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強化のフロントライン6 ジャパンオープンでの張本智和の評価

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~宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策~
日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。今回は、6月に行われたワールドツアー・ジャパンオープン男子シングルスで優勝した張本智和(JOCエリートアカデミー)の評価を掲載しよう。


●馬龍のデータにない「速さ」を見せた張本

 
強豪を連破して衝撃の優勝を遂げた張本


技を伏せることが、これからのテーマの1つ

 ジャパンオープンでの張本智和(JOCエリートアカデミー)のプレーは圧巻でした。ハイライトは、何といっても男子シングルス準々決勝の馬龍(中国)戦でしょう。試合前は張本が馬龍にどこまで迫るか楽しみでしたが、馬龍に勝つことまでは想像できませんでした。
 馬龍との試合は、張本の特徴である「ピッチの速さ」が存分に発揮された試合だったといえます。
 あらためて述べるまでもなく、馬龍は技術、戦術ともに世界ナンバーワンの選手です。加えて経験も豊富で、サービスやレシーブ、打球のコース取り、自身のポジショニング(位置取り)などの工夫で劣勢を盛り返す術をいくらでも持っています。しかし、男子では類を見ない張本の速さの前に、馬龍は採れる戦術がありませんでした。
 速さで分が悪い場合、女子の試合であれば台から少し距離を取ってしのぐ戦術が有効なケースもあります。しかし、張本はシニアの選手ほどではないにせよ、打球の威力は十分にあるので、不用意に台から距離を取ろうとしても打ち抜かれてしまいます。これまでのデータにない速さで攻め立ててくる張本に対し、馬龍は終始動揺を隠せませんでした。仮にあのまま試合を100ゲーム続けていれば、70から80ゲームは張本が取る。そんな内容の試合でした。

 張本は、今回のジャパンオープンで馬龍をはじめ李尚洙(韓国)や張継科(中国)
ら世界の強豪を連破して優勝しました。しかし、張本に敗れた選手たちも、当然ながらこのまま黙ってはいないでしょう。張本の速さをデータとして蓄積した彼らは、ロングサービスを増やしてチキータを防いだり、ツッツキを多用して速くプレーさせないようにしたりして、張本を攻略してくることが予想されます。そのため、今後、張本は常勝というわけにはいかず、世界の強豪たちと勝ったり負けたりを繰り返しながら、最大の目標である2020年東京オリンピックを迎えることになるでしょう。
 ただ、最後に東京で勝つのは張本であってほしいと思います。そのための鍵になるのが、前回も触れましたが「相手に慣れられない」ことです。有効な技を東京オリンピックまで伏せ、そこでぶつけることで勝利をぐっと引き寄せられるからです。
 詳しくは申し上げられませんが、張本は今回のジャパンオープンで新しい技(技術および戦術)を3つ繰り出し、効果を上げていました。若い張本ですから今後もいろいろな技や戦い方を編み出していくと思いますが、今回見せた3つの技のうち最低1つは東京オリンピックまで温存してほしいと思います。
 もちろん、得意技を封印しながら世界の強豪たちと渡り合い、東京オリンピックへの代表権を獲得することは容易ではありません。しかし、張本にはそのポテンシャルがあります。「相手に慣れられない」ことは、張本が、ひいては日本男子が東京オリンピックで偉業を達成するために欠かせない策の1つだと捉え、チーム全体で意識共有を図りたいと思います。


(取材/文=猪瀬健治 写真=小松賢、佐藤孝弘
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