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強化のフロントライン21 全日本卓球2019の評価②
男子シングルスの傾向と水谷隼について

〜宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策〜
日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。
今回は、平成30年度全日本卓球選手権大会(以下、全日本)の男子シングルスについて、宮﨑強化本部長の評価や感想を紹介しよう。

●チキータ封じのロングサービス戦術が確立されてきた

 前回は、全日本の全体的な感想についてお話ししました。今回は、男子シングルスについて所感を述べていきたいと思います。

 前回も触れましたが、男子シングルスは1回戦からYGサービス(逆横回転系サービス)やチキータを積極的に使う選手が数多く見受けられ、そのプレー内容は世界レベルに迫ってきています。それどころか、時には世界レベルよりも先を行っていると感じる場面もありました。
 一時期、チキータへの対策が進んだことにより、チキータを控えてストップを多めに使う傾向が見られましたが、今回の全日本では再びチキータを積極的に使う選手が増えていたことが印象的でした。

 チキータを使う選手が増えたことに伴って、チキータを防ぐ目的でロングサービスを多めに使う選手が増えたことも、今大会の男子シングルスにおいて注目すべき傾向でした。
 ロングサービスは、うまく決まれば相手(レシーバー)の意表を突き、その後のチキータの精度を鈍らせることができる半面、相手に読まれた場合、失点につながりやすいサービスです。しかし、今回の全日本では、仮にロングサービスを相手に読まれて打たれたとしても、簡単に失点するのではなく、ブロックやカウンターで的確に対応するシーンが多く見られ、選手たちの戦術の中にロングサービスがきちんと組み込まれていることを伺わせました。

 サービスとレシーブのハイレベルな駆け引きに加え、ラリーにおける選手たちの身のこなしや球威も明らかに向上しており、戦術面のみならず技術やフィジカル(身体能力)の面でも世界のトップレベルに限りなく近づいていたと思います。

●守りに入らず、新しいことにトライできることが水谷の素晴らしさ

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積極的なチキータや前陣カウンターで通算10度目の優勝を果たした水谷隼


 ちょっと勢いに乗ったら、誰が優勝してもおかしくない。そんなハイレベルな男子シングルスでしたが、制したのは水谷隼(木下グループ)でした。

 水谷の優勝をずっと見てきていますが、そのたびに彼の変化に驚かされます。

 水谷が初優勝した平成18年度(2007年)の時の全日本と今を比べると、当然ですが、今の卓球の方がよりスピーディーで攻撃的です。それに加えて、今は、水谷が初優勝した頃にはほとんど使われていなかったチキータが新技術として大流行しています。
 この10数年でプレーの傾向が大きく変わる中、水谷が優勝し続けられるのは、彼自身も最新の卓球で勝てるよう変わり続けているからにほかなりません。
 今大会の水谷は、後ろに下がって長く打ち合うのはできるだけ控え、前陣でのカウンタープレーを多く取り入れていました。卓球レポートに掲載された水谷の最新のインタビューで、前陣でプレーするスタイルに変えたのは目の状態が思わしくなかったからだと本人が明かしていますが、YGサービスやチキータを積極的に使うなど、ラリー以外の部分でも随所に昨年とはひと味違ったプレーが見られました。

 水谷が最新の卓球に勝てるよう進化を続けているとはいえ、それは簡単なことではありません。
 自分から殻を破り、「プレーを変えよう」と心に決めても、新しい技術や戦術は簡単には安定しませんから、その決心はぐらついてしまいがちです。特に、水谷のように実績がある選手であればあるほど、その実績が足かせになり、プレースタイルに大胆にメスを入れるのはためらいが生じるものです。

 ところが、水谷は今年だけでなく、ほぼ毎年、新たな一面を見せてくれます。今回の全日本では、あらためて水谷という選手のチャレンジ精神の素晴らしさと、そのチャレンジをしっかり自分の物にできるポテンシャルの高さを感じました。
 若い力の台頭が目覚ましい日本男子ですが、彼ら若手にとって水谷は、高い壁であり手本であることを強く示した今回の男子シングルスだったと思います。

(取材=猪瀬健治)

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