「卓球界の賢人」こと上田仁が、その確かな実力と見識をもとに、さまざまな質問に答える人気企画「教えて!上D(ウエディー)」の新章、コーチ編がスタート。
2025年4月から戸上隼輔選手(井村屋グループ)の専属コーチとなった上Dが、コーチの視点からさまざまなことを伝えてくれます。
今回は、コーチになってからの近況と、戸上選手にとってツアー初優勝となったWTTコンテンダー アルマトイの裏側について、上Dが教えてくれました。
年齢が大きく離れていないので、戸上には兄のようなスタンスで接している
今年の4月に現役を引退し、戸上隼輔(井村屋グループ)の専属コーチになってから、数カ月がたちました。
コーチに転身してからの僕のスケジュールは、基本的に戸上のスケジュールに合わせて一緒に動いています。ドイツのブンデスリーガがあるときはドイツで練習を見て、WTTの試合があるときはコーチとして帯同します。次から次へと大会がやってくるので、もう何カ国も転戦しています。今、どの国にいるのか分からなくなることも多いですね(笑)
最初の頃はお互いのことをよく知らないので探り合いながらのスタートでしたが、大会や練習を重ねたことで、コーチを始めた当初よりは卓球はもちろんプライベートのことなど、戸上といろいろな話ができるようになってきたと個人的には思っています。
戸上にはお兄さんがいるのですが、そのお兄さんと僕は年齢が近いので、卓球ではコーチ、それ以外は兄のようなスタンスで戸上に接しています。コーチと選手とは必ずしも仲良くならなければいけないわけではありませんが、僕と戸上はそこまで年齢が離れていないので、お互いが付き合いやすさを感じている部分はあると思います。
一時帰国してからの練習と、アルマトイの標高の高さがプラスに作用
戸上は、9月初旬にカザフスタンで行われたWTTコンテンダー アルマトイで、二人で当面の目標にしていたWTTツアー初優勝を達成しました。この大会には、本来ならドイツからカザフスタンへ行くはずでしたが、諸事情で日本に1週間ほど帰国し、そこで練習をしっかり積んでから試合に臨むことができました。大会期間中の戸上のプレーやひらめきは素晴らしかったですが、日本での練習で良いイメージをつくり、僕と戸上の意思疎通がしっかりできていたこともプラスに作用したと思います。
ちなみに、大会が行われたカザフスタンのアルマトイは標高がとても高い土地だったのですが、それもプラスに作用しました。
一般に、標高が高いとボールがよく飛ぶようになります。大会に参加した選手たちはみな「ボールが飛びすぎてオーバーしてしまう」と不満を漏らしていました。戸上も最初の頃は苦労していましたが、試合を重ねるごとにラケット角度やスイング方向などがアジャストできて鋭いボールを連発していました。
飛距離が出るということは必然とスピードも出ます。元来、戸上のボールは鋭いのですが、アルマトイの標高の高さによってさらに鋭さを増していましたね。その鋭いボールで相手にプレッシャーをかけることができたことも、優勝の大きな要因だったと思います。
(まとめ=卓球レポート編集部)




