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林昀儒・蒋澎龍 激闘のジャパンオープンを振り返る

LIONジャパンオープン札幌大会男子シングルスで、強豪を連破し決勝進出を果たした林昀儒(リンユンジュ/台湾)。決勝では惜しくも許昕(中国)に敗れたが、その華麗なプレーは札幌に大きな爪痕を残した。決勝後、林昀儒と、彼のベンチに入った台湾男子ナショナルチーム監督の蒋澎龍(チャンポンロン)それぞれに、短い時間だが話を聞くことができた。

林昀儒には考え方を変えなければいけないと伝えた(蒋澎龍)

 クールにプレーする林昀儒とは対照的に、ベンチで大きな声を上げ、選手のプレーを熱く後押しするのは、往年の卓球ファンにはおなじみの蒋澎龍だ。やや恰幅がよくなったものの、人懐こい笑顔は20年前と変わらない。
 その蒋澎龍に林昀儒の今大会での戦いぶりについて聞いてみた。

「私はジャパンオープンの前に行われた中国オープンと香港オープンには帯同しなかったが、あまりいい試合はできていなかったので、今大会も林昀儒にはプレッシャーがあった。そのせいか、初戦(趙勝敏[韓国]戦)もあまり内容はよくなかった。
 そこで私は、考え方を変えなければいけないと林昀儒に伝えた。本人も私の言っていることを理解して、少しずつ変えていくことができた。そうして試合を重ねるごとに、だんだん調子を上げていくことができたのはよかった」

蒋澎龍のアドバイスが林昀儒の飛躍を後押しした

好成績の要因は、技術よりも戦術(林昀儒)

 方博(中国)、オフチャロフ(ドイツ)、黄鎮廷(香港)、ファルク(スウェーデン)、李尚洙(韓国)、張本智和(日本)と、既に多くの名だたる難敵を圧倒してきた林昀儒だが、今回の決勝進出は大躍進と言っていいだろう。林昀儒本人は今大会をどのように感じているのか。

「中国オープンと香港オープンの成績があまり良くなかったので、今回はベスト16を目標にしていました。世界卓球でも2回戦で負けてしまいましたし、それくらいの目標が妥当だと思っていましたので、この結果には驚いています。
 今回、好成績が残せた要因は、おそらく技術よりも戦術を変えたことです。自分にはパワーがないので、そこを戦術でカバーできたことが大きかったと思います。チキータに頼っていたレシーブを変えたのもそのひとつです。

好成績の要因は「技術よりも戦術」と林昀儒

何度もビデオを見て林昀儒のプレーを研究した(蒋澎龍)

 急激に世界ランキングを上げてきている林昀儒にとって、今大会での活躍は、必ずしも意外とは言えない部分もあるだろう。林昀儒の指導にも携わる蒋澎龍は、この急成長をどのようにとらえているのか。

「今までの林昀儒はレシーブをチキータに頼りすぎていたし、サービスも横下、横上と単調で、攻め方のバリエーションも少なかった。
 昨年末くらいに、私がよくベンチに入るようになってから、何度もビデオを見て彼のプレーを研究して、どこをどう変えればもっと強くなるのかを考えてやってきた。
 強い相手にも勝てるようになったのは、試合中に戦術を変えることができるようになったことが、最も大きな理由のひとつだ。
 ただ、今は、ネット上で試合の動画をいくらでも見ることができるので、勝てている戦術でも、対戦相手に研究されてすぐに通用しなくなる。だから、変化し続けていくことが非常に大事だ。
 今大会の林高遠(中国)との試合(2回戦)では、先日の中国オープンでの黄鎮廷(香港)との試合でもそうだったが、チキータレシーブから入って、空いたバック側を攻められることが多かった。そこで、試合中に戦術を変えるように指示したのが功を奏したと思う」

