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ちょっと、それ貸して!!
第5回 吉村真晴 × 戸上隼輔

トップ選手同士がお互いのラケットを交換して試打し、打球感や使いやすさなど、相手のラケットを評価し合う人気企画「ちょっと、それ貸して!」。第5回は野田学園高校OBの吉村真晴選手(名古屋ダイハツ)と現役高校生・戸上隼輔選手(野田学園高校)の先輩後輩コンビの登場です!



MaharuYoshimura
吉村真晴(名古屋ダイハツ)
右シェーク攻撃型。茨城県那珂郡出身。平成23年度全日本卓球選手権大会男子シングルス優勝。世界卓球2015蘇州混合ダブルス2位。2016年リオデジャネイロオリンピック男子団体2位。世界卓球2017デュッセルドルフ混合ダブルス優勝。巧みなサービスからの爆発力のある両ハンドドライブで数々のビッグタイトルをものにしてきた。

吉村真晴の使用用具
ブレード:バタフライ特注(ZLカーボンシェーク/インナーファイバー®仕様)
ZLカーボンを搭載したインナーファイバー®仕様の攻撃用シェークラケット

フォア面ラバー:ディグニクス05
回転による打球の威力をハイレベルで実現するラバー
バック面ラバー:テナジー05
回転主体のプレーに非常に高い性能を発揮するラバー



Shunsuke_Togami
戸上隼輔(野田学園高校)
右シェーク攻撃型。三重県津市出身。平成30年度インターハイ男子シングルス優勝。平成30年度全日本卓球選手権大会ジュニア男子優勝。前陣から繰り出す両ハンドドライブの連続攻撃で格上に金星を挙げることもしばしば。両ハンドの一撃の威力は超高校生級だ。
特集「戸上隼輔 インターハイを制した技」はこちら

戸上隼輔の使用用具

ブレード:張継科 ZLC - FL
ZLカーボンを搭載した威力と攻守のバランスの良さが特長の攻撃用シェークラケット

フォア面ラバー:テナジー05
回転主体のプレーに非常に高い性能を発揮するラバー
バック面ラバー:テナジー05
回転主体のプレーに非常に高い性能を発揮するラバー

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【第一印象】
威力の戸上ラケットと安定の吉村ラケット

吉村 戸上のラケットは、アウター(一般的な仕様)の『張継科 ZLC』に両面『テナジー05』ということで、自分自身も何年か前まで使っていたラケットなので、懐かしい感覚ではありました。
 何年かぶりに打ってみて、やはり「すごい飛ぶ」という印象です。球も走るし、本当に威力のあるボールが打てると感じました。

戸上 吉村さんのラケットはインナーファイバー®仕様なので、とてもボールがラケットに食い込んで、アウターのラケットを使っている自分としては、(吉村ラケットは)安定したボールが打てると感じました。

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一般的な仕様(右)=表面の板(上板)の隣に特殊素材を配置。アウター
インナーファイバー®仕様(左)=中央の板(中板)を挟むように特殊素材を配置。インナー

【フォアハンド系技術】
重い球質の吉村ラケットとパワーで飛ばせる戸上ラケット

吉村 戸上のラケットは球は速いんですが、直線的なボールが行きやすいので、打っていて(自分のラケットで打ったときよりも)ボールが軽いような感じがしました。

戸上 そうですね。吉村さんが僕のラケットで打ったフォアハンドドライブは、スピードはありましたが、スピードに比べて回転量が少なかったので、ブロックしたときにネットミスすることがありました。

吉村 戸上のラケットはアウターなので、球離れが早く、しっかりと体重を乗せてボールを打つ前にボールが飛んでいってしまうので、打ち方を変えないとインナーに比べて球質が軽くなってしまうのかもしれませんね。
 また、戸上のフォア面ラバーは『テナジー05』(スポンジ硬度=36)で、僕の使っている『ディグニクス05』(スポンジ硬度=40)に比べて少し軟らかいので、自分としてはもうちょっと硬い方が、スピードプラスαで球の重さが出せるのかなと思いました。
 ただ、3球目攻撃などで、十分に時間があるときに打ったボールの切れ味はすごかったですね。逆に、時間がないときや、切れた下回転のボールにしっかり回転をかけるときは、質の高いボールを打つのが難しく、相手にチャンスを与えてしまうかもという不安がありました。
 だから、戸上みたいに超攻撃的な卓球ができる選手にはいいかもしれませんが、最近の僕はそれほどキレキレの攻撃ができていないので(笑)、その辺は難しく感じました。

戸上 僕は攻撃的にガンガン攻めていくプレースタイルですが、僕のラケットだと直線的に行くようなボールでも、吉村さんのラケットだと山なりにボールが出るので、(吉村ラケットは)安定はしますが、ノータッチエースが取れるという気はしませんでした。ただ、台の深くに入ることが多かったので、その点はよかったと思います。
 僕が『ディグニクス05』に慣れていないというのもあると思いますが、打ち合いになったときなど、相手のボールをパワーだけで飛ばすことができないので、そこは難しかったですね。

