れるようになり、サービスもリラックスして出せるようになった/伊藤」
多彩なサービス・レシーブに加え、「(伊藤がバック面に貼っている)表ソフトラバーのツッツキは微妙に変化するのが特徴。練習も多く積んできた」というツッツキで面白いように王芸迪のミスを誘い、伊藤が第2ゲームから一気に3ゲームを連取して勝利に王手をかける。
第5ゲームは終盤まで競り合うが、9-9で伊藤が変化サービスからの鮮やかなフォアハンドスマッシュを2連続で決めて王芸迪に勝利し、両手を高々と掲げた。
「勝った瞬間はすごく嬉しかったですし、中国人選手を倒してのメダルということで、自分の中で『よくやった!』みたいな気持ちになり、自然と涙が出てきて嬉しいです。(苦しい時期を過ごした自分にどんな声をかけたいか?という質問に対し)本当に試行錯誤して、いろいろな人と話をしたりいろいろな挑戦をしてきたんですけど、本当に頑張って頑張って我慢して頑張り続ければ、こういう結果もついてくるんだよと教えてあげたいです。
2021年ヒューストン大会のときの悔しい思いと、前回、早田選手がメダル決定戦で王芸迪選手に勝っているので、可能性があるぞと思って試合ができたことがすごく良かったと思いますし、自分の中でもすごく良い試合だったと思います。次もとにかく思い切ってやりたいな思いますし、リフレッシュした状態でいろいろなことができればいいなと思います/伊藤」
全盛期と遜色ない変幻自在の速攻で強敵を圧倒した伊藤。最強中国が「大魔王」と畏怖する強い伊藤が帰ってきた。
日中対決で伊藤が幸先よく先制し、日本が勢いづいたかに見えたが、残りの準々決勝3試合は中国に底力を見せつけられる形となった。
2番手で登場した日本女子のエース・早田ひなは前回に続くメダルを目指して陳幸同(中国)と対戦したが、ストレートの完敗。陳幸同にラリー戦に引き込まれ、徹底してミドルを起点に崩されて打開策を見いだせなかった。
「陳幸同選手は、大きい大会では初めて当たりましたが、粘りの究極みたいな選手。あの域に来ると、自分が人間でいる以上は勝てない。人間を超えないといけない。技術や精度など、いろいろな面で『怪獣』みたいな強さややりにくさを感じました。手堅いプレーをしてくるので、とにかく崩そうとしても崩れない。
全てが揃ってないと、ここで中国人選手に勝つことは厳しい。私も美誠が(準々決勝の第1試合で王芸迪に)勝ったから自分も勝てると思えたし、団体戦をやってるような感覚で美誠が1番で勝ってくれて、私が2番で勝負だって感じで臨んだんですけど、今回の自分は本当に力不足でした。でも、今後も日本の卓球界はそうやって切磋琢磨して、ライバルでありながら勇気をもらったり自信をもらったり、そういった存在になってくると思うので、そこをプラスに捉えて自分もまた表彰台に上がれるように頑張りたいと思います/早田」
第1シードで前回に続いて連覇を狙う孫穎莎(中国)に挑んだ大藤沙月も、第1ゲームを互角以上に打ち合って先制したが、第2ゲーム以降は距離感やタイミングをつかまれ、孫穎莎を脅かすまでには至らなかった。
「4ゲーム目を5-1でリードしていて、そのゲームを絶対に取らないといけなくて、そのときに『何をしても孫穎莎選手はミスしてくれないんじゃないか』という圧を感じて自分にミスが出てしまった。本当に1本を取らせてくれない感じでした。
去年は自分でもびっくりするくらい勝ってしまって、自分でもわからないくらい成長していて。でも、今年に入ってからは負けることも多くて、いろいろな経験をして世界選手権に挑みました。やっぱり、こういう大舞台は本当に別格で、調子の良い悪いではなくて気持ちの勝負だなと感じました。もっと強い覚悟を持ってこの1年間取り組んでいきたいです/大藤」
シングルスでは敗れたが、孫穎莎とは吉村真晴と組む混合ダブルス決勝で再戦するチャンスが残っている。「ミックスは全然違うので、自分たちのプレーができたら全然勝つチャンスはあると思うので、しっかり準備したい」という大藤のリベンジに期待したい。
日中対決のラストに登場した張本美和も王曼昱(中国)にストレートで敗れ、メダル獲得はならなかった。ワールドカップでは王曼昱を追い詰めた張本だったが、今回は待ちを外されて逆を突かれる場面が多く、王曼昱をワイドに揺さぶってもさらに厳しいコースに跳ね返されて万事休した。
「全体的に言うと全ての技術であまり勝てるものがなかった、というのが今日の印象です。前回試合した時に利いていたものは相手も準備しているので利かなくなっていたり、自分が前回の対戦で良くなかったところを補えていなかったので、相手は何をしても勝てる感じでした。試合をしていて解決策というか打開策が見つからなかったので、悔しいことは悔しいんですけど、この結果を受け止めてまた頑張りたいです。前回は(ワールドカップは)本当にあと1、2点の差でしたが、今日は本当に自信があったかと言われたらそうではなかったですし、1球の質の高さを感じました/張本」
女子シングルス準々決勝4試合の結果により、女子シングルス準決勝の組み合わせは以下の通りになった。
▼女子シングルス準決勝の組み合わせ
孫穎莎(中国) - 伊藤美誠(日本)
陳幸同(中国) - 王曼昱(中国)
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WTT:https://worldtabletennis.com/eventInfo?eventId=3108
(取材/まとめ=卓球レポート)