 類まれな打球センスと積み重ねてきた基礎の上に、蒋澎龍の元トップ選手ならではの実戦的なアドバイスが加わったこと。これが、林昀儒が一皮むけた要因の大きな一つであることには、疑いの余地がないだろう。

レシーブからの組み立てを変えたことも今大会の飛躍につながった

孫聞には思い切ってプレーしようと思った(林昀儒)

 立ち上がりは良くなかったという林昀儒だが、苦しんだ1回戦を乗り越えると、2回戦で林高遠とのサウスポー対決に勝利すると、その勢いのままに決勝まで勝ち進んだ。各試合について、林昀儒の印象を聞いた。

「1回戦の趙勝敏戦は、初戦で、すごい勝ちたい気持ちが強かったんですが、調子はあまり良くありませんでした。でも、強い気持ちであきらめずにがんばれたことはよかったです。
 2回戦で対戦した林高遠は前の週に行われた香港オープンで優勝したばかりでしたが、連戦で少し疲れているように感じました。最初の2ゲームは取られましたが、3ゲーム目からは相手もミスが増えて集中力が切れているようでした。
 準々決勝のカルデラーノ(ブラジル)戦は1ゲーム目の7-7のときに、カルデラーノがサービスでフォルトを取られたこともあり、大事な1ゲーム目を取ることができて、流れがこちらに向いてきて勝つことができました。
 準決勝の相手は初対戦の孫聞(中国)でしたが、彼は強い選手をたくさん倒してきたので、思い切ってプレーしようという気持ちで戦い、勝つことができました」

 今大会、予選から出場した孫聞は、吉村真晴(日本)、アサール(エジプト)、張本智和(日本)、李尚洙(韓国)、梁靖崑(中国)を倒し、破竹の勢いで勝ち上がってきた。だが、林昀儒は相手のペースにはまることなく落ち着いて対応し、孫聞を退けた。

2位という結果に満足できなくなる日もそう遠くはないだろう

許昕の細かい戦術変更に対応しきれなかった(林昀儒)

 そして、いよいよ決勝の相手は、混合ダブルス、男子ダブルスで優勝し、準決勝では優勝候補の樊振東(中国)に打ち勝ち、ジャパンオープン3冠に挑もうとする許昕だ。
 決勝という舞台のためか、これまでよりもやや硬さが見られた林昀儒だが、ストレートへのロングサービスや、相手のフォア側を抜き去る鋭いチキータ、許昕のフルスイングのフォアハンドドライブに対する柔らかいブロックなどで見せ場をつくった。チャンスもあったが、やはり、総合力では許昕が上であったことは、現段階では認めざるを得ないだろう。林昀儒自身はどのように感じたのだろうか。

「全体的には満足できる試合だったと思っていますが、技術・戦術において実力の差を感じました。
 特に、許昕レベルのトップ選手になると、細かく戦術を変えてくるので、それに対応しきれませんでした。
 今回はいい成績で終わることができましたが、すぐ韓国オープンもあるので、気持ちをリセットして臨みたいと思います。
 これからは自分も研究される立場になると思うので、努力してもっといい試合ができるように頑張っていきたいです」

 無邪気な笑顔をのぞかせながらそう語る林昀儒だが、ワールドツアーの中でもっともハイレベルなプラチナ大会でベスト16だったという目標は、今後、さらに高くすることを余儀なくされるだろう。対戦相手も今まで以上に対策を講じ、勝つことは難しさを増していくだろう。
 自身の叶えられなかった世界チャンピオンの夢を林昀儒に託しているかに見える蒋澎龍は、林昀儒をどのように育てていきたいと考えているのだろうか。蒋澎龍は短くこう答えた。

「彼はまだ若いので、これから少しずつ上を目指してもらいたい」

 その慎重だが確信に満ちた言葉に、私は蒋澎龍の林昀儒にかける思いの強さを垣間見た気がした。

「自分のことを話すのはあまり得意ではない」と林昀儒

(取材=猪瀬健治 写真・文=佐藤孝弘)

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