吉村 (パワーだけじゃなくて)神経もちゃんと使わないとね(笑)。でも確かにこれ(戸上のラケット)なら多少アバウトに打っても入ってくれますね。相手に打たれたときも、相手のボールの勢いでいいボールが返せますが、僕のラケットは毎回ちゃんと自分から回転をかけてあげないとミスすることがあるので、その点で戸上のラケットは使いやすいと感じました。

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【バックハンド系技術】
"つかみ"のある吉村ラケットと切れ味鋭い戸上ラケット

吉村 僕は、バックハンドは回転をしっかりかけて飛ばしたいのですが、戸上のラケットだとパパーンという強い当たりで球が飛んで行ってしまいますね。球が先に行き過ぎちゃってコントロールしにくいと感じました。
 相手に強く打たれたときの対処はしやすいですが、自分から下回転のボールを打つときと、バック対バックのときのコントロールは、自分の理想とするイメージとは違いました。
 僕のラケットだと「ガチッ」という固い"つかみ"があって「ドーン」と飛ばすことができるのですが、戸上のラケットだと「タターン」と飛んでいってしまって、自分のところにボールが返ってくるのも早いので、びっくりしてしまうことがありました。
 戸上のラケットは一撃の切れ味と速さはすごいと思いますが、なかなか安定して使いこなせないので、こういう球離れが早いラケットを使いこなす腕が必要ですね。戸上さんみたいな。

(深くうなずく戸上に一同笑)

戸上 吉村さんのラケットは、僕のラケットよりも食い込みがいい分、しっかりと回転をかけないといいボールが行かないという印象を受けました。
 ツッツキ打ちやループドライブをカウンターするときなど、回転量が多いボールに対しては打ちやすいと思いましたが、バック対バックなど、ロングボールに対しては少しやりにくさを感じました。

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【サービス】
思ったよりも回転がかかる『ディグニクス05』

吉村 戸上のラケットは、サービスはインパクトの瞬間の食い込みはそれほど強く感じませんでしたが、相手のコートに飛んでいったときに回転量が結構多いというギャップがあって、そこは僕のラケットと似た感じでしたね。
 球離れが早いので、もっとコントロールが難しいかと思いましたが、そんなこともありませんでした。僕がサービスのときは薄くボールを捉えるのと、ラバーが少し軟らかいので、コントロールもしやすかったんだと思います。台の狙ったところにボールを落とせるコントロールのしやすさもありましたし、サービスのバリエーションも豊富に出せるラケットだと思います。

戸上 自分は結構強めのインパクトでサービスを出して、普段は回転量の多い下回転サービスとナックル(無回転)性サービスを使い分けることが多いのですが、吉村さんのラケットだと、切ったときに回転がかかったという感触が得られませんでした。短く安定してコントロールはできましたが、回転がちゃんとかかっているか分からなかったので、そこは使っていてちょっと不安でした。

吉村 確かに『ディグニクス05』だと、ちゃんと回転がかかってるのか不安になるときがありますが、意外にそういうときに限って相手が落としてくれたりするので、自分が思った以上に回転はかかっていることが多いですね。戸上が自分のラケットで出した普段のサービスも受けたことがありますが、回転量の差は感じませんでした。
『テナジー05』のようなシートでこすった感覚がなくても回転がかかるのは『ディグニクス05』の特徴だと思うので、そういうところは今後、使う選手が慣れていく必要もあるのかなと思います。

戸上 (吉村ラケットは)回転をかけた感触が分かりにくいという不安はありましたが、ショートサービスは短く低く、ロングサービスは速く深く入ったので、サービスの出しやすさという点では良かったと思います。

吉村 それは腕だな。低さと深さでしょ。それは腕だよ。

戸上 ありがとうございます(笑)

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【レシーブ】
戸上ラケットはフリックが難しい
レシーブのやりやすさは吉村ラケットに軍配

吉村 自分としては、フォアハンドフリックをするときの感覚をすごく大事にしているんですが、戸上のラケットだと難しいと感じました。ラバーが軟らかい分、インパクトのときの「ガチッ」という打球感がなく、ナックルっぽく直線的に飛んでいってしまって、相手の手元で落ちてくれなかったですね。ですから、低いボールに対して、自分で回転をかけて台に入れるのが難しかったです。
 自分のラケットだと、『ディグニクス05』の打球感が硬めで「ボールをつかむ感覚」があるのですが、戸上のラケットはその感覚がつかみにくいというのはフリックのときに感じました。
 でも、(戸上ラケットは)ストップなどの細かい技術は、やりやすかったですね。チキータも、切れたサービスを持ち上げるのも、速いチキータも打ちやすかったですし、良い質のボールが出せたんじゃないかと思います。
 やりにくかったのはフォアハンドフリックだけですね。ボールの質と軌道のイメージが合いませんでした。僕の技術が足りなかっただけかもしれないですけど。

