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強化のフロントライン30
世界卓球2019ブダペストの評価④
張本智和について

〜宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策〜
 日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。
 今回からは、世界卓球2019ブダペスト(個人戦)の男子シングルスについて宮﨑強化本部長が振り返ってくれる。まずは、張本智和(木下グループ)について述べていただいた。

練習不足を引きずり、調子が上がらなかった張本智和

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メダルを目指した張本智和だったが、4回戦で伏兵・安宰賢に破れた


 前回まで、4月に行われた世界卓球2019ブダペスト(以下、世界卓球)の全体的な評価をお話ししました。今回から世界卓球を種目別に振り返り、所感を述べていきたいと思います。
 まず、男子シングルスからお話ししましょう。
 メダルが期待された男子シングルスでしたが、残念ながら日本勢はメダルにもう一歩手が届きませんでした。
 初めに、日本勢で世界ランキング最上位選手として臨んだ張本智和について述べたいと思います。

 張本は、昨年末に行われたワールドツアー・グランドファイナルを制し、世界ランキングは最高で3位。名実共に世界のトップ選手の仲間入りを果たしており、彼本来の力を発揮すれば今回の世界卓球でメダルを獲得する可能性は十二分にあると見ていました。しかし、結果は4回戦で安宰賢(韓国)に敗れ、ベスト16に終わりました。
 この敗戦の要因の一つに、張本の「試合前の練習量」があると私は見ています。

 張本は、見ているこちらが心配になるくらい練習をやり込む選手です。練習にひたむきに打ち込めることが張本の持ち味であり、それが彼の強さを形づくっています。世界卓球などのビッグゲームが近づけば近づくほど張本は練習に打ち込み、その自信を糧にして試合に臨みます。
 しかし、ご存じの通り、張本は今回の世界卓球直前に指の腱鞘炎を患い、十分に練習を積むことができませんでした。本番にはほぼ万全な状態で臨めましたが、安宰賢との4回戦はいつになく凡ミスが多く、プレーも単調で、「試合前に練習をやり込めなかった」という張本の不安が濃く表れていたように感じました。

張本には「試合前の練習を休む勇気」を持ってほしい

 今回の張本の敗戦は、事前の練習不足による不安が少なからず影響していたと見受けられましたが、「試合前の練習量をどうするか」は個人差があり、正解はありません。
 しかし、私は「試合前の練習はできるだけ抑えた方が良い」というのが持論です。試合前の練習を抑えれば、疲労の蓄積やけがの心配がなくなるので、試合でベストなパフォーマンスを発揮しやすいと考えているからです。
 一方、試合前の練習のやり過ぎは、本番前にけがをしたり、本番に疲れを残したりしてしまう恐れがあります。特に、大きな試合の前はアドレナリンが多めに出ているので練習につい力が入ってしまいやすく、疲労の蓄積やけがするリスクもおのずと高まります。
 加えて、練習をやり込まないと試合で調子が上がらないタイプは、今回の張本のように試合前の練習不足が間接的に影響してしまうデメリットも考えられるでしょう。

 張本はまだ若いので、試合前に練習をやり込んだとしても問題ないかもしれません。だからこそ、ハードに練習できるのだとも言えます。
 しかし、張本が今のまま試合前に練習をやり過ぎるルーティーンを続けていると、この先年齢を重ねていったときに、決してそうなってほしくはありませんが、疲労の蓄積や故障につながってしまうケースが少なからず出てくるでしょう。
 私も選手でしたから、試合前に練習をやり込んで自信を付けつつ、不安や重圧を振り払いたい気持ちは理解できます。しかし、先に述べたように、試合前の練習のしすぎは、自分の気持ちは納得するものの、プレーに良い影響を与えるとは思えません。

 世界の舞台で戦うアスリートにとって、試合前に練習を抑えたり、休んだりすることはとても勇気がいることです。
 しかし、アスリートしての張本のピークはまだまだ先にあります。試合前の過剰な練習によって、試合でのプレーや試合後の日常に支障が出るのは避けなければなりません。
 今回の世界卓球の敗戦とこれからを見据えて、張本や彼をサポートする現場のスタッフには、大会前の練習量を一考し、練習を抑えるルーティーンに勇気を持ってトライしてほしいと思います。
 この提言が張本にとって必ずしもプラスに働くとは限りませんが、もし張本が試合前の練習を抑えるメリットを実感できたなら、彼はさらに成長できると信じています。

(取材=猪瀬健治)

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