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強化のフロントライン22 全日本卓球2019の評価③
動きが復活した大島。対策に苦しみ、貴重な経験を積んだ張本

~宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策~
日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。
今回も前回に引き続き、平成30年度全日本卓球選手権大会(以下、全日本)の男子シングルスについて、宮﨑強化本部長の評価や感想を紹介しよう。

●大島はバックハンドが向上し、フットワークの良さが生きてきた

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準優勝の大島祐哉はバックハンドに進境を見せた


 前回は、全日本男子シングルスの技術傾向と優勝した水谷隼(木下グループ)について述べました。今回は、準優勝の大島祐哉(木下グループ)と3位の張本智和(JOCエリートアカデミー)について取り上げたいと思います。

 準優勝の大島は、持ち味であるフットワークの良さが戻ってきました。
 以前の大島はバックハンドで対応すべきところを無理にフォアハンドで動きすぎる傾向があり、彼の武器であるフットワークの良さがマイナスに働く場面が少なくありませんでした。
 しかし、今大会の大島はバックハンドが向上したことで、フォアハンドとバックハンドのバランスが良くなり、無理にフォアハンドで動かなくなりました。そのため、オープンスペースが少なくなり、ここぞという場面でのフットワークの速さやスムーズさが際立っていました。
 決勝では水谷の巧みな戦術にかわされてしまいましたが、水谷に勝ってもおかしくないほど大島のプレーは充実していました。本人にとっても理想に近い卓球ができたのではないかと思います。

 大島は、ここ最近の国際大会のシングルスでは際立った成績を残していませんが、今大会のプレーならば世界の舞台でも十分に通用します。日本選手とはプレーの質が異なる海外選手と対戦したときに、今回と同じようなプレーができるかどうか、今後の大島に注目していきたいと思います。

●苦戦が続いた張本智和。周囲の張本対策がいい刺激に

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連覇はならなかったが、苦戦を切り抜けて3位に入った張本智和


 昨年12月にワールドツアー・グランドファイナルで優勝し、今大会でも優勝候補に挙げられていた張本でしたが、準決勝で大島に敗れ、3位に終わりました。
 張本は全日本前の練習で少し調子を崩していたのですが、試合が始まれば調子は戻るだろうと思っていました。しかし、大会期間中も調子があまり戻らないまま、張本は全日本を終えました。
 
 今大会の張本は本調子ではない上に、対戦相手たちの張本への対策が進んだことも加わって苦戦が続きましたが、それでも3位まで勝ち上がり、優勝争いに加わったことは大いに評価すべきところです。
 多くのメディアや卓球ファンが張本に対して語るとき、つい彼の年齢を忘れてしまいがちですが、張本はまだ15歳の中学3年生です。技術やメンタルにアップダウンの波が出てしまうのは当然のことです。中学3年生にして男子シングルス3位、混合ダブルス2位、そして、男子ダブルスで優勝という結果は、客観的に見れば大変な成績です。
 今大会の張本は、男子シングルス5回戦の緒方遼太郎(早稲田大)戦、6回戦の田添健汰(木下グループ)戦と、いずれも負けておかしくない試合でしたが、そこを乗り切ったところに、彼の気持ちの強さや技術力の高さが表れていました。
 
 一方、今大会で張本に迫った緒方や田添、そして、張本を破った大島らのプレーも素晴らしいものでした。
 張本の武器であるチキータが鈍るよう要所でロングサービスを混ぜたり、張本にバックハンドから速攻を仕掛けられないようフォア側をうまく突いたりするなど、彼らの張本に対する戦い方はよく練られていたと思います。

 日本の男子卓球界にとって、こうした「張本対策」が進むことは大いに歓迎すべきことです。打倒張本を目標にすることによって必然と選手たちのレベルが上がりますし、何より張本自身にとって、より強くなるための大きな刺激になるからです。

(取材=猪瀬健治)

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