戸上 いや、そんなことないです。

吉村 ですよね(笑)

戸上 吉村さんのラケットは、ストップレシーブがすごくやりやすかったですね。自分のラケットだと、球離れが早い分、意識してしっかり切らないと短く止まりにくいのですが、吉村さんのラケットだと、それほど意識しなくても回転がかかって短く止まってくれました。
 チキータは、しっかり食い込ませれば、自然に回転のかかったボールが深く入るので、レシーブでも、ストップ対ストップからでも、チキータで攻めやすいと思います。
 フリックはやりやすいですね。強く打つこともできるし、難しいボールに対しては、流すこともできるし、いろいろなボールに対して対処しやすかったです。レシーブは全体的にやりやすかったですね。

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【試合をしてみて】
威力はピカイチの戸上ラケット
中陣からでも巻き返せる吉村ラケット

吉村 戸上のラケットは、自分でしっかり打ったときの破壊力はすごいと思いました。試合やオール対オールで、自分から攻めたときはもちろん、ラリーで押されたときでも、軽く打ち返しただけで、なかなかの切れ味のボールが行ってくれるので、ボールの走り、威力の面ではすごいと思いますね。
 ただ、僕はもう少し安定感が欲しいので、(戸上ラケットは)今の自分のプレースタイルとはマッチしない部分もありますが、戸上があの攻撃的なプレースタイルでこのラケットを使ってプレーしていると考えたら怖ろしいなと、自分で使ってみて改めて思いましたね。

戸上 僕は主に前陣でプレーするタイプですが、吉村さんのラケットだと中陣に下げられてからも、安定した弧線を描いてくれるので、両ハンドで自信を持って巻き返せるようなボールが打てると思いました。
 前陣では、両サイドに強いボールを打たれると、(吉村ラケットは)カウンターが難しかったですね。速いボールに対して、しっかり自分で回転をかけ返さないといいボールが行かないので、その点は当てただけで強いボールを返しやすい僕のラケットの方がやりやすいと感じました。

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【自分のラケットで打ったボールを受けてみて】
ボールの質が高い吉村ラケット
直線的なボールが持ち味の戸上ラケット

吉村 フォアハンドの『ディグニクス05』のボールは深く入ってくるという印象がありました。前でカウンターしようとしてもボールが深くてタイミングが合わず、一球つないで距離を取ろうという感じになってしまいました。
 僕のラケットで打ったボールは一球一球の質が高いので、タイミングだけ合わせて返すようなプレーが難しく、相手がしっかりと打たないといいボールが返せないので「ああ、いいラケットだな」と思いました(笑)

戸上 僕は受けてみてとてもやりづらいなと思いました。直線的なボールで、速さはありますが、回転量が少ないので、ネットミスもしてしまいましたし、試合でこんなボールを打たれたら嫌だなと感じました。

【こんな人にお勧めします】
前陣プレーヤーには戸上ラケット
技巧派プレーヤーには吉村ラケット

吉村 戸上のラケットは、自分でもびっくりするくらいいいボールが行きますし、そのボールが相手コートに入ればかなりの得点率になると思います。
 ですから、サービスが得意で3球目で確実に仕留めたいという選手や戸上選手のような前陣速攻を目指す選手に使ってもらって、今まで以上の攻撃力を身に付けていただけたらなと思います。

戸上 吉村さんのラケットは、吉村さんのようにサービスがうまかったり、技の引き出しが多い選手に使ってもらえたら、ラケットの良さが生きるんじゃないかと思います。

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 今回は、両者ともラケットを交換してすぐにミスなくあらゆる技術を披露してくれたため、2人の高い適応能力に驚かされるとともに、用具の差が大きくないのかと感じられたが、実際には吉村、戸上ともに少なくない差を感じていたということがわかった。
 今回は吉村=インナーZLC、戸上=アウターZLCの違いに加えて、吉村のフォア面ラバーが『ディグニクス05』、戸上のフォア面ラバーが『テナジー05』の違いも大きく出たようだ。これから『ディグニクス05』にトライしてみようと考えている選手はぜひ参考にしていただきたい。

(取材=猪瀬健治 文=佐藤孝弘 動画=小松賢)


吉村・戸上サイン入りシューズ袋プレゼント!

sorekashi05-10.jpg吉村真晴選手と戸上隼輔選手のサイン入りシューズ袋を3名様にプレゼント。
プレゼントご希望の方は、注意事項をお読みの上、下記の応募フォームよりご応募ください。
当選された方にはこちらからご連絡いたします。締切は4月19日23時59分です。
応募フォームはこちら

<注意事項>
・当選の場合はメールでご連絡いたしますので、@butterfly.co.jp からのメールを受信できるようにしておいてください

『ディグニクス05』

吉村真晴選手のフォアハンドドライブのような回転とスピードを兼ね備えた威力のあるボールを打ちたい選手にお勧めのラバーです。
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