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強化のフロントライン31
世界卓球2019ブダペストの評価⑤
丹羽孝希について

〜宮﨑強化本部長に聞く日本の強化策〜
 日本の最前線ではどのような強化が行われているのか。そのさまざまな方策について、日本卓球界の強化の長である宮﨑義仁強化本部長に聞く本企画。
 今回からは、世界卓球2019ブダペスト(個人戦)の男子シングルスについて宮﨑強化本部長が振り返ってくれる。今回は、丹羽孝希(スヴェンソン)について述べていただいた。

世界卓球の舞台でもリラックスしてプレーできるのが、丹羽孝希の強み

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創造力あふれる速攻でベスト8に勝ち上がった丹羽孝希


 前回は、世界卓球2019ブダペスト(以下、世界卓球)の男子シングルスにおける張本智和(木下グループ)について述べました。
 今回は、男子シングルスで日本勢最高成績のベスト8に入った丹羽孝希についてお話ししましょう。

 丹羽は、2013年パリ大会の男子シングルスでベスト16に勝ち上がって以降、2015年蘇州大会ベスト16、前回2017年デュッセルドルフ大会ではベスト8、そして今回もベスト8と、4大会連続で世界卓球の男子シングルスで好成績を残しました。代表権を獲得するだけでも大変な世界卓球において、これだけ安定した成績を収められるのは素晴らしいことですし、この結果は丹羽の能力の高さと継続的な努力を証明していると思います。
 今回の世界卓球では、これまで分が悪かったディヤス(ポーランド)や最近力をつけているプッツァー(クロアチア)といった難しい相手を倒し、ベスト8まで勝ち上がりました。準々決勝でも梁靖崑(中国)とゲームオールの大接戦を演じてメダルにあと一歩のところまで迫り、充実したプレーを見せてくれました。

 なぜ、丹羽は世界卓球の男子シングルスで好成績を残し続けられるのか。私は、丹羽の技術や戦術の高さに加え、彼の「メンタル(精神面)の強さ」に大きな要因があると分析しています。
 そのことをよく表していたのが、梁靖崑との準々決勝で見せた丹羽の奇想天外なプレーの数々です。
 この試合で丹羽は、得意の前陣速攻に加え、強烈な回転をかけたカット性ブロックやラケットを左手から右手に持ち替えて打球するなど、要所でトリッキーなプレーを織り交ぜて梁靖崑を追い詰めました。
 これらのトリッキーな技を実行できるタッチや着想のすごさもさることながら、丹羽が梁靖崑戦で見せたトリッキーなプレーには、「大舞台でも遊び心のあるプレーができるほどリラックスできる」という彼のメンタルのたくましさが表れていたと思います。

 トリッキーなプレーが丹羽のメンタルの強さの表れであるとはいえ、それらは彼がとっさの場面で用いる一部分で、プレーの柱ではありません。丹羽の持ち味は、あくまで前陣速攻です。
 しかし、トリッキーなプレーがとっさに繰り出せるほどメンタルがリラックスできているからこそ、丹羽の本領である速攻も冴えるのであり、この好循環が彼の世界卓球における好成績の要因として見逃せないところだと思います。

個人戦と同じようにリラックスして団体戦を戦うことが課題

 世界卓球の個人戦では好成績を残し続けている丹羽ですが、その一方、近年の彼の団体戦におけるプレーにやや物足りなさを感じます。
 丹羽の団体戦が個人戦ほど振るわない原因はメンタルにあり、これは、個人戦が好調な理由として先に述べたメンタルと表裏一体であると私は見ています。

 丹羽の団体戦での戦いぶりを見ると、今回の世界卓球で見せたようなトリッキーなプレーはほとんど使いません。団体戦の場合、チームや周囲の期待やプレッシャーがかかるので、「自分の好き勝手にはプレーできない」という思いが芽生えるからでしょう。そのメンタルの縛りが丹羽のプレーにわずかにリミッターをかけ、そのことが、団体戦でいまひとつ精彩を欠く要因になっていると見受けられます。
 しかし、今回の世界卓球が物語っていたように、丹羽はトリッキーなプレーが自然に出るくらいの方が、その本領を発揮します。
 ここで私が述べたいのは、「丹羽は団体戦でも横回転ブロックやラケットの持ち替えなどのトリッキーなプレーを積極的に使うべきだ」ということではありません。私が言いたいのは、「丹羽はトリッキーなプレーが自然に出るくらい団体戦でもリラックスしてプレーしてほしい」ということです。
 丹羽には、団体戦でも個人戦と同じようにリラックスしたメンタルで臨んでほしいと思いますし、それが今後、彼に取り組んでほしい課題の一つです。

 来夏には東京オリンピックが開催されます。日本男子のメンバーはまだ決まっていませんが、丹羽は有力候補の一人です。
 丹羽が男子団体の代表権を勝ち取り、リラックスしたメンタルで団体戦を戦うことができればチームに大きく貢献できるでしょうし、彼のメンタルの解放が日本男子のメダル獲得に欠かせないと考えています。

(取材=猪瀬健治)

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